円相場、国債、レアアース、ジャパニーズ・チーズケーキ… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が1月21日~27日に伝えた日本関連のニュースから、①円急伸が揺さぶる金融市場②スイスの投資専門家が見る日本債券市場③レアアース探索船「ちきゅう」にかかる期待④「ジャパニーズ・チーズケーキ」は日本製?の4件を要約して紹介します。
日本発の金融市場の混乱に、スイスメディアも関心を高めています。個人的に衝撃だったのは、円の対スイスフラン相場が1フラン=200円の節目を割り込んだこと。ずっとアバウトに1フラン=100円で換算していたので、一気に日本のすべてが半額になってしまった感覚です。
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円急伸が揺さぶる金融市場
下落基調が続いていた円相場が変調をきたしています。23日から26日にかけ、円は1ドル=159円台から153円台へと上昇しました。米金融当局が為替介入の前哨として各金融機関に取引レートを尋ねる「レートチェック」を実施したと報じられ、円買い・ドル売り介入への警戒感が広がったためです。スイス・ドイツ語圏の大手紙NZZは、円相場の急伸が株式市場の動揺に波及していると報じました。
記事は特に為替の影響を受けやすい自動車メーカーが、株式市場で「不釣り合いなほど大きな損失を被った」と伝えています。円高により輸出企業の売上高や利益が減少する可能性があり、「見通しは不透明だ」と指摘しました。
そして「大きな疑問は、口先介入だけで円安の動きを反転させられるかどうかだ」と続けます。「日米両国とも円安に不満を抱いているため、円安の反転は政治的に望ましいと言える」。アメリカにとっては15%の輸入関税が相殺され、日本にとっては政治の最重要課題である輸入インフレを防げると説明しました。
今後の円相場を占う重要な要因の一つとして、「日米金利差」を挙げました。「これは今後さらに縮小すると予想される」。アメリカが利下げに向かうなか、日銀は23日に追加利上げへの意思を改めて表明しました。歴史的には金利差縮小は円高・ドル安をもたらします。
ただし、波乱要因は外国人投資家が日本の財政政策を懐疑的に見ていることだと指摘しています。高市早苗政権が2月8日投開票の衆院選に際し食料品にかかる消費税の2年間凍結を掲げているため、市場は日本の国家債務がさらに膨らむのではないかとの懸念を抱いている、と記事は説明します。そして「こうした懸念が続く限り、為替介入の効果は長続きしないリスクがある」と警告しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
スイスの投資専門家が見る日本債券市場
他方でフランス語圏の大手紙ル・タンは、日本の債券市場の動きに注目しました。30年、40年債の暴落(金利上昇)を説明し、スイス金融機関の専門家2人の見解を紹介しました。
仏オッドBHFスイス支店の投資責任者、アーサー・ジュラス氏は、日本の国債は主に日本の投資家が保有していることから「構造的リスクは少ない」とする一方、「これは市場での借り換えを困難にしている」と見ています。
またジュラス氏は、日本の債券相場の動きが国際的な混乱につながる要因として「日本の投資家が他のグローバル市場に保有する資本の規模が大きい」ことを挙げました。同氏によると世界の株式市場の5.5%を日本の投資家が保有し、これはアメリカに次ぐ規模だそうです。
スイスのプライベートバンク、シテ・ジェシオンのパートナー兼投資戦略責任者、ジョン・プラサード氏もこの点に注目しています。日本の投資家が保有する欧米の国債は総額5兆ドル強に上り、「国内利回りが急上昇すると、これらの資金をリパトリ(本国送還)したいという誘惑に駆られる」。このため日本国債への圧力は機械的に英米独の金利に波及するというわけです。
プラサード氏は、日米による為替介入観測についてもコメント。その効果を懐疑的に見ています。「市場は象徴的なジェスチャーではなく、明確な枠組みを求めている。それがなければ、あらゆる介入はより深い亀裂に絆創膏を貼るだけのものになってしまう」(出典:ル・タン/フランス語)
レアアース探索船「ちきゅう」にかかる期待
地球深部探査船「ちきゅう」が今月12日、レアアース(希土類)の試験採掘を行うため、小笠原諸島・南鳥島に向けて出航しました。海底約6000mから35tの堆積物を引き上げるという大プロジェクトの狙いは、レアアースの中国依存を断ち切ること。NZZがその意義と課題を解説しました。
日本は最終的に2030年の商業採掘を目指しており、それに向けた「ちきゅう」の試験採掘は「日本のハイテク経済における最も深刻な弱点の一つを克服するための第一歩」だと位置付けます。日本は中国がレアアースの対日輸出を規制した2010年以来、「中国はペンを一振りするだけで日本経済を麻痺させかねない」との危機意識を抱いてきました。
南鳥島の重要性について、記事は「物質の組成と鉱床の規模」と説明します。産業界にとって重要な重希土類を中国の陸上鉱床よりも豊富に含み、「数百年にわたって多くの元素の世界的需要を満たすことができる」可能性があるといいます。さらに陸上鉱石に比べ放射線レベルが低く、有害廃棄物の基準値を下回っている可能性もあります。
記事は技術的な課題や採算性の問題を指摘。さらに中国が空母「遼寧」で周辺水域を航行し、南鳥島が「中国海軍の作戦範囲内にある」というシグナルを発している、と説明します。ただ防衛産業で重レアアースの大消費国であるアメリカがちきゅうプロジェクトを支持していることも注記しました。
記事は最後に自然への影響にも触れました。採掘は堆積物をかき混ぜ、科学的にはまだ解明されていない生息地を破壊する恐れがあります。そして「疑わしい場合は、生態学的懸念は二の次になる可能性がある」と指摘。「なぜなら『ちきゅう』は資源だけではなく、戦略的な自律を掘り下げているのだ」と結びました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
「ジャパニーズ・チーズケーキ」は日本製?
昨年末来、あらゆるSNSで「ジャパニーズ・チーズケーキ」なるものが大流行しています。ビスケットをヨーグルトやクリームチーズに入れるという超お手軽レシピで、簡単に作れてたんぱく質が豊富なデザートとして多くのインフルエンサーが紹介しています。スイスのオンラインメディアwatsonフランス語版は、これがなぜ「ジャパニーズ」と呼ばれているのか、背景を探りました。
記事の結論はもちろん、「伝統的な日本のデザートとは無関係」。実際に存在する日本独特のチーズケーキとも別物だと指摘します。
ではなぜ「ジャパニーズ」なのか?記事が出した答えは「SNSでは『日本』という言葉が売れるから」。それは「精密さや軽やかさ、ミニマリズム、熟練した技術、素朴な料理といったイメージを喚起する」効果があると言います。そのために、ごく普通のデザートでも「ジャパニーズ」をつけただけで「突如としてより魅力的で、より『クリーン』で、ほとんどより洗練されたものになる」と分析しました。
記事は、こうしたラベリング自体は目新しいことではないものの、「SNSに表示されるもの、コンテンツ制作者や一般人が拾い上げるものは、アルゴリズムをより巧みに操作するために西洋人が作り出したもの」だと指摘します。例えばバターの塊にニンジンを挟んだだけでも「ジャパニーズ・キャロットケーキ」と称してSNSに投稿すれば、5分で有名人になれるかもしれない、とユーモアたっぷりに締めくくりました。(出典:watson外部リンク/フランス語)
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は2月4日(水)に掲載予定です。
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校閲:宇田薫
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