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クマ被害、二次元恋愛、ゴミ拾い侍…スイスが報じた日本のニュース

日本ではクマの被害が後を絶たない
日本ではクマの被害が後を絶たない keystone

スイスで22日~28日に報じられた日本のニュースから、今週は①クマ被害②二次元との恋愛③ゴミ拾い侍、の3件を要約してお届けします。

かつて日本の「オタク文化」は現実逃避の象徴とみなされがちでしたが、スイス紙の分析は、それが日本の厳しい経済低迷と機能不全に陥った家族モデルへの「静かな抵抗」であることを浮き彫りにしています 。未来に希望を見出しにくい社会構造の中で、二次元の「人工的な楽園」に救いを求める人々の姿は、個人の趣味の領域を超え、私たちが直面する生きづらさと社会の閉塞感を静かに告発していると言えます。

日本のクマ被害――高度成長のツケと「自然の逆襲」がもたらす葛藤

スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは、日本で深刻化する野生のクマ被害を、単なる獣害ではなく、戦後の急速な都市化や自然環境の変化がもたらした結果として報じました。

同紙は、第二次世界大戦後の日本が「(戦争の)廃墟から立ち上がるため、経済成長の過程で自然を排除した」と指摘。河川をコンクリートで固め、沿岸部を埋め立てて近代都市を築き上げた結果、人間と自然の境界線が人工的に分断されたと説明しています。

その上で記事は「今、自然が逆襲に転じている」と続け、クマが市街地に現れ人を襲うようになった現象をその象徴的な事例に挙げました。

NZZが強調するのは、人口が減少する一方でクマが増えているという皮肉です。動物保護の強化によって個体数が回復したうえ、気候変動によって冬が暖かくなり、クマが冬眠から目覚める機会も増えています。つまり、人間側の環境政策と地球規模の気候変動が重なり、人とクマの接触を増やしているという見立てです。

被害の深刻化を受け、日本では駆除を求める声が強まっています。NZZは、海外でも日本への旅行者に対する注意喚起が出され、政府がハンターを支援するため自衛隊を部分的に動員したことなどを紹介しています。ただ、記事が警告するのは、目の前の危険への対応だけではありません。野生動物保護団体・熊森協会の担当者はNZZの取材に、「日本はオオカミについても、すでに同じことをしてしまった。生態系への被害は甚大になる」と懸念しています。かつてオオカミを絶滅させた日本が、クマについても同じ道をたどる可能性があるという指摘です。

動物保護や気候変動によって、自然と人間を隔てていた境界線が再び動き始めている――。記事は、増え続けるクマを「自然の反撃」と捉えながら、人間と野生動物がどのような距離で共存するのかを、正対する意見を示しつつ読者に問いかけています。

日本の「二次元との恋愛」――壊れた現実を生き抜くための「抵抗」

スイス・フランス語圏の日刊紙ル・タンは、日本の漫画やゲームのキャラクターと恋愛関係を結ぶ「フィクトセクシュアル(架空恋愛)」に関し、日本社会を長年調査してきたフランス人研究者アニエス・ジャール氏へのインタビューを掲載しました。記事は、この現象は深刻な経済低迷と機能不全に陥った家族モデルが生んだ社会構造への「抵抗」だと報じています。

ジャール氏は、人工的な恋愛は「景気後退によって何百万人もの人々が子どもを持たず、孤独なまま生涯を終えることを余儀なくされる人が増えているという、社会の不満が募る状況の中で生じている」と指摘しました。そんななかにあっても何があっても幸せになるために、これほど多くの人が架空の存在に向かうのだとジャール氏は続けます。

一方で、こうした生き方に対する日本の政治権力側の見方にも変化が表れている、とジャール氏は指摘します。「最近まで自民党の議員たちは、独身者(その多くはフィクションのコンテンツを好む)を『非生産的』な人々、社会の『お荷物』、『病者』などと好んで呼んでいた」。しかし、キャラクターへの愛を公言する小野田紀美氏のような政治家が政権の中枢に登場したことで、この文化はアングラから脱却しつつある、と言います。

そしてジャール氏は、若者の未婚化は、伝統的な婚姻制度への意図的な「反乱」ではなく、経済的な理由などから独身を選択する男女が増え、自らの感情的な欲求を魅力的なフィクションの世界という「人工的な楽園」へと転移させている結果なのだ、とも指摘しました。

そして「未来は行き詰まり、もはや何の約束ももたらさない。架空の存在を愛することは、日常生活にわずかな夢を持ち込むことを可能にする」とし、これが希望なき社会を生き抜くための精神的防衛メカニズムだと説明しています。

「ゴミ拾いサムライ」――無関心層を動かすエンタメの力

スイス・ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、東京で侍の衣装を身にまといゴミ拾いをする日本人2人の活動を紹介し、環境意識とエンターテインメントの融合がもたらすユニークな社会啓発の取り組みを報じました。記事は、この一見奇抜なパフォーマンスが、従来の環境運動が抱える「無関心層に届かない」という課題を解決する可能性を秘めていると伝えています。

なぜ侍なのか―。その背景には、ボランティア活動が「人の目に留まらなくなった」という課題があります。記事は2人の言葉を借り「日本にはゴミ拾いをするボランティアがたくさんいる。しかし、人々はもう彼らの存在にほとんど気づかなくなっている」と説明しました。善意が埋没する現状を打破するため、2人は人目を引く侍の姿を選んだと論じています。

立教大学環境学部の森朋子准教授は、この「楽しさ」こそが強みだとSRFに語っています。つまり従来の環境キャンペーンは、すでにそのテーマに関心を持っている層にしか届かないことが多いのに対し、エンターテインメントは、普段なら環境活動を敬遠するような人々を惹きつけることができる、というのです。記事はまた、2人の活動はソーシャルメディアを通じて世界中に広がっていることも伝えています。

SRFは「これこそがゴミ拾い侍の真のメッセージなのだろう。すべての社会変革が、大がかりな政治プログラムから始まるわけではない。時には、一風変わったアイデアから始まることもある」と結んでいます。


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校閲:大野瑠衣子

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