ラフー神がスローライフに導く、スイスの時計

行動をとる前に考える時間を示す時計 pd

スイス西部州名をグラン ( Gland ) にある小さな時計会社が、時計の概念に新しい概念を提示した。ブランド名「ボルゴーＤ ( BorgeauD )」 は、1日90分の休憩時間を提案する。

12時間で1回りする針と、インドのカレンダー「パンチャング暦」で時を刻む時計が付いている。パンチャング暦は、3000年の歴史のあるカレンダーだ。

　2人の発明家のアイデアが1つの時計ボルゴーＤに集約された。「時間に新しい次元を与えるユニークな時計です」と製作者の1人のマーク・エシェンバッハー氏は胸を張る。

瞑想の時間

　普通の時刻を示すのとは別に、自動的に1日に90分間の「ラフー神の時間」が表示さる。ラフー神はインドでは日食や月食を起こす重要な神と考えられている。
「インドでは、ラフー神の時間に相談せずには重要なことは何も決まりません。ラフー神の時間は危険です。月の満ち欠けにより、行動するのには適せず瞑想する時間というのがあるのです」
　とパートナーのチトラ・スブラマニアン氏は説明する。パンチャング暦は太陽と月と数多くの星の動きが計算された暦だ。4つから5つの時点が危険だが、ラフー神の時間もその1つだ。

　問題はラフー神の時間が、月曜日は朝に、火曜日には午後に、水曜日には正午にと毎日違う時間にあることだ。このためほかの大手時計メーカーはパンチャング暦を刻む時計を作ろうという考えすら持たなかった。しかし、ボルゴーＤの2人はこの問題に取り組み、ラフー神の時間を示す複雑時計を開発し、特許は登録済みという。

　パンチャング暦の時計は複雑時計以上の時計でもある。
「時間の総合概念を見て、時計博物館のすべてを訪問してみるといいです。よりトゥールビヨンな時計とか、より複雑な時計が常に見つかるはずです。複雑であるために複雑に作ったといった具合です」
　トゥールビヨンとは時計をどのような方向に置いても、引力に影響されず示す時間に誤差が出ないようにしたメカニズムだ。

機能性

　「ボルゴーＤは複雑時計だが、機能性がそうさせたものです。連続性はないという意味で複雑なのであり、複雑に作らなければパンチャング暦を時計で実現できなかったのです。複雑さをわざわざ作っているわけではありません」
　とスブラマニアン氏は答える。ボルゴーＤの文字盤の右下にパンチャング暦の時計があり、瞑想時間は実際の90分間として物理的な量で表される。

　パンチャング暦がいま人目を引くのは当然だが、この時計を開発した当初はそのようなことはなかった。
「興味を持たれるとしたら、好奇心から来るものだけ。当初、われわれのアイデアはまともに受け取られていないという印象がありました。今はすごい反響です」
　とスブラマニアン氏は言う。インド市場の可能性が高い上、ヨーロッパの消費者のニーズも高そうだ。

　「ヨーロッパでは、まったく新しいアイデアに人気が出ると思います。顧客には、自分自身と90分間のアポを取ることができる時計だとアピールしています。消費者はこうしたものが好きですからね。この時計は、『ちょっと待って』と言ってくれる唯一の時計なのです」

swissinfo、ロバート・ブルークス　佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

パンチャング暦時計　ボルゴーD

今年のバーゼル時計宝飾市「バーゼルワールド」に出展された。
パンチャング暦の部分は機械とクオーツで動く。
複雑にするために複雑にしたのではなく、一種のライフスタイルを提供する時計として生まれた。これまでのスイス時計にはない時計と、ボルゴーＤ社。
値段は2700ドル ( 約27万円 ) から。上限はない 。宝石などで飾るオプション付き。

ラフー神の時間
月曜日　7時半～9時
火曜日　15時～16時半
水曜日　12時～13時半
木曜日　13時半～15時
金曜日　10時半～12時
土曜日　9時～10時半
日曜日　16時半～18時