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「マッド・ハイジ」、時代遅れの映画業界に風穴を

「マッド・ハイジ」の1シーン Pascal Greuter Photography + Motion Graphics
このコンテンツは 2020/09/29 17:00

スイス生まれの物語「ハイジ」。その愛らしいアルプスの少女が血みどろの戦いを繰り広げる娯楽映画「Mad Heidi(マッド・ハイジ)」の制作がスイスで進む。型破りなのはストーリーだけではない。制作・公開までのプロセスも、だ。

初のスイス・エクスプロイテーション映画(搾取映画)が29日、ブロックチェーンを活用した新たなクラウドファンディングを始めた。映画の撮影と撮影後の編集作業費を募るもので、100~200万フラン(約1億1千万~2億2千万円)を目標に掲げる。

エクスプロイテーション映画とは?

主に金銭的利益のために、有名なキャラクターやストーリー、巷をにぎわす社会問題をまねたりして作られた低俗娯楽映画のこと。英語のExploitationは「搾取」を意味する。ジャンルはアクション、ソフトコア、ポルノ、コメディ、暴力、ギャング、ホラーなど様々。低予算で作られることが多い。

米国では1970年代、黒人向けのブラック・エクスプロイテーションが独自のジャンルとして発展。わいせつな素材を強調したセクスプロイテーション、修道女たちがテーマのナンスプロイテーションもある。

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Mad Heidi(マッド・ハイジ)

ヨハネス・ハルトマン監督。

大人になったハイジが、ファシストの手に落ちた祖国を救うため蜂起するというホラーアクション・コメディ。

2022年に公式ホームページ上で公開予定。

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取引記録はブロックチェーン上に保存され、映画の公開後、投資者へ自動的に利益が還元される仕組み。製作チームは「契約はすべてペーパーレスで猥雑な事務作業が必要ない。(外部からの改ざんが難しいため)資金の透明性も確保できる」と強調する。

「時代遅れのビジネスモデルに風穴を」

Mad Heidiの企画が持ち上がったのは3年前の2017年。エクスプロイテーション映画の長年のファンだったスイス人監督ヨハネス・ハルトマンさんが、世界ブランド「ハイジ」を素材にした映画を作りたいと、仲間のフィンランド人プロデューサー、テロ・カウコマさん、スイス人プロデューサーのヴァレンティン・グロイテルトさんに声をかけ、企画がスタートした。現在、この3人を含む5人でプロジェクトを進める。

映画製作に20年関わるグロイテルトさんは、資金繰りや公開までのプロセスなど、既存のビジネスモデルに限界を感じていた1人だった。

「欧州で映画を作るとき、資金はほぼフィルムコミッションなどからの補助金頼み。出資者が15件に上ることも珍しくない。出資者によっては使途の制限があるし、出資者が増えれば提出する書類作業も増える。我々のような小規模プロダクションにとっては非常に負担が大きい」

ヴァレンティン・グロイテルトさん。自身が製作を手掛けたスイス人探検家の伝記映画「Paradise War: The Story of Bruno Manser」は昨年のチューリヒ映画祭でサイエンス部門賞を受賞 A Film Company GmbH

また上映までにはセールス会社、配給会社、興行会社など複数の事業主体が間に入り、その分中間マージンが抜かれる。「製作者へ最終的に還元される利益はゼロに等しいのが実情。また欧州の独立系映画製作者は、国際的な映画ファンにリーチするのが難しい。映画が市場に渡った瞬間、(公開方法などを)自分でコントロールできないからだ」という。

「撮影機材はどんどん新しくなっていくのに、ビジネスモデルは20年間ほとんど変わっていない。誰かが時代遅れのビジネスモデルに風穴を開けなければならない」とグロイテルトさんは話す。

Mad Heidiはこのため、映画ファンをターゲットにしたクラウドファンディングやオリジナルグッズ販売を通じて資金を集める手法を取った。カウコマさんが製作を手掛けた「アイアン・スカイ」シリーズもクラウドファンディングの成功例で、そのノウハウも後押しした。

「Mad Heidi(マッド・ハイジ)」予告映像の撮影風景。撮影はスイスのベルナー・オーバーラントで行われた Pascal Greuter Photography + Motion Graphics

製作チームはホームページやソーシャルメディアを通じてファンと積極的に交流。フォロワーは欧州、アジアなど45カ国から約4万人を数える。

グロイテルトさんは「タブー破りのストーリーも、ファンと一緒に映画を作るというやり方も、普通の映画とは全く違う。その新鮮さが受け入れられたのでは」と話す。

ただ、脚本を書いたライターは4月、過激な予告映像を見た勤務先のチューリヒ州警察の逆鱗に触れ、即時解雇された。このような映画に関わる人物は警察の管理職にふさわしくない、というのが理由だったという。最終的には民事訴訟に発展し、連邦裁判所は警察側の対応に非があったとする判断を下した。訴訟は係争中だ。

コンテンツ製作を民主化

映画を世界展開する場合、各国の宣伝・興行戦略などにより、国によって公開日に差が出ることが多い。グロイテルトさんは「自国での公開を待ちきれないファンと違法なコピー業者の間で需要供給が成立し、海賊版が横行する」ことが大きな問題だと語る。

Mad Heidiをインターネット上で公開するのは、その現状を打破するためだ。「自社サイトなら中間マージンもカットでき、投資者にベストな形で利益を還元できる」とグロイテルトさんは話す。

2018年から過去2回、ディベロップメント(企画)、プリプロダクション(撮影前の作業)に先立ちクラウドファンディングを行い、いずれも目標額を達成。クラウドファンディングでの獲得総額は計8万4千フラン、オリジナルグッズ購入の収益は15万フランに達した。

グロイテルトさんは「これまでの順調な流れが今後も続けば、映画を公開できる可能性は極めて高い」と自信をのぞかせる。

また、制作段階からファンを参画させる手法は「コンテンツ作りを民主化したという点で非常に重要。次世代のコンテンツ製作の1つのモデルになる」と話している。

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