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2025年9月28日スイス国民投票、デジタルID導入と「マイホーム家賃収入税」廃止

連邦議事堂と投票用紙を持つ手のコラージュ
swissinfo.ch / Helen James

スイス有権者は28日の国民投票で2つの案件の是非を判断する。1件目はデジタルID(eID)の導入、2件目はマイホームに課税される「家賃収入税」の廃止だ。 

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デジタルIDの導入が国民投票にかけられるのは今回が2度目となる。

1度目の2021年は、民間企業が発行主体となる点が不安視された。今回は政府が単独で発行・管理する手法に法案を修正した。

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デジタルID法は有権者の幅広い支持を得ている。スイス公共放送協会(SRG SSR)が委託しgfs.bernが9月に実施した第2回世論調査では、賛成が59%、反対は38%だった。

デジタルID法は連邦議会の上下院で可決済みだ。右派・国民党(SVP/UDC)を除くすべての与党と連邦内閣が法案を支持している。

反対派はプライバシー侵害やe-IDインフラが悪用される恐れがあると訴える。反対派が5万筆以上の署名を集めて法律の施行に反対するレファレンダム(国民表決)を提起。最終的に有権者の判断に委ねられることとなった。

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マイホームへの「家賃収入税」は廃止される?

2つ目の案件は、所有住宅にかかる税改革だ。スイスには、自分が住む住宅に対し、「仮に賃貸に出した場合に得られる家賃収入」が所得に加算され、課税される「推定賃貸価格制度」というシステムがある。この制度の廃止が国民投票で問われる。

制度廃止に伴う税収減を補填するため、法案では各州に対し、セカンドホーム(別荘)への新税を導入できる選択肢を提供する。新税導入には憲法改正が必要となるため、国民投票が実施されることになった。これが可決されれば、推定賃貸価格制度は自動的に廃止される。可決には有権者と州の過半数の賛成が必要だ。

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世論調査では賛否が揺れ動く。第2回調査では支持率が前回調査の58%から51%へ急落。在外スイス人ではさらに低い49%だった。4%が「未定」と答えた。

右派の国民党、中道右派の中央党(Die Mitte/Le Centre)、中道右派の急進自由党(FDP/PLR)は改革案を支持。連邦議会両院と連邦内閣も可決を推奨している。より簡素で均衡の取れた制度に向けたバランスの取れた改革だと訴える。

左派の社会民主党(SP/PS)や緑の党(GPS/Les Verts)などは、税収減につながるとして反対している。スイス人口の大多数を代表するスイス賃借人協会は、新制度は賃借人が所有者に比べて不利になると主張する。

推定賃貸価格制度の廃止も過去に投票が行われている。1999年の「住宅所有権の普及」イニシアチブ(国民発議)や2004年の「2001年財政パッケージ」に関するレファレンダムがそうだ。いずれも否決された。

投票資格は18歳以上のスイス人 

人口900万人のうち、連邦レベルの国民投票に参加できるのは18歳以上のスイス国籍を持つ約550万人。総人口の3分の2弱に相当する。被後見人でないことも条件だ。 

スイスに居住するスイス国籍を持たない人々は人口の約4分の1を占めるが、投票権はない。

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「スイスの外国人人口は、無視するには多すぎる」

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは、住民の3人に1人が国政選挙や住民投票に参加できない。世界で最も多く国民投票が行われる国に住みながら投票できないという現状を、当人たちはどう受け止めているのだろう。

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連邦統計局によると、過去10年間の年間平均投票率は41%から57%だった。つまり、国民投票で可決されるには約150万票が必要となる。

落ち葉掃除の「ブロワー」禁止が住民投票に

西部ヴォー州では28日、州内に居住する非スイス市民に対し、投票権と被選挙権を付与するまでの待機期間を現行の10年から5年に短縮するか否かを決める住民投票が行われる。外国籍者が州内に少なくとも3年間居住している必要があるという条件は維持する。

住宅不足に絡む住民投票がジュネーブ州、ベルン州で行われる。ジュネーブ州では、2030年までに州内の住宅の10%を非営利協同組合が所有するよう求めるイニシアチブ(現行は5%)が投票にかけられる。

ベルン州では、空室率が低い時期に賃借人が替わる際、家主へ前賃料の開示を義務付け賃貸市場の透明性向上を目指すイニシアチブについて投票する。同様の制度は、バーゼル・シュタット、ジュネーブ、ルツェルン、チューリヒなど複数の州で導入されている。

チューリヒ州では、落ち葉掃除に使うブロワーの禁止案が住民投票にかけられる。

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編集:Samuel Jaberg/ts、英語からの翻訳:宇田薫 

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