ホームレス、北方領土、バーニングマン…スイスが報じた日本のニュース
スイスで13日~19日に報じられた日本のニュースから、今週は新たな貧困、ロシアが北海道新聞記者を拘束、バーニングマン、の3件を要約してお届けします。
路上生活者の激減という「美談」の陰で、真面目に働きながらも尊厳を損なわれる現役世代の存在にスイス紙が切り込みました。助けを求めることを恥じる「自己責任」の心理が、不可視化された貧困をさらに固定化させています。公的支援の網からこぼれ落ちる前に孤立を防ぎ、彼らの居場所を守る包括的な制度設計が、今まさに日本に問われています。
ホームレス激減の日本に広がる「見えない貧困」
日本国内ではホームレスの数が激減する一方で、新たな形の貧困が拡大しています。スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは、東京で深刻化する「見えない貧困」の実態に迫りました。
記事はまず、日本ではホームレスがかつてほど目立たなくなっていると指摘。2000年代以降、政府の支援プログラムが機能し、路上生活者の数は全国で2591人と、20年前の10分の1に減ったと紹介しました。
ただ、路上生活者が減ったからといって貧困問題が解消したわけではなく、支援の現場では別の深刻な問題が浮き彫りになっていると分析します。
記事は支援団体「もやい」の代表の言葉を引用し、「今や、懸命に働いている人々が人間らしい尊厳ある生活を送ることすらままならない状況に至っている」と指摘しました。「貧困とは仕事がないこと」という従来の固定観念が崩れ、低賃金と物価高に苦しむ現役世代のワーキングプアが拡大していると論じています。
同紙は、こうした貧困が見えにくい背景には「他人に助けを求めることを長くためらう」日本特有の文化や同調圧力があるとしました。周囲に迷惑をかけることを恐れる心理や、努力不足だという自己責任論が、公的な支援やセーフティネットへのアクセスを阻んでいると指摘しています。
また貧困が広がる要因として、昨今の物価上昇だけでなく、1990年代以降の労働市場の規制緩和も大きく影響しているとNZZは分析します。非正規雇用の拡大と雇用の不安定化が、病気や失業といった突発的なリスクへの脆弱性を高め、ネットカフェ難民や若年層の孤立を招いているといいます。
若者の間でも、競争的な環境に苦しみ、社会から孤立し貧困に陥る人たちが増えるなど、問題は深刻化しているとNZZは指摘します。そうした若者たちにはまずは安全な居場所を提供し、簡単な作業を通じて労働市場や社会との接点を作っていく。そして若者たちに自信を取り戻させ、自立を促していくことが大事だと結んでいます。
記者拘束と日ロ対立の「爆発的火種」
ロシアの治安機関がサハリンで北海道新聞の日本人男性記者をスパイ容疑で拘束したことに対し、日本政府はロシア大使を召喚して厳重に抗議し、迅速な情報提供と公正・公平な扱いを求めました。スイスのオンラインメディア20min.はAFP通信記事を通じ、この拘束劇を日露関係の緊張をさらに高める恐れのある事態として報じました。
同記事は、記者拘束がもたらす外交的な影響について、ロシア側の報道官が「今回の事案は、日露関係をさらに悪化させる追加の要因となるだろう」と発言したことにも触れています。
さらに記事は、この対立の背景にある領土問題を「爆発的火種を抱える案件」と表現。ロシアのプーチン大統領による北方領土訪問や日本の主権主張がぶつかり合う中、地政学的な対立が常に危険な引火性を秘めていると論じました。
また、記者が軍事情報を収集したとして拘束された背景に関して、記事は「国境なき記者団(RSF)は、ジャーナリズム活動そのものが犯罪化されるリスクについて警鐘を鳴らしている」と指摘しました。RSFはAFP通信に宛てた声明で「軍事問題を含む公共の利益に関わる情報収集はジャーナリズム活動の一環であり、それ単体をもってスパイ行為とみなすことは到底できない」と断じています。
薬物のない「バーニングマン」フェス、日本で開催
米国ネバダ州発祥のフェスティバル「バーニングマン」のアジア版が、群馬県の山間部で開催されました。スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、過激な自己解放を標榜する祝祭空間でありながら、なお日本特有の秩序と気配りが隅々まで行き届く現地の様子を、独自の観察眼を交えて報じました。
フェスには日本人、そして外国人ら500人が集いました。現地を取材した筆者は会場で見かけた手作りのピンボール台の精巧さに注目し、「日本人の卓越した職人技と細部へのこだわり、そして一見それほど重要には思えないような対象にまで注がれる完璧さへの意志が凝縮されていた」と評しました。日常ではめったに発揮されることのない日本人の無邪気さや、本気で面白がろうとする姿勢が表れていると説明しています。
筆者はさらに、本家「バーニングマン」のような違法薬物ではなく、ここではアルコールが熱狂の主役を担っている、と指摘。日本では「酒は『免罪符』として機能している。酒の席であれば上司に何を言い放っても許され、翌日にはすべて水に流されるというのは、日本文化の一部ですらある」。一方で、どれほど自由を謳おうとも、完全に混沌へ堕ちることはない日本の特異性にも触れています。例えば徹底したごみ持ち帰りのルール、そして互いを気遣う行動様式についても「仮設トイレですら、4日目になってもほぼ不安なく利用できる衛生状態が保たれている。これは、他の国ではあまり想像できない」と結びました。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は10月27日(火)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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