The Swiss voice in the world since 1935
パーソナルフィード

ログインしてフィードにトピックを追加しましょう。

今すぐ登録
お気に入りリスト

ログインして記事を保存リストに追加しましょう。

今すぐ登録

自己決定権が信教の自由に優先 チューリヒ州の有権者、自殺ほう助めぐり州民投票

スイスでは、バルビツール酸系のペントバルビタールナトリウムが自殺ほう助に使われる
スイスでは、バルビツール酸系のペントバルビタールナトリウムが自殺ほう助に使われる KEYSTONE/Alessandro Della Bella

チューリヒ州で27日行われた住民投票で、州内のすべての介護施設と病院に対し、施設内での入所者の自殺ほう助を認めることを義務付ける法改正案の是非が問われ、賛成多数で可決された。キリスト教系施設が訴えた信条の自由よりも自己決定権を優先することを有権者が支持した格好だ。

おすすめの記事

投票結果は賛成が68.1%、反対が31.9%だった。法改正により、チューリヒ州の病院と介護施設は、運営理念にかかわらず、施設内での安楽死を許可することが義務付けられる。精神病院と刑務所は引き続き対象外となる。

この法律は、自殺ほう助を拒否してきた州内の約30のキリスト教系民間介護施設に影響を及ぼす。これらの施設は今後、「エグジット」や「ディグニタス」などの自殺ほう助団体の出入りを認めるか、同様の規制がない他州への移転を迫られることになる。

州政府を含む反対派は、病院で行われている緩和ケアが軽視されるとして、今回の法改正に反対していた。

キリスト教系介護施設にはどんな影響が?

この法改正は、影響を受ける施設にとって何を意味するのか。チューリヒ市郊外にあるキリスト教系介護施設「ツェントルム・レーミスミューレ」の施設長で、反対派の中心的な論客でもあるマルクス・シャーフ氏は、移転を現実的な選択肢とは考えていない。影響を受けるほとんどの施設は、新たな法的現実に適応しつつ、可能な限り自施設の理念と価値観を守ろうとするだろうと同氏は見ている。

同氏が特に強調するのは次の点だ。「この法律が施設に義務付けるのは、第三者が行う自殺ほう助を容認することだ。施設側が自ら自殺ほう助を提供したり、職員を関与させたりすることは義務付けられていない」。法案の賛成派もこの区別を一貫して強調しており、病院にも同様に適用される。

シャーフ氏は、困難な状況に置かれた人々が包括的なケア、人間的な温かさ、緩和ケア、そして希望があれば牧会的支援を受けられるよう、施設として引き続き最善を尽くすと述べた。変わったのは法的状況だけだとして、「生と死、そして人生の終わりに寄り添うことへの私たちの根本的な姿勢は変わっていない」と語った。

病院への影響は?

チューリヒ州内の病院も、自殺ほう助への対応に関する運用規則を整備しなければならなくなる。だが対応を済ませている施設はごくわずかだ。院内で自殺ほう助という選択肢をどのように周知するか、外部の自殺ほう助団体を病院の業務にどう組み込むかといった問題が生じる。

チューリヒ州保健局長のナタリー・リックリ氏は27日午後、メディアに対し、件数が大幅に増えるとは予想していないと述べた。すでに自殺ほう助を認めている病院でも、実際の利用件数はごくわずかにとどまっていた。

介護施設についても、大きな変化はないとみられる。チューリヒ州内の200余りの介護施設の大多数は、すでに自殺ほう助団体の出入りを認めていた。残るキリスト教系施設などについても、リックリ氏は、入居者の多くは今後もこの選択肢を利用しないだろうと指摘した。異議申し立てがなければ、来春の施行を見込んでいるという。

ナタリー・リックリ氏
ナタリー・リックリ氏 Keystone / Andreas Becker

投票結果が持つ意味

今回の投票で、チューリヒ州民は、自己決定による死という基本的権利を、信教の自由や介護施設の経済的自由よりも優先させた。反対派はこれら2つの価値観を軸に結集した。自由教会系の支持者が多く、自殺ほう助に批判的な連邦民主同盟や福音派国民党(EDU)、保守右派の国民党(SVP/CDU)などだ。

経済・社会的に自由主義的な急進民主党(FDP/PLR)は党議拘束を設けず、自由投票とした。左派・緑の党(GPS/Les Verts)から中道にかけての他の政党はすべて賛成票を投じた。キリスト教民主党を前身とする中央党(Die Mitte/Le Centre)も賛成に回ったことは、教会の支持基盤が自殺ほう助に対してどれほど開かれているかを示している。

自己決定権が優先されるという法的根拠はすでに存在する。連邦最高裁判所は10年前、ヌーシャテル州の法改正に対する異議申し立てを受けた判決で、介護施設に自殺ほう助の容認を義務付けることは思想・良心の自由を侵害するものの、その侵害は軽微であり、自己決定権によって正当化されると結論付けた。

残る議論

自殺ほう助先進国として国際的に知られるスイスは、終末期ケアの扱いで部分的に追い越された国々に近づきつつある。その一例がカナダだ。カナダでは10年前から病院での自殺ほう助が行われている。医療スタッフが関与する形で病院業務に完全に組み込まれ、国内で批判が続いている。

スイスが将来直面する議論の一つが、認知症患者の自殺ほう助だ。オランダなどでは、認知症患者が事前に死の希望を文書で残しておけば、後に医療スタッフが致死薬を投与することが認められている。しかしスイスでは積極的な直接的安楽死は依然として犯罪だ。致死薬は本人が自分で投与しなければならず、自殺ほう助を受けるには正常な判断能力を有していることが求められる。このため、認知症患者で死を希望する人は、早期に行動することを迫られる。死のタイミングをどこまで待てるか、という困難な問いに向き合わなければならない。

おすすめの記事

10言語で意見交換
担当: Leutenegger Marc

スイスの自殺ほう助に対するリベラルな姿勢をどう思いますか?

スイスの自殺ほう助に対するリベラルな姿勢をどう思いますか?あなたの国では自殺ほう助についてどんなふうに考えられていますか?

51 件のいいね!
37 件のコメント
議論を表示する

編集:Christian Raaflaub、英語からの翻訳・校正:宇田薫

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部