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スイスの民主主義

戦争のルールを信じない世界でその擁護に尽力――人道NGO「ジュネーブ・コール」アラン・デレトロ代表

2017年から人道NGO「ジュネーブ・コール」の代表を務めるアラン・デレトロ氏。非国家武装組織の関与する紛争が増えるなか、最前線で紛争の推移を追っている 
2017年から人道NGO「ジュネーブ・コール」の代表を務めるアラン・デレトロ氏。非国家武装組織の関与する紛争が増えるなか、最前線で紛争の推移を追っている  Mark Henley

戦争の指導者たちと面会し、国際人道法への意識を高め、民間人を攻撃しないよう説得する――これが、NGO「ジュネーブ・コール」を率いるアラン・デレトロ代表の仕事だ。非国家武装組織の関与する紛争が増え、国家自体が模範を示さなくなりつつある今、その使命はますます難しくなっている。

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地球上で最も残忍な武装集団に接触し、戦争のルールへの意識を高める。アラン・デレトロ氏の仕事は一風変わっているが、190cmの長身は、そんな仕事にもってこいの体格だ。話に耳を傾けずにはいられないような鋭い眼差しの裏には、人道主義と繊細な感性が隠されている。穏やかで落ち着いた声からは、親しみやすさだけではなく、その内面が早くも伝わってくる。ヴァレー(ヴァリス)州出身で今や世界を駆け巡る身だが、自分のルーツを忘れてはいない。私たちをコーヒーとスイスのチョコレートでもてなしてくれた。

2017年にジュネーブ・コール外部リンクの代表を引き受けた動機を尋ねると、デレトロ氏はこう答えた。「幼い頃から、どんなに過酷な状況にあっても、人間らしさを失わない人の有り様に惹かれてきた」。実際、「アイヤン(ヴァレー州にある自治体)のカトリック家庭」で育った幼少期から受け継がれた、揺るぎない「人間性への信頼」こそが、彼を人道支援の道へと導いた。そのキャリアは1994年、モスクワで赤十字国際委員会(ICRC)の代表として始まった。

「私がさまざまな仕事を通して、特に若手代表として活動していた初期に感銘を受けたのは、最悪の犯罪を犯した人々の心の中にも、この人間性のきらめきが残っているのを見出すことがあることだった」と同氏は語る。「ジュネーブ・コールが取り組んでいるのはまさにそれだ」

ジュネーブ・コールは当初、武装集団のジュネーブ諸条約への意識を高めることで、人道支援分野における空白を埋めようとしていた。四半世紀が経過した今、ジュネーブ・コールは「国際都市ジュネーブ」において欠かせない存在となった。最も秘密主義な団体の1つだが、デレトロ氏はその活動内容を見せてくれた。

人間性のきらめき

ジュネーブ・コールは現在、世界中に存在する200以上の武装組織と接触している。武装集団に接近し、信頼を得るには、現地の事情への深い理解が不可欠だ。そのためジュネーブ・コールはこの10年、各地の現地拠点からなる国際ネットワークを構築してきた。

「もはや、ジュネーブ本部の職員が飛行機で現地に飛び、対話を始めるようなことはない。現地のスタッフがその役割を担っている」とデレトロ氏は説明する。自身が現地を訪れるのは、高位の指揮官に面会するチャンスが訪れたときだ。

では、一見何の共通点もないような戦争指導者たちに、彼らにとって馴染みのない国際人道法を遵守するよう、どう説得しているのか。デレトロ氏はまず、「純粋に法的な論拠だけでは、時には長年にわたり民間人に深刻な暴力を加えてきた武装集団の行動は変えられない」と明言する。そして、「別の何かを見つけなければならない」と話す。

この「別の何か」とは、まさに同氏がインタビューの冒頭から言及していた「人間性のきらめき」のことだ。「彼らの思考様式やイデオロギーの中に、どこか関係を築く糸口がないかを探る必要がある」が、これに「決まった方法はない」と説明する。

一部の超大国が国際法を踏みにじる中、デレトロ氏とジュネーブ・コールにとって、武装集団にジュネーブ諸条約遵守の重要性を理解させることはますます困難になっている 
一部の超大国が国際法を踏みにじる中、デレトロ氏とジュネーブ・コールにとって、武装集団にジュネーブ諸条約遵守の重要性を理解させることはますます困難になっている  Mark Henley

ロシア語や、若き日にペルーの先住民から学んだケチュア語など、語学力が同氏の大きな強みであることは容易に想像がつく。また、同氏が幼い頃から培かってきた深い信仰心も重要な役割を果たしている。その信仰心は、パリの聖霊修道会(スピリタン会)で2年間学んだ経験を通じてさらに深められた。

デレトロ氏は、こうした武装集団では文化的・宗教的側面が重要な位置を占めており、彼らは例外なく「大義」を追求していると強調する。

「その大義に疑問を呈すれば、それでおしまいだ。もちろん、紛争地に市民として足を踏み入れると、彼らの大義が正当だとはなかなか思えないこともある」。しかし、人道的中立性のおかげで、政治的な考慮を脇に置くことができる。同氏は厳粛な態度で、「人々がなぜ戦っているのかについては議論せず、どのように戦っているのか、そして民間人に対してどのような責任を負っているのかを議論する」と説明する。

そのため外部の観察者にとって、こうしたやり取りは驚き、あるいは衝撃にさえなる場合がある。デレトロ氏は照れ笑いを浮かべながらこう語る。「先日、決して穏やかとは言えないある指揮官と電話でデリケートな話題について話し合った。会話の最後に彼は、『あなたと私は、同じ価値観を共有している』と言った」。誰とでも話すことこそが同氏の仕事だ。

同氏は、数々の紛争地帯への訪問について、最近はコンゴ民主共和国を訪れ、近々ウクライナと中東へ向かう予定だと明かしたが、会談相手の名前は慎重に伏せている。だがそれでも、普段は情報を外に出さない「国際都市ジュネーブ」の世界では珍しく、同氏は率直に語る。

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国際人道法の浸食

おそらくジュネーブ・コールの使命が今日ほど困難な時期はなかっただろう。ジュネーブ諸条約を採択した国々自体が守っていないのに、どうやって武装集団に条約の遵守を説得できるのか。

デレトロ氏は、「戦闘に参加している国軍で、適切に行動しているところは1つもない」と苦々しく指摘する。ウクライナからガザ、スーダンに至るまで、全般的な「国際人道法の浸食」を嘆く。

「イスラエルによるガザ空爆以降、中東を拠点とする複数の武装集団の指揮官が私たちにこう明言してきた。『もうジュネーブ諸条約の話はするな。このような惨劇が私たちの目の前で起きているのに、誰も動じないのなら、なぜ私たちがそのルールを守らなければならないのか』と」(デレトロ氏)

そこでジュネーブ・コールのチームは、他の民兵組織の行動規範や類似の規則を定めた宗教的文書など、別の論拠を探し出す必要がある。

デレトロ氏によると、「一般に考えられているのとは異なり、大多数のグループは対話の継続を望んでいる」。ただし、特にジハード(聖戦)主義勢力など、対話を拒否する一部のグループとは、それができないことを認める。

同氏は、国連本部広場を見下ろすオフィスから、紛争の推移を注視している。「この10年間で最大の変化は、武装集団が世界地図上に支配する領域だ」と同氏は指摘する。支配地域は大幅に拡大し、現在では2億人以上の人々がそこに暮らす。一部の民兵組織は「事実上の権力機構」となり、地域全体を統治するようになった。

この変化は、年間予算が約2000万フラン(約39億5000万円)に上るジュネーブ・コールの活動内容も変えた。「当初は、主に戦闘員の行動に焦点を当てていたが、現在では、民間人の管理や保護に関する研修も行っている」

国際都市ジュネーブを拠点とするNGOの中で、ジュネーブ・コールは、米国など西側諸国が人道支援から大きく手を引いたことで生じた資金難の直接的な打撃を受けずに済んだ数少ない団体の1つだ 
国際都市ジュネーブを拠点とするNGOの中で、ジュネーブ・コールは、米国など西側諸国が人道支援から大きく手を引いたことで生じた資金難の直接的な打撃を受けずに済んだ数少ない団体の1つだ  Mark Henley

希望を持ち続ける

デレトロ氏に、代表就任から約10年経った今、後悔していることはないかと尋ねた。同氏は少し考えてこう答えた。「(2023年)10月7日の(ハマスによるイスラエル攻撃の)映像を見た時、ハマスと対話しなかったのは間違いだったと思った。私たちが協力している武装集団の中に、園芸用具で民間人を殺害するようなところは1つもないからだ」。中東ではすでに多くの人道支援団体が活動していたため、ジュネーブ・コールはこれまでパレスチナ側には接触してこなかった。だから、特にアフリカにおける他の紛争に力を注ぐことに決めた。

国際法の浸食や治安情勢の悪化、人道支援分野を襲う危機にもかかわらず、2人の息子と3人の娘を持つこの父親は、62歳となった今も悲観論に屈しはしない。

「私の原動力となっているのは、かつて犯罪を犯した人々が態度を改め、部隊に規則を設け、違反を処罰する姿を見ることだ。それが私たちに活動し続ける力を与えてくれる」

編集:Samuel Jaberg、仏語からの翻訳:江藤真理、校正:宇田薫

この人物ルポは、今日の「国際都市ジュネーブ」を形作る潮流を体現する人々に焦点を当てた4回シリーズの第1弾。次回は、国際司法が圧力にさらされているこの時代に、ジュネーブを拠点に戦争犯罪者を追跡する人権NGO「シビタス・マキシマ」のアラン・ヴェルナー代表を紹介する。

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