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対米投資、被災ペット、安土城… スイスのメディアが報じた日本のニュース

誰もいない通りにたたずむ犬
2011年4月15日、福島県双葉町に佇む犬。原発事故後、多くの飼い主がペットたちを置いて避難を強いられた AP Photo/Hiro Komae

スイスの主要報道機関が3月4日~10日に伝えた日本関連のニュースから、①日本がアメリカとの投資協定に固執するのはなぜ?②被災ペットの保護を続けて15年③ゲーム技術が再現する安土城、の3件を要約して紹介します。

東日本大震災から15年。あの日東京にいた私の脳裏には、ぐらぐらと揺れる電信柱や、テレビ中継が映し出す津波が深く刻まれています。しかしスイスのメディアでは、当時も今も3.11は原発事故が起こった「フクシマの日」。それも間違いではないのですが、その微妙な温度差にもやもやする日でもあります。

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日本がアメリカとの投資協定に固執するのはなぜ?

ドナルド・トランプ大統領が推し進めてきた相互関税は、米連邦最高裁判所によって無効と判断されました。インドは貿易協定交渉を中止し、欧州連合(EU)は交渉の仕切り直しを図る一方、日本が5500億ドルの対米投資を取り下げる素振りはありません。スイス・ドイツ語圏の大手紙NZZは、その背景を東京大学先端科学技術研究センターの井形彬氏に聞きました。

井形氏はNZZに、米裁判所の判決は「日本の目から見れば、少ししか変化をもたらさない」と話します。日本にとって重要な自動車、半導体、鉄鋼への関税は判決の対象外。またトランプ氏が別の理屈で新たな関税を課す可能性もあります。そして「何より、日本にとってこの合意は法律問題ではなく、戦略的な決定」だとして、日本が防衛政策をアメリカの支援に頼っている現状を説明しました。

それでも5500億ドルという投資額は巨額ではないか――こんなNZZの質問に、井形氏は「これは法的拘束力のある約束ではなく、あくまで善意の表明にすぎない」と解説。日米双方にとって意味のあるプロジェクトであれば実行しますが、日本には「特定の要請を拒否するという選択肢もある」。国際協力銀行(JBIC)によるデューデリジェンス(査定)を根拠に「投資不可能」と判断できるといいます。

NZZはさらに「日本は、安全保障と引き換えに経済的譲歩を強いられるというこの力関係を変えることができるのか?」と質問しました。井形氏の答えは、高市早苗政権がまさにこのバランスを変えようとしている、というもの。軍事費の増額により「日本が近い将来に同盟から離脱することはないが、より自立した国へと向かっている」と説明しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

被災ペットの保護を続けて15年

東日本大震災から15年。スイス・フランス語圏のオンラインメディア20min.には、福島県浪江町で飼い主を失ったペットたちの保護活動を続ける赤間徹さん(63)の物語が掲載されました。

建設業を営む赤間さんは、震災前から配管工事などで福島第1原子力発電所の維持管理に関わってきました。原発事故後は廃炉作業にも携わりました。

記事は「悪名高い原子力発電所の労働者」だった赤間さんが、避難で飼い主を失ったペットたちの世話に「人生を捧げている」と伝えました。赤間さんは15年間、補償金のほぼ全額を動物たちの世話に費やしています。寄付も寄せられますが、飼育費やエサ代のほとんどは自腹。掃除やエサやり、散歩などに追われる毎日は休みがなく、赤間さんは「正直、以前の仕事の方が楽だった気がする」と話します。

赤間さんが動物たちに人生を捧げる理由は何なのか。赤間さんは「私たちが長年働いてきたこの発電所のせいで、動物たちがこんな状況に陥っている」と語ります。15年の間、多くの動物たちを看取り、お墓を建ててきました。今も47匹の猫と7匹の犬と暮らす赤間さんは、「私が今日も生きていられるのは、動物たちが経験した苦しみを心に刻んでいるから。それが私の支えだ」と語りました。(出典:20min.外部リンク/フランス語)

ゲーム技術が再現する安土城

NHK外部リンクと仏制作会社GEDEONが共同制作したドキュメンタリー番組「The Lost Castle of Azuchi外部リンク(仮訳:失われた安土城)」。主役となる安土城の再現には、人気ゲーム「アサシン クリード シャドウズ」のCG技術が貢献したことを、フランス語圏のスイス公共放送(RTS)が紹介しています。

記事によると、シャドウズを制作したユービーアイソフトは、実際の考古学・歴史調査に基づいて安土城の再現CG映像を制作しました。遺構の発掘調査に加え、レーザー光で人工構造物を測量する技術「LiDAR」を使って、城壁の復元に成功。ポルトガル人宣教師ルイス・フロイスの回想録の記述も、焼失した天守閣の内部の再現に役立ちました。

「安土城は、その建築技術の卓越性に加え、信長の権力と野心​​を象徴するものだった」。記事はこう続け、「3本の神聖な大支柱は、城主・織田信長とその政治・経済政策を支えていた。信長は選ばれた者であり、次の支配者になることは必然だった」とするメルボルン大学の中世日本建築専門家、マーク・エルドマン氏の解説を引用しました。

信長は中央集権体制を目指し、武士の役割を大きく変えた、と記事は記しています。自由貿易や独占廃止といった政治経済システムの改革も講じ、安土城は信長の思想・ビジョンを体現する新たな都市空間になったと言います。記事は最後に「安土城は消失したが、日本の建築と社会構造に及ぼした影響は今日にも受け継がれている」とまとめました。

ドキュメンタリーはRTSの配信サイト「Play RTS外部リンク」で2028年12月8日まで全編を視聴できます(フランス語のみ)。(出典:RTS外部リンク/フランス語)

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