移民政策、時計、ハイジ… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が6月2日~8日に伝えた日本関連のニュースから、①移民政策②時計③ハイジ、の3件を要約して紹介します。
日本では気象庁が7日、関東甲信地方の梅雨入りを発表しました。スイス・チューリヒはここ最近、気温が30℃超えが続く週と、最高気温が20℃の雨降りの週が交互に続き、体がついていくのがやっとです。雨の日は好きなのですが、もともと多くてくせ毛の髪の毛がさらに広がるので、手入れが大変です。
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日本とブレグジットからスイスが学べること
今週日曜、スイス人口を1000万人上限とする保守党の案が国民投票にかけられることを受け、スイスメディアは今週も移民をテーマにした記事が多くみられました。
スイス・ドイツ語圏の日刊紙アールガウアー・ツァイトゥングは、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)と日本の移民・人口政策を例に、「1000万人のスイスー日本とブレグジットから何を学べるか」と題した記事を掲載。スイスの人口上限案は悪手だと警鐘を鳴らしました。
記事はまず、ブレグジット後の「期待外れ」な現状を指摘。EU離脱の影響を論文にまとめた研究者2人は、「広範な公約がなされたもかかわらず、経済的恩恵は実現せず、むしろ経済的損失を招いている」と論じています。具体的な数字として、EU残留時と比べ「GDP(国内総生産)成長の6~8%損失」を挙げました。
また移民については「人の自由移動を廃止したにもかかわらず、2023年の純移民数は94万4000人と過去最高を記録した」と、政策の意図と結果が逆転した「移民のパラドックス」現象が起きていると指摘しました。
一方、厳格な移民政策をとる日本については、生産年齢人口が減少に転じて以来、地方で深刻な過疎化が進んでいると紹介。日本の地方人口は63%も激減し、村や町が縮小する一方、都市部が肥大化していると伝えています。高齢化の加速にも苦しんでいます。
記事はスイス最大の経済団体エコノミースイスの声明を引用し「働く世代が減るにつれ、地方で物資の供給や、何よりもサービス(インフラ)を維持することが困難になっている。それを担う労働力が決定的に不足し、その結果、人々は都市部への『移住を余儀なくされて』いる」と指摘します。
こうした状況に触れつつ、エコノミースイスは「『愛するスイス』を本当に守りたいのであれば、人口上限に反対しなければならない」と主張している、と結んでいます。
オンラインメディアの20min.は、日本が2025年に在留外国人数で初めて400万人の大台を突破し過去最高を記録した一方、依然として多くの分野で人手不足が深刻化し、経済成長の潜在力を十分に発揮できていないと指摘します。
20min.は移民の「受け入れ枠」が経済界のニーズに対して明らかに低すぎるのに、枠が拡大されないのは移民の影響を警戒する政治的な理由がある、としています。
ただし労働力不足の背景には低い出生率も大きく影響している、と記事は指摘。日本はこうした人手不足を解消するため、ここ数年、ロボット工学やオートメーション化、人工知能(AI)の発展などに力を入れていることにも触れました。それでも年金制度への負担や高齢者の貧困など、課題は山積みだと言います。
記事は「日本が抱えるこの経済、社会、財政上の大きな課題を克服するための処方箋が、自動化の推進にあるのか、それとも移民の受け入れ拡大にあるのかは、現時点では誰にも分からない。しかし、同様の人口動態の問題に直面しつつある他の西側諸国にとって、日本の今後の動向を注視することは、間違いなく大きな有益だ」と結んでいます。
(出典:アールガウアー・ツァイトゥング外部リンク、20min.外部リンク/ドイツ語)
日本の時計がスイス製時計に「勝っている」理由
スイスの経済誌ビランツは、日本の時計メーカーが手頃な価格帯の時計でいかに成功を収められるかを、スイスの競合他社に見せつけているとする分析記事を掲載しました。
記事は、市場の最高価格帯をカバーしていない、言い換えれば「マスマーケット」において、スイス製時計は今どれだけ人気があるのか、と問いかけます。そして「我々の目の前には、明らかに傷ついた患者がいる。スイスの時計ブランドの大部分は苦しみ、停滞し、あるいは縮小している」と指摘しました。これは、伝統と品質で知られるスイスの時計産業が直面する厳しい現実を浮き彫りにしています。
翻って、日本の三大時計セイコー、シチズン、カシオは売上高10億フラン(約1600億円規模)を誇る企業へと成長しました。経済史家で日瑞の時計産業に詳しいピエール・イヴ・ドンゼ教授(大阪大)は同誌に「スイスの時計会社は、日本の競合他社から学ぶべきだ」と明確に提言しました。
ドンゼ氏は、「日本の時計メーカーは、100年前から一つのセグメント、つまり中価格帯の大衆市場に焦点を当ててきた」ことが勝因の1つだと説明。スイスの競合他社が全体的に、しかも時に大幅に値上げを行う中、日本のメーカーは価格を抑え、手頃かつ最高品質のモデルを提供していると評価しました。
さらに現代の「おしゃれでクール」な日本のイメージが有利に働いている、とドンゼ氏は指摘します。「セイコー、シチズン、カシオは、現在この状況を非常に巧みに、そして十分に活用している」と分析。たとえばカシオの1980年代や90年代のクラシックなデジタルウォッチが若い消費者の間で再び人気が出ている点を挙げました。
記事は、「スイスの時計業界は前世紀に日本とのクォーツの覇権争いをあきらめ、スマートウォッチの世界的な成功を過小評価した結果、その分野では現在完全に引き離されてしまった。世界的に拡大する手頃な価格の時計の市場においても、決して遅れをとるべきではない」と警鐘を鳴らしています。
(出典:ビランツ外部リンク/ドイツ語)
スイスで高畑勲展「ハイジを日本にもたらした男」
ドイツ語圏スイス公共放送(SRF)は、ローザンヌの現代デザイン応用美術館でアニメーション映画監督・故高畑勲氏の作品展が開かれていることに合わせ、「ハイジを日本に届けた男、高畑勲」と題する記事を掲載しました。
記事は、高畑氏が「アニメーション映画の表現方法を根本的に刷新し、独立した芸術形式へと高めた」と、その功績を高く評価しました。学生時代にフランス文学を学び、西洋、特にネオリアリズムのイタリア映画に没頭していたことに触れ、それが日本のアニメーションにおいて全く新しい物語形式を生み出すインスピレーションになったと説明しました。
スイス発の文学「ハイジ」を1974年にアニメ化し、日本のスイスへの憧れを呼び起こす大きなきっかけになった点も強調されました。
美術館のマルコ・コスタンティーニ館長は、高畑勲展を企画した動機として、「なぜ日本人の彼がスイスの物語を選んだのか。そして日本のアニメーション映画がスイスをどのように見ているのかに興味があった」とSRFに語りました。
記事の最後では、宮崎駿氏らのスケッチが展示されていることに触れ、「わずか数本の線で、すでに動きが見て取れるような人物像が作り出されている」とその高い技術力を賞賛しています。
(出典:スイス公共放送/ドイツ語外部リンク、フランス語外部リンク)
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14日の国民投票で是非が問われる人口1000万人上限案は、国外メディアでも大きく注目されました。10言語でニュースを発信するスイスインフォは、各言語圏のメディアをウォッチ。その反応をこの記事にまとめました。賛否がわかれたスイス人読者の反応は、こちらの記事でまとめています。
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校閲:大野瑠衣子
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