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ヴァレー州の氷河から人間の遺骨が出現

(RDB)

ヴァレー/ヴァリス州南部の氷河は少しずつ確実に溶け続けている。そのため遺骨の出現が増加するという思いがけない結果が表れた。

7月末、ツェルマットの上にある雄大なゴルナー氷河のとある地点でミトン、40年前のカメラ、そして人骨が発見された。

完全な骸骨を発見

 ヴァレー/ヴァリス州警察の科学調査専門官パトリック・ロヴィナ 氏によると、こうした発見は近年増加しつつある現象となっている。
  
 「近年の氷河後退に伴い、氷河の中の物が表出し始めました。昨年はこのような遺骨の発見が5件ありました」
 と山岳救助隊「エアー・ツェルマット ( Air Zermatt ) 」の代表ブルーノ・イェルク氏は最近の傾向を明らかにした。

 「遺骨、古いスキー、衣類そしてそのほかの遺物を発見したと報告が来ます」
 とイェルク氏は、以前マッターホルンの近くかゴルナー氷河で完全な骸骨が発見されたことを付け加えて説明した。

 連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) の科学者によると、ゴルナー氷河 ( Gorner glacier ) は2007年から2008年の間に290メートルも縮小した。

300人の行方不明者

 人骨や遺物は、高地の氷河地域と同様ローヌ谷に流れ込む河川の川下でも発見されている。1926年以来ヴァレー/ヴァリス州では約300人が消息を絶ち、公式に行方不明とされている。

 ヴァレー/ヴァリス州の高地の中で行方不明者が出た主な地域は、観光客や地元の旅行者の間で非常に人気が高いツェルマットとサース・フェー ( Saas Fee ) だ。冬に約200万人のスキー客、夏には約42万5000人の登山客がツェルマットを訪れる。またエヴォレーヌ ( Evolène ) 、サネッチュ ( Sanetch ) 、トリアン ( Trient ) 、グラン・コンバン ( Grand-Combin ) などヴァレー州の低地地域でも遺骨が発見された。

 7月末に発見された遺骨と遺物があった場所は、高峰モンテ・ローザの西側、標高2500メートルに位置する全長14キロメートルのゴルナー氷河だ。
 「しかし、遺骨が非常に古いということは、それらすべてが同じ人の物だとは言えないことを意味します。遺骨がほかの遺物のところまで運ばれてきた可能性があります」
 とロヴィナ氏は語る。

最古のケース

 2009年1月にローヌ谷のヴィエージュ ( Viège ) とトゥートマニュ ( Tourtemagne ) で女性2人の遺骨が発見された。それらは2001年に行方不明になった72歳のドイツ人観光客と1973年に消息を絶った地元ヴァレー/ヴァリス州の町ウンテルエムス ( Unterems ) の68歳の女性のものだった。

 しかしロヴィナ氏が担当した事例の中で最も古いものは、1967年に姿を消した父と息子のケースだ。脚の骨を含む遺骨と1揃いの靴が氷河の上に2007年に数ヶ月間にわたって散らばっていたのを観光客が発見した。

 「氷河は動いています。遺骨の一部を見つけた後、しばらくたってから50メートルから100メートル下で遺骨の別の部分に出会うことがあります」
 とロヴィナ氏は説明する。

DNAの技術

 このように標高の高い山で行方不明となった人々の身元究明のために、ヴァレー/ヴァリス州の警察は近代的なDNA鑑定技術の助けを借りている。ベルン大学の犯罪科学研究所 ( The Institute of Forensic Medicine ) やローザンヌ大学の犯罪科学学部 ( School of Criminal Justice ) との緊密な協力のもとで調査が行われている。

 専門家によると、DNA鑑定の成功は、遺骨がどれだけ長く湿気や太陽光線にさらされていたかに左右される。警察は氷河の下から遺骨が発見され次第、丁寧に包み、DNAが分解しないようベルン大学かローザンヌ大学のどちらかに移送するまで最適な環境で保存する。

 またヴァレー/ヴァリス州の警察は、ブリーク ( Brig ) に巨大な保管庫を所有している。そこは、靴、スキー、衣服、ピッケル、アイゼン、リュックサック、その他の身の回り品など斜面で発見された古いスキー用具や登山用品でいっぱいになっている。それらの遺物は保管リストに注意深く記載され、いつの日か行方不明者の身元判明に役立つかもしれない。

 ゴルナー氷河で見つかったミトンも隠れた秘密を明らかにしてくれるかもしれないとロヴィナ氏は言う。
 「中に何か、皮膚の一片のようなものがあるかどうか見なくてはなりません。しっかり乾かしてから分析します」

サイモン・ブラッドレー swissinfo.ch 
( 英語からの翻訳、笠原浩美 )

氷河

雪、氷、砂礫 ( されき ) が大量に堆積し大きなかたまりとなり、それ自体の重さから生じた圧力によって下方と外部方向に向けて流れ出したものが氷河。
氷河は、年間降雪量が、夏の間に溶けた雪と氷の量を大幅に超えた場合に形成される。
スイスの氷河は水力発電のための貯水庫という重要な役割を果たしている ( スイスの全発電量の5割を水力発電が占める ) 。また氷河は重要な観光名所ともみなされている。
スイスに基盤を置く「世界氷河モニタリング・サービス ( The World Glacier Monitoring Service ) 」によると、19世紀後半から世界中の氷河は著しく後退してきた。
氷河は1940年代に大幅な後退、1970年代に安定・成長、1980年代半ば以降から再度縮小していると同機関は報告している。
「気候変動に関する政府間パネル ( IPCC ) 」によると、現在の気候のもと、氷河溶解のスピードは加速していないとしても、世界中の氷河が急速な縮小傾向にあることから、21世紀末までに多くの山脈で氷河が広域にわたって後退する可能性があると予測される。
スイスの氷河は1985年から2000年の間に表面積の18%を失った。アルプス全域の消失率は平均22%。スイスの氷河は標高が高い場所に位置しているため、比較的緩やかな速度で消滅している。
チューリヒ大学の2004年の研究によると、氷河の溶解はまず小規模な氷河に現れ、スイスの全氷河の表面積の18%を占めていた小型氷河のほぼ半分が失われた。

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