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米国、スイスのパトリオット地対空システム支払い凍結を回避

パトリオットは、最も優れた長距離防空システムの一つ。しかし、米レイセオン社製のこの製品がスイスに納入されるまでには、数年かかる見込み
パトリオットは、最も優れた長距離防空システムの一つ。しかし、米レイセオン社製のこの製品がスイスに納入されるまでには、数年かかる見込みだ sda-ats

スイスは昨年秋、米国のパトリオット地対空ミサイルシステムへの支払い停止を決定した。納入が数年遅れることが判明したことを受けた措置だが、スイス公共放送(SRF)は、この凍結措置にはほとんど効果がないと報じた。米国は、F-35戦闘機向けに送金されていたスイスの資金をパトリオットに充てているという。

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スイス連邦国防省装備局(armasuisse)のウルス・ローハー局長は、この米国の回避措置について認め、すでにどれだけの資金が移転されたかをSRFに語った。しかし、米国当局からの圧力により、詳細な金額は明らかにしなかった。ローハー氏は「3桁台前半、単位は百万」とした。これは1億フラン(約200億円)を明確に超える金額を意味する。

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つまり、米国はスイスがすでに支払い済みのF-35戦闘機購入資金をパトリオットミサイルシステムに振り向けることで、スイスの凍結措置を回避している。なぜそれが可能なのか。

スイスなどの国々が米国の武器を購入する場合、必ず米国政府の有償軍事援助(FMS)を通じて行われる。このプログラムの中で、米国はスイスからのあらゆる武器購入を管理するための基金を運営している。

F-35であれパトリオットであれ、スイスからの支払いはすべてこの基金に振り込まれる。あるプロジェクトで資金が不足した場合、米国は他のプロジェクトの資金を転用することが認められている。米国が今行っているのがまさにこれだ。スイスのF-35調達資金がパトリオット・システムに振り向けられている。

スイス国防省は追加資金を投入

「私の見解では、これは非常に不満足な事態だ」とローハー氏は述べている。資金の転用はスイス国防省に圧力がかかっている。なぜならこの転用によって、F-35戦闘機の支払い計画に欠損が生じているからだ。

国防省は2025年末、この不足分を補うため、数千万フランを予定より前倒しで米国に送金せざるを得なかった。こうした前倒し措置は、同省が抱える既存の財政問題をさらに悪化させている。同省は既に、承認済みの兵器調達の資金が不足している状態にある。

スイス国防省は4年前、米国とパトリオット防空ミサイルシステム5基の購入契約を締結。今年、納入が始まる予定だった。

しかし2025年、米国政府はウクライナへの納入を優先するとスイス側に伝えた。そして2月、スイスへの納入が4~5年遅れることが明らかになった。

加えてイランでの戦争勃発により、パトリオットミサイルシステムの世界的な需要が大幅に増加した。SRFによると、これによりスイスへの納入がさらに遅れる可能性がある。少なくとも5年の遅延は避けられない見通しだ。米国からは現在、信頼できる新たな納期予測すら示されていない状況だ。

2025年2月、米国はスイス国防省に対し、パトリオットの大幅なコスト増について通知した。ローハー氏が示した試算では、追加費用は最大50%に達する可能性がある、購入価格は当初予定から10億フラン跳ね上がり、総額で30億フランにまで膨れ上がる恐れが出てきている。

スイスの支払い凍結は効力をなしていない。米国は今年もF-35調達資金をパトリオットに転用し続けると予想される。しかしながら、ローハー氏は、この凍結は政治的なシグナルとしての意味があったと擁護する。長年にわたる遅延について、米国からより透明性の高い情報提供を引き出すことができたとローハー氏は説明する。

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議会からは批判

スイスの国会議員たちはこのニュースに批判的な反応を示した。

「支払凍結を決定したにもかかわらず、資金が単に別の用途に転用されるのは、実に腹立たしい」と、右派・国民党(SVP/UDC)の上院議員で安全保障専門家のヴェルナー・ザルツマン氏は述べている。中道右派・急進自由党(FDP/PLR)のヨーゼフ・ディトリ上院議員は、スイス国防省はこのような迂回手段が可能だとは認識していなかったようだと付け加えた。

社会民主党(SP/PS)のプリスカ・ザイラー・グラフ下院議員は、過去にパトリオット購入中止を求めた自身の主張が正しかったと感じている。社会民主党は大規模な米兵器購入に反対している。

ザルツマン氏もまた、ワシントンに対する自身の信頼が損なわれたと述べている。「FMS契約はますます多くの解釈上の問題を生み出している。我々は、このような契約に署名し続けるべきかどうかを慎重に検討する必要がある」

スイス国防省は、現在も米国側との交渉を続けている。ローハー氏が目指すのは、パトリオットへの支払い延期だ。「そもそも商品の納入が遅れているのだから、支払いも遅らせるべきだ」というのがスイス側の主張だ。

交渉の行方は不透明だとローハー氏は述べたが、同時にこうも付け加えた。 「(スイスと米国の)力関係は、極めてはっきりしている」

SRF国会担当記者ドミニク・マイヤーの分析

スイスが米国からの武器購入で貧乏くじを引かされるのは、これが初めてではない。F-35戦闘機の際、国防省は「固定価格」という(実際には保証されていない)言葉を誤って鵜呑みにした。そして今、パトリオットにおいても、再び契約書の「細かい規定(小規約)」につまずいている。

この「細かい規定」こそ、米国側がスイスの支払い停止措置を無効化する手助けとなっている。米国は事実上、当初の支払い計画通りにスイスから資金を流させるよう強制できる。その一方で、同じく共同で合意したはずの「引き渡し計画(納期)」については、米当局は自らの裁量で、少なくとも4〜5年も遅らせる自由を手にしている。

社会民主党が要求するように、スイスはパトリオットの契約解除を検討することも可能だ。しかし、それは極めてリスクの高い選択となるだろう。すでに支払った資金が永久に失われる可能性が高いだけでなく、ただでさえ繊細なワシントンとの関係を損なう恐れがあるからだ。F-35戦闘機の納入にも悪影響を及ぼしかねない。

長期的には、連邦内閣は米国への依存度を下げたいと考えている。昨年、スイスは今後、軍備調達の90%を国内または他の欧州諸国から行うという方針を決定した。

だが、欧州の防衛産業は今後数年間、受注超過が見込まれる。一方、スイス国内の防衛産業はサプライヤー業務への移行を強めており、大規模な長距離対空システムを自国で製造する能力はない。

結局のところ、将来的にもアメリカに代わる選択肢は、単純に「存在しない」のが実情だ。

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独語からのDeepL翻訳:宇田薫

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