スキー安全規制の効果はほとんどなし
スキー・シーズン真っ盛り。しかし、毎年スノー・スポーツの事故は絶えない。この冬、事故防止のための安全規制が導入されたが、専門家によると、効果はほとんど出ていないという。
毎年、スイス・アルプスでスキーやスノーボードで怪我をする人はスイス人だけで8万人、外国人を入れると10万人以上に達する。
この安全対策に向けた新規制は、スイス全土と、スイスにスキーに来る客が多い英国で大々的に報道された。しかし、そんな努力もむなしく、危険に対してちょっと注意を促す程度しか効果は上がっていないようだ。
スピード制限
この規制では、危険から身を守る行動を喚起するほか、訓練されたスキー・パトロール隊を増やすことや有名観光地グリンデルワルトではスピード制限まで設けたことが明記されている。
2006年1月1日からグリンデルワルトでは、リゾート地から2キロ上がった所までのスピード制限を時速30キロに設定した。しかしこれで事故が激減するとはとても思えない。
報道ではスピード違反者には厳しい処置が待っているとされているが、実際は丁寧な言葉で「他の滑走路に移って頂けませんか」と言葉をかけられるだけだ。しかも、グリンデルワルトの全滑走距離は120キロもあるのだ。
パトロール隊も出動
ユングフラウヨッホ鉄道の職員で、グリンデルワルトのスキー・リフトを動かしているペーター・ヴェンガーさんはお手上げ状態といった風だ。「私たちには罰金を科すだけの力はありません」
「皆さんが責任を持った行動を取っていただけると信じるほかありません。せっかく楽しみに来ているのに、規制でがちがちにして、観光客が減るのは困ります」
しかし、実際は困ったスキーヤーに対する罰金はスイス・アルプスではこれまでもよく見られることだった。州ごとに雇われた監視人がいて、自然保護地域や野生動物生息地帯立ち入り禁止の標識を無視するスキーヤーには罰金を科せる権利を持っている。
罰金以外の安全対策努力も続けられている。シーズンの初めには、訓練されたスキー・パトロール隊が、スイス・ケーブルカー協会のルールに従って滑るようにスキー客に促している。
スイス・ケーブルカー協会の広報、フェリックス・マウルホーファーさんはスイスインフォの取材に「来年はスキー・パトロール隊の訓練プログラムに着手します。そうなれば、より統一の取れたパトロールが可能となるでしょう」と語った。
標識も立てます
マウルホーファーさんによると、協会は国際スキー連盟が定めたスキーヤーへの安全規制を標識にして、それぞれのスキー・リゾートに立てることも検討しているそうだ。しかし、この規制を知っていて、標識を理解しながら滑るスキーヤーがどれだけいるのだろう。
マウルホーファーさんは反論する。「メッセージが一般に浸透するまでは時間がかかるものです。あと2、3年すれば、主だったリゾート地で標識の設置が完了します」
スイス事故保険基金(Suva)は、今年からスイスのスキー・リゾート地で、10種類以上の安全対策コース(ビデオをご覧下さい)を開催している。
問題は別のところに
しかし、スイス事故防止評議会は安全キャンペーンや規制で事故を減らすのは難しいと見ている。評議会のマガリ・デュボワさんはスイスインフォの取材に「事故が多発するのは晴れた日や雪の状態が良い日です。とにかくスキー場に人が多すぎるのが事故の原因になっているのです。冬のスキーシーズンには、休日に事故が多発しています」と語った。
「でも、最近人々が事故に対してかなり気をつけるようになってきたのは、良い傾向です」。2005年にヘルメットをかぶってスノー・スポーツをするようになった人は2003年と比べて2倍の28%に増えた。新しく購入する人も増えたため、ヘルメットの販売も好調だ。
swissinfo、デイル・ベヒテル 遊佐弘美(意訳)
スイス事故防止評議会がまとめた2003年の統計によるとスノー・スポーツによる事故は(外国からの旅行客は含まない):
スキーでは4万9660人
スノーボードでは2万8890人
これはスイス全体のスポーツによる事故の3分の1にあたる。
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