The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に

注射を打たれる男性
Keystone / Salvatore Di Nolfi

スイスでは現在、新型コロナウイルス感染症が再び流行している。それ自体はさほど深刻ではないものの、ワクチンを受けたくても薬局や診療所に在庫がない事態が発生。背景には7月初めの制度変更がある。

背景にはワクチン接種の責任者が変わったことがある。これまでは連邦政府がワクチンを発注し、費用の一部を負担していた。

だが7月1日以降、コロナワクチンは市場原理に委ねることになった。診療所の医師や薬局が患者のために直接発注しなければならなくなったのだ。 だがフランス語圏の無料紙20min.外部リンクが報じたように、ワクチンの在庫が不足している。

おすすめの記事

情報不足で時間不足に

医療関係者は既存のワクチン在庫に頼ることはできない。スイス連邦保健庁は、連邦が購入したワクチンを使用する法的根拠はないとしている。

そのため医師や薬局に対し、手元に残っているワクチンを廃棄するよう求めている。残りのワクチンは連邦が管理する緊急備蓄に保管される。有効期限が切れていない限り、コロナが大規模に流行した場合には使用できる。

医療機関は新しいワクチンを注文する必要がある。現在のところ卸売業者にはワクチンの在庫がなく、通常の発注ルートは使えない。 フランス語圏のスイス公共放送(RTS)の取材に応じた何人かの医療関係者は、5月か6月になってようやく自分たちの責任であることが知らされたため、在庫を補充するのに十分な時間がなかったと語った。

需要予測は困難

1回のワクチン接種にかかる費用は、医療用注射の費用と医療機関への手数料を除いて約80フラン(約1万3000円)。持病があるなどリスクの高い人は基礎医療保険でカバーされるが、そうでなければ自己負担だ。診療所や薬局が患者の需要を見積もりにくい一因となっている。

ヴァレー(ヴァリス)州医師会のモニク・レーキー・ハーゲン会長は、ジレンマに直面していると話す。「「ワクチンの注文が多すぎて経済的な損失を負うか、注文が少なすぎて批判されるかの二択となっている。不可能な任務だ」。 需要予測の参考にするため、患者を対象にアンケート調査を行ったという。

複数の医師や薬剤師はRTSの取材で、連邦保健庁がワクチン体制の転換を支援せず、連邦による損失補填を拒否したことなどへの不満を語った。ヴォー州薬剤師会のクリストフ・ベルジェ会長は「変異種対応ワクチンが9月に到着するのに、保健庁はその準備を怠った。責任放棄だ」と憤る。

保健庁の言い分

連邦保健庁は、責任者の移行は従前から計画されたもので、2023年3月には説明会も開催したと話す。コロナワクチンを他のワクチンと同じ扱いにするよう要求したのは州側だったという。接種費用も他国と同程度だと説明した。

またコロナワクチンはインフルエンザワクチンと同様、リスクのある人には保険が適用され、それ以外の人は自己負担であることも強調した。ちなみにインフルワクチンの価格は30~40フランで、コロナワクチンの半値~3分の1程度で済む。

英語からのDeepL翻訳:ムートゥ朋子

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スイス公共放送協会

おすすめの記事

スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。

もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
財布

おすすめの記事

スイスでは現金のチップが主流

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。

もっと読む スイスでは現金のチップが主流
プラタナス

おすすめの記事

プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。

もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部