The Swiss voice in the world since 1935
パーソナルフィード

ログインしてフィードにトピックを追加しましょう。

今すぐ登録
お気に入りリスト

ログインして記事を保存リストに追加しましょう。

今すぐ登録
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録
トップ・ストーリー
ディベート
すべての議論を見る

ブラックリストに載せられた「レッド(共産主義者)」たち ロカルノ映画祭、ハリウッドの急進的な映画関係者を再評価

チャーリー・チャップリンはおそらく、下院非米活動委員会(HUAC)の最も有名な標的だった。イギリス亡命中に制作された反マッカーシズムの傑作「A King in New York(ニューヨークの王様)」(1957年)がアメリカで公開されたのは20年が経った後のことだ
チャーリー・チャップリンはおそらく、下院非米活動委員会(HUAC)の最も有名な標的だった。イギリス亡命中に制作された反マッカーシズムの傑作「A King in New York(ニューヨークの王様)」(1957年)がアメリカで公開されたのは20年が経った後のことだ ©Roy Export SAS

第79回ロカルノ国際映画祭のレトロスペクティブ(回顧)部門では、マッカーシー時代に標的となった左派映画関係者の作品に光が当てられた。これらの作品群が描くナショナリズム、出世主義、同調圧力に対する批判は、いまだ今日性を失っていない。

おすすめの記事

大規模な現代映画祭で野心的な回顧部門を設けることは、多くの皮肉を伴う。「新しさ」が不動の価値を持つ映画業界で「回顧」である。不帰の客らによって1世紀近くも前に制作された映画を称えたところで、名刺交換の機会にもつながらない。

だからこそ、歴史ある映画館「グラン・レックス」が主会場のレトロスペクティブ部門は、ロカルノ国際映画祭の中でも他と一線を画したある種の「ミクロ環境」を提供し、主要作品群への「反論」を試みたり、映画との別の向き合い方を提示したりする役割を担っている。

今年のレトロスペクティブ部門のテーマである「Red & Black – Hollywood Left and the Blacklist(赤と黒――ハリウッド左派とブラックリスト)」は、いくつかの点で激動する現代にも相通じるものがある。当時「ハリウッド左派」と呼ばれた人々は、共産主義とのつながりを非難され、1950年代に米下院非米活動委員会(HUAC)の検閲対象となった。

イスラエルに対する批判であれ、トランスジェンダーの権利擁護、あるいは批判的人種理論にまつわるものであれ、大衆メディアにおける左派的な主張に対する検閲はこれまでも長くアメリカ社会の一側面だった。ところが、ドナルド・トランプ大統領の2期目就任以来、この傾向が輪をかけて強まっている。なにしろ大統領自身が、穏健派で知られるテレビ司会者ジミー・キンメル氏を「危険な革命家」呼ばわりしているのだ。

ブラックリストの歴史を問い直す

2024年からロカルノ映画祭レトロスペクティブ部門のキュレーションを担当し、イタリア・ボローニャで毎年開かれる映画史の祭典「イル・チネマ・リトロヴァート」の共同ディレクターも務めるエフサン・コシュバフト氏は、これまで一般的に語られてきた「ブラックリストの歴史」に異論を投げかける。

「私は、ブラックリストの問題に対するアメリカのアプローチに非常に批判的だ」とコシュバフト氏はスイスインフォに語った。「それは、ある重要な事実が見落とされがちだからだ。彼らは、多くの場合において共産主義者に深く傾倒し、中にはスターリン主義者もいた。そして、自国の社会を鋭く分析した映画を制作していた」

エイブラハム・ポロンスキー監督「Force of Evil(悪の力)」(1948年)の一場面。あらゆる階層で腐敗が露呈する
エイブラハム・ポロンスキー監督「Force of Evil(悪の力)」(1948年)の一場面。あらゆる階層で腐敗が露呈する Courtesy Of Park Circus-Paramount

エイブラハム・ポロンスキー監督作「Force of Evil(悪の力)」(1948年)を例に挙げよう。ジョン・ガーフィールド(ポロンスキー同様、1951年にHUACへの協力を拒否し、ブラックリストに載った)が演じたのはジョー・モースという悪徳弁護士だ。ジョー・モースは、アメリカでこうした賭博が合法化される以前から人気を博していた非公認の宝くじ「ナンバーズ・ラケット」を独占し、合法化しようと画策する。比較的純真でチンピラの兄も次第にこの悪事に手を染め、その兄よりもさらに無邪気な秘書ドリスも易々とこの華やかで罪深い世界に引き込まれていく。

映画監督・脚本家のエイブラハム・ポロンスキー。彼の生涯と仕事を描いたドキュメンタリー映画「Dangerous Citizen(仮訳:危険な市民)」(2026年)の一場面にて
映画監督・脚本家のエイブラハム・ポロンスキー。彼の生涯と仕事を描いたドキュメンタリー映画「Dangerous Citizen(仮訳:危険な市民)」(2026年)の一場面にて Courtesy Of Black Pool Productions

コシュバフト氏の考えを裏付けるように、ポロンスキーはアメリカ社会を徹底的に解剖し、あらゆる階層に腐敗を見出した。ポロンスキーの反ナショナリズム的な姿勢は、出だしから明らかだ。モースの一味が仕掛けた大規模詐欺は、7月4日の独立記念日に「1776」という数字が出るよう工作することで成り立つ。愛国心溢れる、全米のお人よしたちが賭ける数字だ。

アメリカの出世主義

今回のレトロスペクティブ部門で上映された映画に共通するテーマは、野心と出世主義というアメリカ人が美徳としてきた2つの価値観に対する疑念だ。エドガー・G・ウルマー監督の「Ruthless(野望の果て)」は、ブラックリスト入りした脚本家アルヴァ・ベッシーとゴードン・カーンが脚本に協力した作品で、友人や妻、恋人たちを踏み台にして貧しい境遇からのし上がり、富を築き、慈善家となったホレス・ヴェンディグ(ザカリー・スコット)の人生を描いた、戒めの物語だ。

映画「野望の果て」(1948年)のヴィンテージ・ポスター(複製品)
映画「野望の果て」(1948年)のヴィンテージ・ポスター(複製品) Reproduction

「野望の果て」は、「市民ケーン」(1942年)をやや感情的でハードなトーンで描いた作品と言え、オーソン・ウェルズが「市民ケーン」で描いた心理的な複雑さが、同作ではもう少しむき出しの憎悪に近いものに置き換えられている。ヴェンディグは、ほかの全員を裏切った後、幼なじみのヴィック(ルイス・ヘイワード)に「お前は、俺に残された唯一の友だ」と告げる。ヴィックは「それでも俺は、お前のことが心底嫌いだ」と返す。まるで脚本家たちが、自分たちを密告した人々に直接語りかけているかのように響く。

ベッシー、カーン、ポロンスキー、その他数多の映画監督や脚本家たちが、その才能の絶頂期に、観客から奪われた。国民的なコンセンサスに異議を唱えることのできる大衆的なアメリカ映画という彼らのビジョンとともに。コシュバフト氏は、その怒りを今も胸に抱えている。

「もったいないことだったとしか言いようがない」と、同氏はスイスインフォに語る。「才能、アイデア、想像力、そして信念。そうしたものの流れが、その途上で断ち切られてしまったことを思うと、今でも本当に胸が痛む。私たちは今日なお、この時期に生じた遅れを取り戻そうとしている」

ブラックリストの時代、ハリウッド左派の映画制作者たちは、キャリアか信念を貫くかの二択を迫られた。非米活動委員会に協力し、仲間の名前を明かした者たちの多くは、アメリカでその後も長く成功したキャリアを築き続けた一方、証言を拒んだ者たちは生計の道を閉ざされ、今ようやくその功績が正当に称えられるようになった。ブラックリスト時代の前後に作られたハリウッド左派の映画は、当時支配的だった「自分さえよければいい」という風潮に侮蔑の目を向けている。

同じくブラックリストに名前が載ったジョセフ・ロージー監督の「The Intimate Stranger(親密な見知らぬ人)」(1956年)は、冷酷さがまかり通る映画業界を題材にしている。ロージー本人と同様、ハリウッドを追われた映画編集者レジー・ウィルソン(リチャード・ベースハート)はイギリスへ渡り、そこで大手映画プロデューサーの娘と結婚すると、その会社の要職に就く。しかし、彼の過去を知る女性が現れ、業界での出世のために、レジーが自分との関係を捨て、新しい妻を選んだのだと訴えたことから、その動機に疑問が投げかけられるようになる。

「親密な見知らぬ人」の場面に登場するリチャード・ベースハート。同作は、イギリスに亡命していたジョセフ・ロージー監督が、米国で受けた恐怖と折り合いをつけるための手段だった
「親密な見知らぬ人」の場面に登場するリチャード・ベースハート。同作は、イギリスに亡命していたジョセフ・ロージー監督が、米国で受けた恐怖と折り合いをつけるための手段だった ©Courtesy of Park CircusWarner Bros

今回のレトロスペクティブ部門には、こうした「反・出世主義」の姿勢を映画祭全体に伝えるという意図があったのかとコシュバフト氏に問うと、慎重な回答が返ってきた。「レトロスペクティブ部門での上映が、現代の映画作品のプログラムとどのように関連するかは、私には何とも言えない。それは観客に問うべきものだ」

現代社会では至るところで、出世主義の産物を目にすることができる。子どもたちはもはや、シェイクスピア(「マクベス」)で描かれる「野心」を「致命的な欠点」として認識できなくなっている、と指摘する評論家外部リンクもいる。ブラックリストの時代から映画業界で連綿と続いてきた冷酷なまでの野心を、ハリウッドの左派のこうした映画が戒めてくれるのではないか、そんなことを期待したくもなる。だがそれは、たとえ回顧上映だろうと、1本の映画が解決できる問題ではない。だからこそ、コシュバフト氏はずっと控えめな目標を定義している。

「新しい映画を観にロカルノ映画祭を訪れた人が、デジタル映像の多さに疲れ、たまたまレトロスペクティブ部門の特別上映にふらりと立ち寄り、その作品に心を奪われる。それだけで、私はもう満足だ」

ディラン・アダムソンは、カナダ・トロントを拠点に活動する映画評論家・キュレーター。Globe and Mail、The Toronto Star、Filmmaker Magazine、Senses of Cinema(オンラインメディア)などに執筆多数。トロント国際映画祭の「TIFF Cinematheque」、ニューヨークに設立された映画保存組織Anthology Film Archives、実験的な映画や前衛映画に特化した映画ソサエティSan Francisco Cinemathequeで、上映プログラムのキュレーションを担当。

編集:Catherine Hickley and Eduardo Simantob/ts、英語からの翻訳:鈴木ファストアーベント理恵、校正:宇田薫

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部