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バーゼルでネット投票が集計されず 在外有権者が怒りの声

ネット投票の操作画面
ネット投票の導入には各州に大きな裁量が与えられているが、今のところ各州有権者の30%と全国有権者の10%という上限が定められている Keystone

スイスで8日に実施された国民・住民投票で、バーゼル・シュタット準州でインターネット経由で投じられた2048票が集計されないという不具合が発生した。電子投票箱を開くための暗号コードのキーがいずれも機能しなかった。投票結果への影響は軽微だが、ネット投票の整備という長年の取り組みに水を差しかねない。

スイスの州で最も人口密度の高いバーゼル・シュタット準州(人口約20万人)では、投票登録した国外居住者約1万300人がオンラインで投票できる。だが8日の国民投票では、国外在住者の投票2048票が集計されずに終わった。障がいのある州内在住の有権者30人も同様だった。電子投票用紙は電子投票箱に到着していたのに、開けるための暗号コードが機能せず、州当局が投票箱を開けられなかったためだ。

当局は7日夜にこの不具合を発表外部リンクした。同州のマルコ・グライナー広報官はスイスインフォに「当局は正しいコードが入ったUSBメモリ3個を使って開封を試みたが、どれも使えなかった」と説明した。グライナー氏によると、過去には数えきれないほど開けることに成功していた。

在外有権者の怒り

バーゼル・シュタット準州当局は、今回の問題はスイス郵便が構築したネット投票システム全体ではなく、同州によるアクセスにおいてのみ発生していると強調した。とはいえ、この不具合は重大な意味を持つ。同州の7日の発表を受けて、連邦内閣事務局も情報提供に乗り出した。「暗号化された投票をはじめ、ネット投票システムは(バーゼルの不具合の)影響を受けない」と明言した。

バーゼル出身の在外スイス人たちが今回の不具合に抱く不満は大きい。スイスのネット投票が整備されてきたのは、郵便投票では在外有権者の票が投票日に間に合わないことへの問題意識が原動力だった。抜本的解決策として期待されているネット投票に問題が生じたという事実は、憂慮すべき事態だ。

大衆紙20min.によると、あるバーゼル出身の国外在住者は州から不具合の知らせを受け取るとすぐに、投票用紙の再発行を要求した。だが州の回答は、もう間に合わないというものだった。この有権者は「州は有権者に投票用紙の再発行を受ける権利を保証していない。国民の意思が無視されている」と憤る。

連邦内閣事務局も不満を露わにする。同局の広報官はドイツ語圏の大手紙NZZに対し、投票が集計されない有権者の政治的権利は侵害されると語った。

別の国外在住スイス人は、SNSのX(旧Twitter)で「賛成と反対の票の差が1000票しかなかったらどうなるだろうか?」と指摘した。

投票結果には影響なし

幸か不幸か、それは杞憂きゆうに終わった。7日までにネット経由で投じられたのは1800票で、同時点の投票総数の3.4%相当にとどまった。

バーゼル・シュタット準州は8日の声明で、「連邦内閣(スイス政府)が投票結果を承認する前に不具合が解消されれば、投票結果を事後的に集計することが可能だ」との見解を発表した。投票日の3月8日から承認までの期間は13日間で、同州は州官報への結果掲載を2026年3月21日に延期する方針だ。

だが有権者個人にとってはどれも貴重な1票だ。バーゼルの不具合は、8日時点でネット投票に関する根本的な議論を再燃させた。緑の党(GPS/Les Verts)のバルタザール・グレットリ下院議員はNZZで「4件の投票議題のうち1件がごく僅差となった場合、その議題は再投票が必要となる」との見解を示した。国民が投票結果を受け入れるには、すべてが完璧に機能しなければならないと強調した。

長年ネット投票に反対してきた国民党(SVP/UDC)のフランツ・グリューター氏は、ネット化計画を放棄するよう連邦内閣事務局に求めている。民主主義への信頼が危機に瀕しており、些細な不具合でさえもそれを損なうと主張する。

スイスでは現在、バーゼル・シュタット準州に加えトゥールガウ州、グラウビュンデン州、ザンクト・ガレン州の4州が限定的にネット投票を試験運用している。スイスは長年ネット化を推進してきたが、システムに重大なセキュリティ上の欠陥が発見されたため、2019年に計画を中止。抜本的にシステムを開発し直し、2023年に試験運用を再開した。

ロビー団体の「在外スイス人協会」は、ネット投票の本格導入を政治的優先事項に据えている。同組織は長年にわたり、在外スイス人の投票参加を促進するための啓発活動に当たってきた。

ただ現在試験中のシステムは、たとえ不具合がゼロになっても在外スイス人にとって完璧な制度にはならない。投票そのものは電子化されても、有権者確認に必要な認証コードや投票用紙はスイスから居住国へと郵送される。投票日に間に合わないという問題は依然として残っている。

編集:Samuel Jaberg、独語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:宇田薫

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