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米国で続くシンジェンタ農薬訴訟、基本合意後も和解拒否の原告が900人

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今年の上半期、シンジェンタは訴訟関連および製品関連の負債として約3億ドルを支払った Claudius Thiriet / Biosphoto

スイスの巨大農業テクノロジー企業シンジェンタは2025年、除草剤パラコートによってパーキンソン病を患ったとして農家らが同社を相手取り米国で起こした訴訟について、原告側弁護団と基本合意を結んだ。しかし、最近の裁判所命令に基づく試算によると、依然として900人余りが和解を拒んでいる。行き詰まりが続けば、同社は個別の公判を大量に抱えることになりかねない。

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シンジェンタ(本社・バーゼル)は2025年、同社の除草剤パラコートによってパーキンソン病を発症したとして米国農家らが起こした民事訴訟8000件余りに関し、原告側弁護団と和解に向けた基本合意を交わした。これは2017年から続く法廷闘争を終結させ、前に進む姿勢の表れだった。

しかし、ここまでの歩みは順調ではない。原告側の法律事務所のうち少なくとも3軒で顧客の80%以上が和解を拒否。スイスインフォの推計では、拒否者の総数は900人超に上る。

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スイス法人のシンジェンタAGが8月27日に発表した中間決算によると、同社は2026年1〜6月、法的責任・製造物責任に関連して約3億ドル(約471億円)を支出した。基本合意は2025年4月に暫定的に、同9月までに正式に署名されており、これに基づく和解金が含まれる可能性がある。ただし、支出の内訳は示されておらず、実際のところは未確認だ。また、同じ決算報告には「製造物責任をめぐり係争中の複数事案」について2026年6月にさらなる和解合意に達したとの記述もある。こちらも内容は機密とされ、金額やパラコート訴訟を含むかどうかは明かしていない。

同社は報告のなかで「一連の主張全てが根拠を欠くことを確信している。和解は責任を認めるものではなく、係争の終結のみを目的としている」と言明した。

和解を拒む原告が悩みの種に

シンジェンタによると、パラコートを巡る米国での訴訟は2017年の1件目以降、連邦裁判所と州裁判所の合計で1万911件に膨らみ、このうち8488件が広域係属訴訟(MDL)に集約された。広域係属訴訟は、大規模な民事紛争を処理する法的手続きの一種だ。共通の争点を持ちながら個別に提起された全国の連邦訴訟を1カ所の連邦地方裁判所にまとめ、証拠収集などの公判前手続きを共通化・効率化する。ただし、医療履歴の異なる人々に生じた傷病の被害認定は一括で行えないため、集団訴訟のように個々の訴訟を法的に統合することはない。共通の公判前手続きのうちに和解に応じない原告は、それぞれ最初に訴訟を提起した裁判所への再移管を経て、個別に裁判を続けることができる。

和解訴訟の情報をまとめている専門ウェブサイト外部リンクによると、パラコート広域係属訴訟に集約された事案8488件のうち9月1日時点で係争中のものは6666件ある。これまでに和解を受諾した原告の数は公表されていないが、原告代表団とシンジェンタは2月、和解が確定した原告への支払いを処理する仕組みをつくるため、適格和解基金(QSF)の設置を裁判所に共同申請した。法廷の監督下で和解金を保有し、受取資格が確認できた請求者に払い込む口座のことだ。

係争の決着を示唆する動きがある一方、和解を拒む原告は多く、特に一部の法律事務所の顧客に集中している。パラコート広域係属訴訟を所管するイリノイ州南部地区連邦地裁外部リンクは4月、外部の弁護士に対し、和解を拒んでいる原告、またはその弁護士らと面会し、拒否を続けた場合の影響への理解や認識を確かめる任務を付託した。さらに、同裁は6月までに拒否者が過度に集中している法律事務所3軒を特定し、各々が抱える事案の一部を抽出。これらをサンプルとし、証言録取やパラコートを使用した証拠の提出など、正式な証拠開示手続きを先行して実施するとの命令を出した。

同裁によると、法律事務所別の顧客の和解拒否率はスミス・ロー・ファームで90%超、ディチェロ・レビットで100%外部リンク、ナチャワティ・ロー・グループで217人中183人外部リンクに上る。サンプル抽出では各事務所の該当事案からそれぞれ10%程度が選ばれており、実際の選定数から推計される拒否者数はスミス・ロー・ファームで約470人、ディチェロ・レビットで約270人、ナチャワティ・ロー・グループを加えた合計で923人前後となる。スイスインフォは拒否率の高さについて各事務所にコメントを求めたが、返答はなかった。

サンプル事案での証拠開示は公判開始に向けた一般的な手続きであり、公判開始はシンジェンタにとって極力避けたい事態だ。ただし、この手続きの目的は公判準備だけではない。陪審員裁判に時間と資金を費やす前に、残った原告の主張のどれが精査に耐え、どれが耐えないのかを整理することだ。大規模民事訴訟では証拠開示手続きを通じて原告の勝ち目が明らかになり、残り事案の大半が和解に至るという展開が多い。裁判所がいきなり個別事案の公判に入るのではなく、サンプル事案での証拠開示を先行させる理由はおそらくここにある。

シンジェンタの広報担当者はスイスインフォの取材に「一般的な原則として、法的主張や訴訟に関する具体的な問題にはコメントしない。パラコートに関しては、登録済みのラベルに記載した手順通りに使えば安全だと継続して表明している」と電子メールで返答した。

生産はすでに終了

シンジェンタの前身企業がパラコートを商品化してから60年余りが経った。特許権が切れたために世界で750社余りが販売し、米国では大豆や綿花、トウモロコシ、果物を育てる農場で広く使われている。

一方、パラコートをめぐっては過去10年、パーキンソン病の発症リスクを高める可能性を示す研究結果が複数発表されてきた。パーキンソン病は神経変性疾患の一種で、米国の65歳以上で10番目に多い死因となっている。パラコート関連に限った統計はないが、この年齢層における2023年の死者は3万9283人だった。また、米国立環境健康科学研究所(NIEHS)の助成で実施され、2011年に結果が発表された研究では、パラコート使用者における発症率は非使用者の2.5倍に上った。

パラコートはすでにシンジェンタの稼ぎ頭ではなく、グループ売上高に占める割合は1%を切っている。同社は3月外部リンク、唯一の製造拠点である英ハダースフィールドでの生産を6月末までに打ち切ると発表した。シンジェンタの世界生産・供給を統括し、英国法人社長を務めるマイク・ホランズ氏はその際、「当社の事業と顧客のため、当社の資源を最大の価値を発揮できる場所に集中させる決定だ」と説明した。

同社の公式説明ページ外部リンクには現在、「パラコートの生産は2026年3月の発表に沿って世界全体で終了した。これは商業的理由のみによる決定であり、世界中のジェネリック製品生産者との著しい競争を反映したものだ」と記載されている。

Edited by Nerys Avery/sb、英語からの翻訳:高取芳彦、校正:宇田薫

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