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植民地主義の遺産 植民地を持たなかったスイスに数千体もの遺骨が存在する理由

スイスの有名なミイラ「シェペネーゼ」。ザンクト・ガレン修道院図書館、2022年11月17日撮影
スイスの有名なミイラ「シェペネーゼ」。ザンクト・ガレン修道院図書館、2022年11月17日撮影 Gian Ehrenzeller / Keystone

スイス各地の博物館には、植民地時代に由来する遺骨が少なくとも4000体所蔵されている。植民地を持たなかった国に、なぜこれほど多くの遺骨が集まったのか。返還はどのように進められているのか。文化人類学者のコンラート・クーン氏に聞いた。

スイスは国外に植民地を持たず、植民地支配による搾取にも関与していない――。長い間、こうしたイメージが持たれてきた。だが、フリブール大学の歴史資料はその見方が逆であることを示している。スイスの研究者や商人、収集家は、植民地主義において重要な役割を果たしていた。その結果、スイス各地の博物館に何千体もの遺骨が持ち込まれた。

遺骨を見直して由来を調査すると、博物館や政界は、倫理・法律面、引き渡し手続きや移送などの実務面で複雑な問題に直面する。スイスの課題と今後について、文化人類学者のコンラート・クーン氏に話を聞いた。

スイスインフォ:植民地に由来するコレクションの調査に関して、スイスは模範例として先行しているのでしょうか。それとも逆に、他のヨーロッパ諸国からの遅れを取り戻す必要があるのでしょうか。

コンラート・クーン:スイスは全てのヨーロッパ諸国と同じように、植民地に由来するコレクションの調査について遅れを取り戻す必要があります。この国では、議論が始まったのが少し遅かったのかもしれません。スイスも植民地主義に基づく考え方を共有していたことや、国内にも植民地に由来するコレクションが存在することが、社会に広く理解されるようになるまで数十年かかりました。

しかし、コレクションの由来や来歴の調査をめぐる議論は、数年前から活発になっています。博物館は、地元施設であれ、より広域的なものであれ、このテーマに取り組もうという強い問題意識を持っています。その上こうした議論は、単なる責任追及や法律に基づく請求にとどまらない形で行われてきました。

同時に、スイスにあるコレクションや博物館には、実に様々な機関や関係者が関わっています。市や州のほかに、個人や財団が関与するケースも多いのです。このために、法的な管轄の問題が極めて複雑になっています。

スイスは植民地を持ったことがないのに、なぜ現在、何千体もの遺骨があるのでしょうか。

スイスは、植民地主義を正しいと見なすブルジョワ的な社会観の影響を強く受けていました。植民地主義は、植民地化された地域の人々や文化は近代化から守られなければならないという学問的な考え方とも強く結びついていました。近代化はもともと、植民地主義によってもたらされたのですが。

また、スイスの研究者は――大半が男性でしたが――自分たちは他者より優れており、したがって「学問」のためなら他者から奪う権利があると信じていました。人種差別的な考え方が、これに拍車をかけました。

加えてスイスは、経済面で世界と強く結びついていましたから、生きているものも含めた人体を「手に入れる」機会が数多くありました。様々な都市や団体、州が、博物館やコレクションをめぐって競争を繰り広げた結果、遺骨に対する非常に大きな需要が生じたのです。博物館と強い関係にある人物がコレクションに寄贈することもよくありました。

コンラート・クーン博士。バーゼル大学で非常勤講師を務める。専門は文化学とヨーロッパ民族学
コンラート・クーン博士。バーゼル大学で非常勤講師を務める。専門は文化学とヨーロッパ民族学 unibas.ch

それでもコレクションの量には驚かされます。スイスが果たした役割について、そこから何が分かるのでしょうか。

スイスは植民地の正式な支配者ではなかったからこそ、植民地で展開された事業の中で特に柔軟に動き回ることができました。スイスの人たちは、探検などの学術的な場面で、世界的な貿易ネットワークの一部、あるいは宣教の枠組みの中で活動していました。

こうした状況において、スイス人は「中立」で、純粋に「学問」的な立場にあると見なされることが多く、容易に遺骨を入手できたのです。これも、スイスで盛んだった「人種研究」、つまり、植民地主義を背景として人体、特に頭蓋骨を基盤とする学問を促進することになりました。

国連は2007年にすでに、先住民族が祖先の遺骨を取り戻す権利を確認しています。なぜ今も多くの国で、この権利の実現に時間がかかっているのでしょうか。

この基本的な権利によって、ヨーロッパや北米の博物館はまさに、自らの歴史に批判的に取り組むという課題を突きつけられています。歴史上の非倫理的な行為を恥じる気持ちと結びついていることが多いために、この取り組みは進まないのです。今日では基本的に、敬意を持って遺骨を取り扱うことに反対する人はほとんどいません。しかし、実際に行動に移してみると、極めて難しいことが分かるのです。

文化人類学者、文化学者、ヨーロッパ民族学者。オーストリアのインスブルック大学で准教授として研究や指導を行うほか、バーゼル大学で講師を務める。研究では、知識史、歴史人類学に加えて、スイスと植民地主義との関係の批判分析に重点を置く。

これはスイスでも起きています。国内に保管されている遺骨は世界のあらゆる地域から来ており、旧宗主国のように、以前は自国領だった特定の植民地に集中しているわけではありません。このために、来歴を調査して、アジアやオセアニア、アフリカやアメリカ大陸、さらには北極地方にある、遺骨が由来するコミュニティーと連絡を取るのが、はるかに複雑になっているのです。

ある専門家の報告書外部リンクは、来歴調査をさらに進めるとともに、影響を受けるコミュニティーに向けた情報交換の場を設けるよう求めています。それによって何が変わるのでしょうか。

極めて重要なのは、情報を提供する責任の所在を逆転させることです。影響を受けるコミュニティーが苦労して問い合わせるのではなく、博物館などの施設側が、自ら透明性のある形で所蔵品の情報を提供しなければなりません。そうして初めて、返還請求が可能になり、パートナーシップに基づく共同作業への道が開かれます。オープンな状態が、現在と未来のための鍵となるのです。

重要なのは、この問題を単純に素早く「片づけよう」とするのではなく、長期的で尊厳のある向き合い方を見出していくことです。政治家などは問題に終止符を打つために迅速な返還を求めることがよくあります。それが正しい場合もあるでしょう。しかし、このプロセスには時間がかかり、簡単でも楽でもない道を歩む必要があることを、受け入れるしかない場合も多いのです。

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編集:Marc Leutenegger、独語からの翻訳:鵜田良江、校正:大野瑠衣子

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