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グラフで見る スイス製薬業界が直面する課題

世界最大手の製薬会社のひとつ、ロシュ本社のツインタワー
世界最大手の製薬会社のひとつ、ロシュ本社のツインタワー Keystone / Gaetan Bally

製薬業界はスイス経済の成長と雇用を牽引する。しかし、米国からの圧力と新規参入企業の台頭により業界地図は大きく塗り替えられ、国際舞台における不動の地位が脅かされる可能性も浮上している。製薬産業がスイスにとっていかに重要か、データとグラフで紐解いた。

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1.スイス経済の屋台骨

連邦統計局(BFS/OFS)によると、国内の製薬業界は2023年時点で約350社が事業を展開していた。ノバルティス、ロシュ、サンドといったスイス資本のグローバル製薬大手企業のほか、ファイザー、武田薬品工業、アストラゼネカなどの外国企業のスイス子会社も含まれる。

現在、製薬業界には5万6000人以上が従事する。その多くは多国籍大企業に勤務している。業界団体であるインターファーマの委託を受け、BAKエコノミクス研究所が2024年に実施した調査によると、製薬業界は間接的に約25万人の雇用を創出している。

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25年にわたり成長を続けてきた製薬業界だが、経済全体に占める粗付加価値の割合は2022年と2023年(入手可能な最新データ)にわずかに低下した。それでもなお、2023年には粗付加価値ベースでスイス経済の6%を占め、スイスで4番目に大きな経済セクターとなっている。

間接的に生み出される付加価値(推定300億フラン)も含めると、BAKは、製薬業界のバリューチェーン全体が生み出す経済価値はスイス経済の10%に達すると試算する。

スイス連邦統計局が2025年に発表したデータによると、製薬業界は国内の研究開発(R&D)に最も多く投資している。2023年は約55億フランで、民間部門全体(約180億フラン)の約3分の1を占めた。スイスはOECD加盟国の中で製薬企業のR&D投資額が群を抜いて高い(OECD加盟先進国の平均は8%)。

2. 1000億フラン相当の輸出

医薬品、特に血清とワクチンは、金に次ぐスイスの第2の輸出品目だ。2025年には、スイスは1000億フランを超える医薬品を海外に輸出した。これは輸出総額の約22%に相当する。

スイスは医薬品分野で最大の貿易黒字を計上している。昨年は約350億フランだった。

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2024年もスイスは前年同様、ドイツに次ぐ世界第2位の医薬品輸出国だった。3位は米国だ。

3.スイスに拠点を置く2大グローバル企業、ロシュとノバルティス

スイスの医薬品産業は、同国経済にとってだけでなく、世界規模でも主要なプレーヤーであり続けている。それを支えるのがロシュとノバルティスだ。

バーゼルに本社を置くこの2つの多国籍企業の売上高は近年増加している。2020年の約490億ドルから2025年には約570億ドルにまで上昇し、専門ウェブサイト「Drug Discovery & Development」のランキングでトップ10に入っている。

しかし、ロシュとノバルティスは近年、このランキングで順位を落としている。2020年にはそれぞれ2位と3位を維持したが、2024年から2025年にかけて1つ順位を下げた。

これは両社の業績不振によるものではなく、イーライリリーの驚異的な成長によるものだ。複数の抗肥満薬で大ヒットを飛ばすこの米製薬会社は、わずか1年で9位から1位に躍進。売上高は2024年の450億ドルから2025年には650億ドルに増加した。

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また、Citelineの医薬品研究開発に関する年次報告書によると、ロシュとノバルティスはイノベーションの分野でもトップ企業だ。 2025年から2026年にかけて、ロシュはランキングで2位から1位に躍進した。ノバルティスはアストラゼネカとサノフィに抜かれ2つ順位を落としたものの、依然として世界有数の製薬会社の1つだ。

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2025年の世界売上高上位50位に入る医薬品のうち、スイス製の医薬品が6種類(ノバルティス製4種類、ロシュ製2種類)含まれている。このトップ50に含まれる医薬品数では、ノバルティスは米製薬大手ファイザーと並び世界第2位となっている。

ロシュ社のオクレバス(神経内科・免疫疾患治療薬)は、スイス製医薬品として最高売上高(84億ドル、2年連続増)を達成した。ノバルティスの心血管疾患治療薬エントレストは、売上高約78億ドルを維持した。

しかし、スイス製医薬品の売上高は、メルク(日本ではMSD)の抗がん剤キイトルーダの記録には遠く及ばない。キイトルーダの2025年の売上高は約320億ドル(前年比7.5%増)に達した。

この売上高ランキングは、医薬品業界の急速な変化と、糖尿病治療や減量促進に用いられるGLP-1受容体作動薬がもたらす革命的な変化を如実に示している。ノボノルディスクのオゼンピックとその関連製品ウェゴビー、そしてイーライリリーのムンジャロは、2025年も前年同様、好調な業績を記録した。イーライリリーのゼプバウンドも、2024年のランキングには登場しなかったものの、2025年には売上高を大きく伸ばした。

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さらに、ドナルド・トランプ米大統領による生産を米国に回帰させる圧力が、この2大製薬企業に米国戦略の見直しを迫っている。これがスイスの製薬業界に悪影響を及ぼす可能性がある。

ノバルティスとロシュは、米国での生産拡大に数十億ドル規模の投資を計画している。一部の専門家は、こうした戦略的な再編が、スイス、特にバーゼル地域における雇用、収益、イノベーションの低下につながるのではないかと懸念する。

4.スイスの製薬業界は世界有数の競争力を誇るが、競争は激化の一途を辿る

スイスは、化学・製薬業界の国際競争力を測るBAKのグローバル産業競争力指数(GICI)において、常に上位3位以内にランクインしている。2025年版では、米国(1位)、アイルランド(2位)に次ぐ3位だった。

報告書によると、スイスは評価対象とした4つの側面(「パフォーマンス」「市場地位と操業能力」「イノベーションと技術的リーダーシップ」「拠点品質」)すべてにおいて非常に優れた実績を上げており、大きな弱点はない。

しかし、特にイノベーションの分野において、スイスの相対的な地位は低下している。デンマーク(3位タイ)、オランダ、英国など、他の国々がこの分野で大きく前進している。

5.米国が依然トップ、中国は急成長

米国は、特にその強力な市場地位と非常に高いイノベーション能力のおかげで、依然として世界で最も競争力のある製薬ハブ拠点となっている。

米国は依然として世界の医薬品研究開発において圧倒的な存在感を示しており、新薬開発企業の本社の40%以上が米国に集中する。しかし、近年その影響力は低下している。

何が変わったか?現在世界第2位の中国における医薬品研究開発の急速な成長が大きな要因だ。革新的な医薬品企業の約20%が中国に拠点を置く。2017年の5%から大幅に増加した。その結果、スイスを含む欧州諸国のシェアは、わずか1年前の13%から2026年には7%に低下した。

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スイス化学・製薬産業の団体「サイエンスインダストリーズ(scienceindustries)」のアネット・ルーサー会長は、2026年1月のインタビューで、米国や中国という主要市場が「研究、生産、投資を誘致するために非常に積極的な戦略を採用している」と述べた。

グローバルな変化に迅速に対応する他の国々と比較すると、「スイスはそれほど『渇望』していないように見える」とルーサー氏は指摘する。スイスの経済基盤は依然として強固だが、国の競争力を維持するためには新たな戦略的推進力が必要となる、と予測している。

編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:宇田薫、校正:大野瑠衣子

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