長期金利、自動配達ロボ、塩田千春展…スイスのメディアが報じた日本のニュース

スイスの主要報道機関が先週(5月19~25日)伝えた日本関連のニュースから、①30年債利回りが初めてドイツ上回る②セブンイレブンが自動配達ロボット③フリブールで塩田千春さん展覧会、の3件を要約して紹介します。
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30年債利回りが初めてドイツ上回る 財政懸念で
債券市場で長期・超長期の金利上昇(価格は下落)が続いています。ドイツ語圏スイスの金融紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは、日本の30年債利回りが初めてドイツを上回ったと伝えています。
5月19~23日の週は日本だけでなく、欧州市場でも長期金利が上昇しました。16日に米格付け会社ムーディーズ・レーティングスが財政赤字の拡大などを理由に米国債の格付けを最上位から1段階引き下げましたが、記事によると格下げは「冷静に受け止め」られました。
記事はむしろ「英国のインフレ率と日本の国債入札の弱さがセンチメント(市場心理)に影響を与えた」と分析しています。英国では4月のインフレ率が3.5%と15カ月ぶりの高さに達したことで、利下げ予想が後退し、市場金利の上昇を招いたといいます。
日本の30年債利回りが3.1%を超え、1999年の取引開始から過去最高水準に達したことにも注目。「日本では、政府が債券の買い手を十分に見つけられない可能性があると懸念されている」。欧州では6月に利下げする見通しが高まっており、独30年債利回りとの逆転を許したと分析しています。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語)
セブンイレブンが自動配達ロボット

セブン―イレブン・ジャパンが19日から、公道での自動走行ロボットを使った無人配送の実証実験を始めました。スイスのオンラインメディアwatson.chフランス語版が、労働力不足を解決する手段の1つとして、詳しく報じています。
新興企業「LOMBY(ロンビー)」と、自動車メーカーのスズキが共同開発したロボットは、経路上の信号や標識を自力で認識できます。記事は、「緊急時に介入する責任は人間のオペレーターにある」と強調。セブン&アイ・ホールディングスの広報はwatson.chに「例えばロボットが人々に囲まれて動けなくなった場合、オペレーターはマイクを通じて道を開けるよう頼むことができる」と説明しました。
ロボット導入の背景についても詳報しました。労働力不足が深刻な日本では道路交通法が改正され、2023年4月からロボットの公道走行が可能に。「パナソニックなど他の企業も商品を輸送するための新しい機械の試験を始めている」と紹介しています。
今回の実証実験の狙いについては、「現在は人間の運転手に依存しているセブンイレブンの既存の配達サービスを強化することを目的としている」と解説。「5年後には労働力不足がさらに深刻化する可能性があり、その時点で人間による配達が可能であるという保証はない。我々は備えなければならない」とする同社広報のコメントを伝えました。(出典:watson.ch外部リンク/フランス語)
フリブールで塩田千春さん展覧会
スイス西部のフリブール美術・歴史博物館(MAHF)で24日、ベルリン在住のアーティスト塩田千春さんの個展「光の中で外部リンク」が開幕しました。フランス語圏の大手紙ル・タンが、個展開催に至った経緯や見どころを詳しく紹介しています。
きっかけは、塩田さんが2024年に舞台美術を手掛けたオペラ「イドメネオ」。ジュネーブ大劇場外部リンクでの2月の初日公演を見たMAHFのイヴァン・マリアーノ館長は、その日のうちに塩田さんにメールを送ったと言います。「すぐにアーティストから好意的で興味ありげな返事をもらった」。4カ月後に塩田さんがMAHFを訪れ、同館に展示されたジャン・ティンゲリーやニキ・ド・サンファルなどの作品を目にし、構想を膨らませたそうです。
塩田さんは作品を作る前にはいつも、現地を視察するそうです。「そこに行ったことがなければ、創作はできません。歩いて、考えて、それから絵を描き始め、スケッチをします」。個展では美術館のシャンデリアを中心に据えて赤い糸を編み込んだインスタレーションを発表します。記事は「この有機的なもつれの中で、華麗なシャンデリアが宮殿や舞踏会、喜びを連想させる」と解説しました。
今年3月までパリのグラン・パレ美術館で開催されていた塩田さんの「魂がふるえる」展は、予想を大きく超える30万人以上が訪問。マリアーノ館長は、フリブールの展覧会は「ある意味ではパリよりもさらに優れています」と自信満々。「MAHFの展覧会はもっと親密で小規模ですが、来場者はこの壮大なプロジェクトを観に来てくれると確信しています」と語りました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「中国の人身売買組織を摘発 スイス・ベルン州警察」(記事/日本語)でした。他に「CO₂ 回収・除去のスイス新興企業クライムワークスが人員削減へ」(記事/日本語)、「スイス・EU、二国間協定案に正式合意」(記事/英語)も良く読まれました。
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校閲:大野瑠衣子

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