高齢化、観光公害、ゴミ箱ロボット…スイスが報じた日本のニュース
スイスのメディアが15日~21日に報じた日本のニュースから、今週は高齢化、観光公害、ゴミ箱ロボットの3件を要約してお届けします。
長寿の祝福という善意の制度が財政の「重荷」と化す日本の現実は、人口減少という構造変化を如実に物語ります。スイス紙が指摘する通り、銀杯のサイズ縮小やメッキ化は目先の帳尻合わせにすぎず、社会保障制度の維持という本質的な問いへの答えにはなっていません。少子高齢化にどう向き合っていくのか、抜本的な対策が求められます。
銀杯のサイズ縮小が象徴する日本の「静かな有事」
日本で100歳以上の高齢者数が初めて10万人を超えました。スイス・ドイツ語圏の主要紙NZZは、かつて国が始めた長寿の祝福という「美しい伝統」が、今や財政的な重荷に変貌するなどといった人口高齢化に伴う経済的課題に改めて目を向けました。
同紙は冒頭で、「おむつ売り場を見れば、その国の人口がどれだけ高齢化しているかがわかる」と切り出します。日本では2011年以降、大人用おむつの売上が乳幼児用おむつの売上を上回りました。おむつメーカーの王子ホールディングスは2024年、ベビー用おむつの国内事業から撤退しました。NZZはこの現状を、人口動態の劇的な変化を物語る象徴的な光景として描写しています。
また、100歳を迎えた国民に国から贈られる「銀杯」について、「高齢者のために導入されたささやかな敬意の印が、国家にとって財政的な重荷へと変わった」と紹介。政府が100歳以上の高齢者の組織的な登録を開始した1963年当時はわずか153人だった対象者が今や10万人を超え、銀杯の配布が経済的な負担になっていると指摘します。
国は銀杯の直径を10.5cmから9cmに小さくしコスト削減を図りましたが、同紙は「高齢化の波の前には一時しのぎにしかならなかった」としています。2016年からは、純銀製から銀メッキ製に変更されたことにも触れています。
日本は出生率が過去最低を記録するなど少子化も止まりません。この少子高齢化に伴う人口減少の危機について、同紙は「静かな有事だ」と述べた高市早苗首相の言葉を紹介。政府がさまざまな子育て支援策を講じながらも、未婚率の上昇や女性の社会進出、子育てにかかる費用の高騰といった複合的な要因によって、効果がほとんど上がっていないと指摘しています。
最後に同紙は、年間約100万人規模で減少を続ける日本の人口動態に触れ、「この人口減少に比べれば、銀杯にかかる費用など些細な問題にすぎない」と締めくくりました。将来の年金を誰が支払い、誰が高齢者を介護するのかという、より本質的な問いが未解決のまま残されていることに警鐘を鳴らしています。
「空気読めない」外国人観光客に東京が下す決断
円安で日本が観光地として人気を集める中、スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、東京都新宿区が民泊(Airbnbなど)の規制強化に踏み切る動きを報じ、観光客の振る舞いと住民生活の衝突を独自の視点で分析しました。
同紙は冒頭で、「見知らぬ他人が引いて歩くキャリーバッグの騒音で目覚めたいと思う人は、まずいない」と指摘しました。東京都新宿区が住民トラブルの増加などを理由に住宅地などでの民泊営業を原則禁止する方針を打ち出したことで、「民泊施設の半分以上が影響を受ける」と紹介しています。
日本人の「控えめで親切」な姿勢は世界的に知られていますが、「観光客の騒音やごみのポイ捨てといったマナー違反を容認しているわけではない」と論じました。寺社でのマナー違反や京都での舞妓・芸妓への無断撮影といった観光客の身勝手な行動に対し、地元住民たちは静かな怒りを感じている、と同紙は続けます。
さらに、日本社会の秩序を支える見えないルールに踏み込み、「日本の社会的な結束は、何千もの礼儀作法や配慮によって維持されている」と説明しました。この調和こそが日本の魅力である一方、異文化から来る人々との間で摩擦を生む原因になっていると分析します。
日本人が「空気を読む」と呼ぶような、言語化されない日本特有の「思いやり」や「マナー」を理解することは、欧米や中国、インド、ロシアからの観光客にとって簡単ではないと指摘。それが各地でのトラブルやイベント中止といった状態を引き起こしていると解き明かしています。
こうした観光公害により、同紙は京都市がすでに非常に厳しい営業制限を敷いていることに触れ、「着物を着て芸者のような格好で写真を撮りたい観光客にとっては少し残念だが、地元住民にとっては極めて快適な措置だ」と結びました。
駅の救世主となるか――新宿駅の「ロボットごみ箱」実験
JR東日本が東京・新宿駅で自律走行型の「ごみ箱ロボット」の実証実験を開始したニュースについて、スイス・フランス語圏のオンラインニュースメディア20min.(AFP通信配信)は、人手不足と駅の「ごみ箱不足」という課題を同時に解決し得る試みとして報じました。
同紙は、実験の主要な目的は清掃員の負担軽減につながるかを検証することだと説明しました。1日に270万人以上が利用する巨大ターミナルにおいて、清掃スタッフは1日10回以上も手作業でごみの回収を行っているといいます。
実験では、高さ1mほどの移動式ごみ箱ロボットが毎秒20cmで低速走行し、人々が投げ入れたごみを清掃スタッフのもとへ運ぶ役割を担います。同氏は「こうした移動式ごみ収集箱がどれほどの効果をもたらすのか、そして人々が実際にそこにごみを捨てる意思があるのかどうかを見極めたい」というJR東日本担当者のコメントを紹介しています。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は9月29日(火)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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