中朝、ナフサ、河野洋平、恋愛裁判… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が6月9日~15日に伝えた日本関連のニュースから、①中朝首脳会談②ナフサ不足③河野洋平氏④恋愛裁判、の4件を要約して紹介します。
スイスでは14日の国民投票で、人口に1000万人の上限を設けるという、右派政党提案の新たな移民制限案の是非が問われました。投票率は58%と異例の高さを記録しました。結果は否決でしたが、移民問題に有権者の多くが関心を持っていることが如実に現れた国民投票となりました。
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中朝首脳会談、日本にとっては「脅威」
中国の習近平国家主席は8〜9日に北朝鮮を訪問し、金正恩(キムジョンウン)総書記と首脳会談を行いました。独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー(TA)は、「両者が何を話し合ったかよりも、世界に向けて発信されたメッセージの方が重要だ」とし、これが単なる友好訪問ではなく台湾海峡を含む東アジアの安全保障情勢に関する重要な政治的シグナルだと報じました。
記事によると、金正恩氏は会談で、中国が掲げる「一つの中国」原則への全面的な支持を表明しました。記事は「これは極めて重要な発言だ」と指摘。なぜならこれは台湾を中国の一部とみなす北京の立場を支持するものであり、インド太平洋地域全体の安全保障体制と経済圏に影響を与える可能性があるからだとしています。
特に日本との関連で、中国による台湾侵攻が起きた場合の影響に触れました。昨年11月には、高市早苗首相が台湾有事について問われ「存立危機事態になり得る」と発言したことを取り上げました。
TAは、この「存立危機事態」という表現に注目しています。日本の安全保障関連法の下では、自衛隊は基本的に脅威があった場合にのみ動員されるため、高市氏のこの発言が、台湾侵攻が起きた場合に日本が介入する可能性を間接的に示唆したものだと解説しています。また、その際には太平洋地域に展開する米軍との連携が想定されるとしています。
さらに、安全保障専門家の分析として、台湾有事の際には北朝鮮がロシアと連携し、在日米軍を含む米軍戦力を牽制する役割を担う可能性があると紹介しました。そのため日本は、防衛予算の増額や防衛力強化を進めるとともに、フィリピンなどインド太平洋地域のパートナー国との安全保障協力を拡大している、としています。
TAは中国が北朝鮮の核兵器開発計画を容認している可能性にも触れ、7年ぶりの習氏の平壌訪問が地域の民主主義国家への牽制であると同時に、中国が北朝鮮への影響力を維持していることをロシアにも示す意味合いがあると分析しています。
(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語、有料)
イラン戦争が日本のバナナに与える影響
ドイツ語圏の日刊紙NZZは、イランをめぐる中東情勢が意外な形で日本の食卓に影響を及ぼしていると報じました。その象徴として取り上げられたのが、日本で最も多く輸入されている果物であるバナナです。NZZは、国際的なサプライチェーンへの影響が、バナナの供給不足として表れていると報じました。
日本は原油の9割以上をペルシャ湾地域から輸入しており、中東情勢の影響を特に受けやすい国です。一見するとバナナと原油は無関係に思えますが、日本で販売されるバナナの多くはフィリピンから未熟な緑色の状態で輸入され、その後、日本国内で人工的に熟成されます。
この熟成に欠かせないのがエチレンガスです。バナナは本来、自らエチレンを生成して熟しますが、輸送中は熟成を止めているため、日本到着後に専用施設でエチレンを使って黄色く熟させます。しかし、エチレンの原料となるナフサが不足しており、ある供給業者は7月以降、ガスの調達ができなくなると告げられた、と記事は報じています。
ナフサ不足の影響はすでに他の分野にも及んでいます。記事によると、スナック菓子メーカーのカルビーは、包装用のカラーインクを十分に確保できなくなり、一部商品のパッケージを銀と黒を基調としたシンプルなものに変更しました。野党は、企業によるナフサの備蓄放出を政府が促すべきだと主張していますが、政府は強制措置には慎重な姿勢を示しています。
SNS上では、緑色のバナナを販売し、家庭で熟成させる方法も話題になっています。しかしNZZは、日本の小売店では見た目が完璧な果物が求められる傾向が強く、未熟な緑色のバナナを店頭に並べることには抵抗感があるだろう、と指摘。「顧客に不完全なバナナを提供しなければならないとしたら、日本の店舗責任者はきっと夜も眠れないだろう」と結んでいます。
(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
「日本の戦争犯罪を認めた政治家」河野洋平氏死去
ドイツ語圏の日刊紙NZZは、日本の戦後史を象徴する政治家・河野洋平氏の死去を報じ、その功績と国内政治に残した分断の両面を詳しく伝えました。河野氏は長年にわたり日本の国政を担い、衆議院議員に14回当選した経験を持つ一方で、その名は「河野談話」として歴史に刻まれています。
記事によると、1993年に宮沢内閣の官房長官だった河野氏は、従軍慰安婦問題に関する調査結果を発表し、日本政府として旧日本軍が戦時中に女性を組織的に性労働させたことを認め、謝罪する談話を発表しました。いわゆる「慰安婦問題」に関するこの公式見解は、戦時中に朝鮮半島や中国、台湾、東南アジアなどで10万人から20万人規模の女性が被害を受けたとされる歴史認識に基づくものです。
河野氏は韓国や中国ではおおむね肯定的に評価された一方、「政治的右派・特に自民党内で憎悪の対象となった」と伝えました。NZZは、保守派の一部がこの談話を「日本の名誉を損なうもの」と批判し、とりわけ故・安倍晋三元首相を中心とする政治潮流が歴史認識の見直しを進めてきたと指摘しています。
記事はまた、現在の日本政治が安全保障重視へと大きく転換している点にも言及しています。中国の軍事力拡大を背景に、日本では防衛力の強化や憲法改正の議論が再び活発化しており、憲法第9条改正も政治的争点となっています。河野氏はこうした9条改正に一貫して反対してきたと記事は紹介しました。しかし、河野氏が属していた自由民主党のリベラルな潮流は現在は事実上ほぼ消滅状態にある、と結んでいます。
(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
深田晃司監督の新作が暴く、J-POPと日本の「完璧主義」社会
フランス語圏の日刊紙ル・タンは、深田晃司監督の新作映画「恋愛裁判」を、「歌手の卵でありアイドルを辞めた一人の少女の物語を通して、完璧を求める日本社会の欠陥を暴き出している」と紹介しました。
物語はガールズグループ「 ハッピー☆ファンファーレ」を中心に展開し、彼女たちは「完璧に整えられた人形のような存在」として描かれます。記事によれば、メンバーは徹底した管理下に置かれ、「ファンとの私的関係を持たないこと」を含む厳しい契約に縛られています。しかし、あるメンバーが恋愛関係を理由に謝罪を強いられたことで、主人公の山岡真衣は「この生き方を続ける意味はあるのか」と疑問を抱き始めます。
やがて真衣は元同級生と恋愛関係になりグループを離れますが、物語は急展開を迎えます。制作会社は彼女に対し「契約違反」と「収益損失」を理由に訴訟を起こし、恋愛そのものが法廷で争われる事態になります。
記事は、この作品が「単なる芸能界批判ではない」と指摘し、日本社会における女性の立場や権力構造にも切り込んでいると評価しています。アイドル産業の中で若い女性が「消費される存在」として扱われ、「自分が何にコミットしているのかを自覚していない無垢な若い女性たちの冷酷な隷属を、構造的な男尊女卑(男性支配)の枠組みの中で告発するところまで踏み込んでいる」と論じています。
(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、有料)
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話題になったスイスのニュース
スイスでは14日、国民投票が行われ、人口に1000万人の上限を設ける右派政党提案のイニシアチブ(国民発議)が否決されました。移民を制限するために人口増加に上限を設けるという前例のない案は、国外でも大きく注目されました。結果についての記事はこちらです。
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