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スイスの視点で振り返る日本関連の記事

スイスのメディアが報じた日本のニュース

うつむく岸田文雄氏
13日、首相官邸で行われた記者会見で厳しい表情を見せる岸田文雄首相 Keystone

スイスの主要報道機関が先週(12月11日〜17日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。

【スイスで報道されたトピック】

  • ルノー、日産株の5%を売却(12/13)
  • 岸田内閣の4閣僚が辞任(12/14)
  • 福島第一原発 作業員が放射能汚染(12/15)
  • 日本の子供たちに好き嫌いが少ない理由(12/15)
  • 函館の魚大量死 原因なお調査中(12/16)
  • バーゼルのクリスマスマーケットに日本人観光団体(12/16)
  • コースター乗客が高さ40メートルで宙づりに(12/16)

この中から今回は①岸田内閣の4閣僚が辞任②函館の魚大量死 原因なお調査中③日本の子供たちに好き嫌いが少ない理由をご紹介します。

政治資金スキャンダルで4閣僚が辞任

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、岸田文雄内閣の閣僚4人が辞任しました。スイス主要紙もこれを大きく取り上げました。

「岸田氏はまだカウントダウンが始まっただけだ」―ドイツ語圏の日刊紙NZZはこう分析しました。2025年秋まで総選挙の予定がないこと、党内に明らかな後任がいないこと、そして「安倍派から脱却し、それによって改革者として政治的に生まれ変わる可能性がある」ためだといいます。

後任閣僚が決まる前に掲載された同記事は、長年自民党が組織的に行ってきた汚職システムを改革するにあたり、「新たな出発への明確な決意」を示すため河野太郎氏や小泉進次郎氏の任命がありうると指摘。米ジャーマン・マーシャル基金の日本専門家トビアス・ハリス外部リンク氏は、彼らの任命はリスクを伴うものの、「それは大衆の心に響くだろう」とコメント。それこそが支持率の低迷する岸田内閣が必要としているものだと結びました。

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は東京在住のフリージャーナリスト、マルティン・フリッツ外部リンク氏に話を聞きました。フリッツ氏は「50年以上前から日本政治を率いる与党のほぼ全議員が、そうした(不正な)キックバックを得て資金報告書に記載しなかった疑いがある」ことで、有権者の自民党に対する信頼を揺るがす可能性がある、と指摘。不人気の岸田氏は「通常であればとっくに党によって引きずりおろされているはず」だが、2025年まで選挙がないという幸運により、とにかく首相の座に居座り続ければ良い立場であることを解説しました。

フランス語圏のスイス公共放送(RTS)やル・タン、24 heuresなどフランス語メディアには、仏AFP通信の記事が多く転載されました。同記事は辞任した閣僚は全員安倍派に属しているものの「岸田派にも影響を与える」とし、不正発覚前から支持率が低迷していた点を強調。理論上は2025年まで政権を維持できるが、「一部のアナリストは来年(9月)の総裁選前に衆院選が前倒しされる可能性を指摘している」と説明しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語、SRF外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)

函館の魚大量死、福島の処理水放出とは無関係

函館の海岸で数千匹の死んだイワシやサバが打ち上げられたことは、今月上旬からスイスでもニュースになりました。海外ではこれを福島第一原子力発電所からの処理水放出と結びつけるメディアやソーシャルメディアもありましたが、NHK外部リンクが「科学的に根拠がない」と報道。スイスではイタリア語圏メディアがさらに詳しく報じています。

地域紙コリエーレ・デル・ティチーノは、日本当局は原因を調査しているものの「推測の域を出ず、暗中模索していることを認めている」と指摘。浅瀬で密集して移動したため酸素不足になり、波に引きずられた可能性や、回遊する中で海水温が急に低下したためショック死した可能性などを紹介しました。福島と結びつける言説は「陰謀論」だと位置づけました。

スイスの通信社Keystone-SDAイタリア語版もNHKの報道をとりあげ、「福島原子力発電所からの処理水の放出とは無関係だった」と報道。同記事は複数のイタリア語圏メディアに掲載されました。(出典:コリエーレ・デル・ティチーノ外部リンクKeystone-SDA/イタリア語)

「世界一健康的な日本の子供」に好き嫌いが少ない3つの理由

日本の食卓で泣きわめく子供が少ないのはなぜか―?ドイツ語圏の言論誌Schweizer Illustrierteは平均寿命が長く肥満に苦しむこともほとんどない「世界で最も健康的」な日本の子供たちが、どうして好き嫌いなく栄養のある食事を摂っているのか、3つのポイントを解説しました。

1つは「遊び心」。「日本では目で食べる」のがルールだとし、ご飯や野菜で動物や人形を作るなど「親は子供のために多大な労力を費やしている」と紹介。2つ目は「実験が許されている」こと。1つの具材から創造力豊かに料理を発明でき、子供たちも「自分に合うものと組み合わせることが許されている」としました。3つ目は「食事を祝う」こと。家族一緒に食事をすることで、子供たちが親の食生活を観察することができる、と説明しました。また学校での給食も、「早い段階で健康的なライフスタイルに対する意識を高める」ために重要な役割を果たしている、と分析しました。(出典:Schweizer Illustrierte外部リンク/ドイツ語)

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス新連邦閣僚にベアト・ヤンス氏が当選 バーゼル出身」(記事/日本語)でした。他に「ウクライナとスイス、和平めぐる国際会議をダボスで共催」(記事/日本語)、「Swiss authorities open criminal investigation over menacing school intruder」(記事/英語)も良く読まれました。

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今日のテーマ:あなたにとって「尊厳ある死」とは?

ジュネーブにある緩和ケア施設「メゾン・デ・タラ」。2011年にオープンしたこのスイス初の非医療型緩和ケアホームを日本語編集部の宇田薫記者が取材。12日にswissinfo.chの全10言語で配信された記事は、「尊厳ある死」とは何かを問いかけます。ぜひあなたのご意見もお寄せください。

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2023年の「スイスで報じられた日本のニュース」は今回で最後です。次回は2024年1月8日(月)に掲載予定です。

校正:大野瑠衣子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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