「児童労働撲滅 政府と産業界はカカオ・金の両分野横断で取り組まなければならない」
西アフリカにおける児童労働を根絶するには、現地の社会・経済システムに働きかける、より包括的なアプローチが必要だ。政府、産業界、バイヤー、規制当局などすべての関係者が共に一つのテーブルにつき協議しなければ意味がない。
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スイスの企業は、コーヒー、カカオ、パーム油などの世界的な農業サプライチェーンにおいて中心的な役割を果たしている。その影響力に伴い、世界中で最も根深い人権リスクにも直面している。これらがいま、最も顕著に表れているのはコートジボワールやガーナのカカオ産業。企業の数十年にわたる取り組みや監視にもかかわらず、児童労働が依然蔓延っている。
根本的な課題は、認識の欠如やサステナビリティ戦略の不在にあるのではない。多くの調達国において人権リスクが構造的なものである一方で、企業の対応は依然として断片的で、部門間の連携が不十分な点にある。企業は、労働保護を含む基本的権利の執行を行うにあたり、国家が不能、あるいは不作為であるようなガバナンスの空白地帯で事業を行わざるを得ず、そこでは個々の企業の行動が公的権限に代わることも、持続的な変化をもたらすこともできない。
したがって、構造的な人権リスクへの対策をより効率的かつ効果的にするためには、今よりも広範かつ野心的な協力体制が求められる。これまで多くの企業は資源や専門知識を結集することを目的とした業界主導の取り組みに参加してきた。しかし、コートジボワール南部・西部で実施した我々の最近の現地調査によると、既存の協力体制は、同業他社や市民社会との関わりを超え、さらに拡大する必要があることが確認された。
西アフリカでは、カカオ産業が構造的な危機と市場主導の危機が重なる状況に直面している。気候変動に伴う気象パターンの変化や、カカオの木を枯死させる「カカオの茎膨大病」で収穫量が大幅に減少し、農家の収入が目減りするだけでなくカカオ栽培の継続が困難になっている。カカオ価格の変動性――2024年末から2025年初めにかけて1トン当たり1万3000ドル近くまで上昇後、2025年10月までに同約6100ドルまで下落した――が、こうした圧力をさらに悪化させている。
その結果、多くの農家はゴムやパーム油の生産、あるいは違法な小規模金採掘など、代替的な収入源へと転換している。コートジボワール西部を車で走ると、道路沿いにゴム農園が連なっているのが見えた。世界的な金価格の高騰(2025年には55%も上昇し、同年10月には初めて1オンスあたり4000ドルの大台を突破)は、ガーナとコートジボワールで新たなゴールドラッシュを引き起こし、非公式な小規模採掘の急速な拡大に拍車をかけている。コートジボワールで私たちが訪れたある農村では、近くの違法な金鉱山から機械の音が聞こえた。村長は、鉱業について話すことは自身の安全を脅かす恐れがあるとして、その話題を避けた。しかし、別の会話の中で、地域の女性たちは、息子たちが金採掘に従事していること、そしてカカオの収入だけではもはや家族を養うのに十分ではないため、この仕事を支えていることを認めた。
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ガーナの違法金採掘、スイスチョコレートの脅威に
金鉱山の拡大に伴い、水銀による汚染が広がっている。これは、鉱石から金を分離する際に水銀が一般的に使われているためだ。一度川や農地に放出されると、この有毒物質は生態系を汚染し、農業への復帰をますます困難にする恐れがある。ガーナでは、金鉱山によってすでに一部の地域でカカオの生産が破壊されていると聞いた。コートジボワールでの調査旅行中、私たちは川が濁り、色が変わっているのを目撃した。地元住民によると、採掘活動に伴い水の色が変化したほか、魚が死滅し生計の重要な収入源の一つが失われている。
FarmStrong財団から提供されたデータが示すように、金鉱業およびそれに伴う(使用化学物質による)水の変色は、衛星技術によって追跡することも可能だ。現地の水・森林省の担当官との会話から、同省には水質を体系的に検査する能力がなく、そのため現場からの伝聞情報に頼らざるを得ないことが明らかになった。こうした状況は、持続可能性に関する課題が本質的に地域的な性質を持つものであり、幅広いステークホルダーが関与する、セクターを横断した対応が必要であることを浮き彫りにしている。
何十年もの間、カカオ製造者はサプライチェーンから児童労働を排除することに注力してきた。しかし、カカオ農家の生計のあり方が変化する中、将来の供給を確保し、児童労働のない生産を実現するためには、企業が地域レベルでの商品間の相互関係・相互依存性を認識することが不可欠となる。チョコレートメーカーは、コートジボワール政府や、スイスなどこれらの商品から利益を得ている外国政府と連携し、ゴム、パーム油、金を調達する企業を招集し、地域社会のニーズを包括的に評価できる革新的な取り組みに参画させるのに適した立場にある。こうした取り組みは、農業と採掘産業が同一地域で共存を強めている現状を踏まえ、それらが安全かつ責任ある形で行われるよう努めなければならない。
並行して、企業と外国政府は、その集合的な影響力を活用して、政府の関与を強化するよう促し、不可欠なインフラや社会保護の提供に対する責任を分担しなければならない。コートジボワールでは、出生登録における根強い格差が依然として子どもの教育へのアクセスを阻害しており、この課題は効果的な国家の取り組みなくして解決はできない。地元政府の職員は、その職務を遂行するために、追加的な制度的・物質的支援を必要とすることが多い。ある実例では、基本的な行政インフラ、具体的にはプリンターと安定したインターネット接続の欠如が、出生届の処理を妨げる主な障害となっていた。
農業分野における商品横断的な取り組みは、すでに有望な先例を示している。フェア・レイバー・アソシエーション(FLA)の「ハーベスティング・ザ・フューチャー」プログラムは、トルコにおいて、移民労働者に影響を及ぼす人権リスクに対処するための多者間・商品横断的なアプローチを試験的に導入した。この取り組みは、地方自治体、業界団体、食品・化粧品セクターのバイヤーを結集させ、採用慣行や児童保護の問題に対し、より統合的かつ現地の状況に応じた形で解決に向け取り組んだ。
スイス政府には重要な役割が期待される。これまでスイス政府は、コーヒー、カカオ、金といった個々の商品サプライチェーンにおける多ステークホルダー・イニシアティブに対し、多大な支援を行ってきた。次のステップは、現地の現状をより的確に反映し、スイス企業が持続可能性へのコミットメントをより効果的に果たせるよう促す、包括的で商品横断的なイニシアチブへのインセンティブを創出することだ。西アフリカでは、小規模農家が複数の生計手段に依存しているケースが少なくない。こうした複雑な社会経済システムに包括的に対処しない限り、あるセクターで児童労働を排除しても、単に別のセクターへ児童労働が移転しかねない。スイスにとってカカオと金の両方が重要であり、西アフリカではこれらのセクターの相互依存が深まっていることを踏まえると、同地域は商品横断的なパイロットプロジェクトを実施するのに理想的な場所といえる。
サステナビリティに対して部門ごとに孤立した取り組みから横断的な取り組みに移行するのは、もはや単なる志の問題ではない。責任ある調達と持続可能な開発に取り組む企業にとってはビジネス上の必須要件となり、政府にとっては政策上の喫緊の課題となっている。
編集:Virginie Mangin、Anand Chandrasekhar、英語からのDeepL翻訳:宇田薫
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