スイス国民投票、中立のあり方問う 食料安全保障や自殺ほう助も
スイスで27日に行われる国民投票では、厳格な中立の定義を連邦憲法に明記する「中立イニシアチブ(国民発議)」と、国内の食料自給率引き上げを目指す「食料イニシアチブ」の是非が問われる。州・自治体では、避妊費用の公的負担や介護施設での自殺ほう助をめぐる住民投票もある。結果は同日午後に判明する見通し。
スイスの「中立性」は国民のアイデンティティーに深く根付いている。一方で、その解釈については、1848年に近代国家としてのスイス誕生以来、地政学的状況に応じて柔軟に調整されてきた。イニシアチブ「スイスの中立の維持外部リンク(通称:中立イニシアチブ)」発起人委員会は、中立をより厳格に定義し、憲法に明記することを目指している。
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「中立イニシアチブ」でスイスはどう変わる? 厳格化をめぐり国民投票
中立イニシアチブの背景には、ロシアによるウクライナ侵攻がある。侵攻をきっかけに、スイスの中立をめぐる議論が再燃した。
イニシアチブが求める主なポイントは以下の2点。
▽連邦憲法に「永世武装中立」を明記する。具体的には、外交について定めた第54条を改正し「スイスの中立は永世・武装である」「スイスが直接軍事攻撃を受けない限り、いかなる軍事同盟、防衛同盟にも参加できない」と規定する
▽戦争当時国に対し「非軍事的強制措置(制裁措置)」を課すことを禁じる
中でも「非軍事的な強制措置(制裁措置)」の禁止は抜本的で、今後、国連が安全保障理事会で決定した制裁でない限り、戦争当事国に対してスイスが独自に制裁を課すことができなくなる。
スイス公共放送協会(SRG SSR、スイスインフォは一部門)が委託し、gfs.bernが実施した世論調査によると、有権者の過半数が中立イニシアチブに反対する意向を示している。9月初めの時点で、63%が「反対」、34%が「賛成」、3%が「わからない」と回答した。
イニシアチブを支持しているのは、与党では保守右派・国民党(SVP/UDC)のみ。政府と議会はいずれも反対している。
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「食料イニシアチブ」に主要政党の支持なし
食料供給をめぐる「安全な食料のために(通称:食料イニシアチブ)」は、環境活動家からなる少人数の委員会が立ち上げた。スイスの食料自給率(46%)を少なくとも70%に引き上げることを目指し、農業政策を通じて、動物性食品よりも植物性食品の生産と消費を促進するよう求めている。地下水資源の保全強化も盛り込まれている。
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持続可能な農業か、それとも「ビーガンの押し付け」か スイスで食料安全保障問う国民投票
政治的には、左派・緑の党(GPS/Les Verts)の青年部だけが、イニシアチブへの賛成を呼び掛けている。
主要な組織からの支持は限られているものの、望みがないわけではない。9月初めの世論調査では、食料イニシアチブに対し33%が「賛成」、64%が「反対」、3%が「わからない」と回答した。
両イニシアチブが可決されるには、投票で過半数を得るだけでなく、州の過半数の賛成も必要となる。
スイスでは年に最大4回、国民投票が行われる。国民投票に参加できるのは、18歳以上で、かつ成年後見制度(保護監督下)に置かれていないスイス国籍保有者のみ。投票は郵送または投票所で直接行う。在外の場合は事前に登録が必要。有権者数は約560万人で、これはスイス人口(約900万人)の3分の2弱に相当する。
スイス国籍を持たないスイス居住者(外国人)は人口の約4分の1を占めるが、連邦レベルの投票権を持たない。
通例、有権者の約半数は投票する。連邦統計局によると、過去10年間の年間平均投票率は41%から57%の間で推移している。つまり、実際には150万票未満でも選挙結果を左右する可能性があるということだ。
避妊費用と自殺ほう助をめぐる州・自治体の投票
スイスでは同日、州・自治体ごとの住民投票も行われる。
ジュネーブ州では、避妊にかかる費用を州が負担するよう求めるイニシアチブについて住民が是非を判断する。このイニシアチブを立ち上げた左派・社会民主党(SP/PS)を中心とする賛成派は、性と健康に関するサービスや避妊への平等なアクセスを求めている。
現在、避妊にかかる費用と負担は主に女性が負っている。
反対派は、このイニシアチブが低所得者を主たる救済対象に据えた内容ではないと批判している。また、可決されれば 州の年間負担額が2000万フラン(約38億円)を超えると主張している。
チューリヒ州では、すべての高齢者施設と介護施設に対し、施設内での自殺ほう助を認めることを義務付けるかどうかが問われる。患者・医療法の改正を求めるイニシアチブは、スイスの自殺ほう助団体「エグジット」と「ディグニタス」が提出した。
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編集:Pauline Turuban/gw、英語からの翻訳:大野瑠衣子、校正:宇田薫
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