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対米投資、電気スプーン、ミス・おばあちゃん… スイスのメディアが報じた日本のニュース

記者会見に立つトランプ大統領
ドナルド・トランプ大統領は20日、米連邦最高裁判所が相互関税に無効判決を出したことを受けて記者会見を開いた AP Photo/Allison Robbert

スイスの主要報道機関が2月18日~24日に伝えた日本関連のニュースから、①関税協定の投資プロジェクト第1弾に合意②塩分を減らす電気スプーン③「ミス・おばあちゃん」酒井純子さん、の3件を要約して紹介します。

日本が相互関税の15%引き下げを勝ち取った昨年7月も、スイスメディアは日本を先行例として注目していました。しかしその日本が「勝者」となったのか、最終的に貧乏くじを引かされるのかは、まだまだ決着がつきません。少なくとも日本自身は大喜びしているわけではない背景事情を、NZZが分析しています。

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関税協定の投資プロジェクト第1弾に合意

ドナルド・トランプ米大統領は17日、昨年の関税交渉で決まった日本の対米投融資第1弾として、オハイオ州のガス発電施設、テキサス州の原油積み出し港整備、ジョージア州の人工ダイヤモンド関連施設の3つを決定したと発表しました。スイス・ドイツ語圏の大手紙NZZは、「関税引き下げと引き換えにトランプ氏に多額の投資を約束した他の国々にとって、日本は先駆者となりつつある」と報じています。

NZZは日本が先駆者になった背景として、韓国との対比を挙げました。韓国は議会承認に手こずり投資の実行が遅れたため、トランプ氏は関税の引き上げをちらつかせました。これは「『遅れる者は代償を払う』という日本政府に向けた明白なメッセージ」となり、日本は3月に予定される高市早苗首相の訪米を待たずに第1弾を発表した、とNZZは解説しています。

NZZは、第1弾のプロジェクトには、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)のほか、日本の金融機関も総動員されていると説明。ただ日本側の関与を勝ち取る交渉は「容易ではなかった」と伝えています。日本の政財界からはトランプ氏の脅迫的な手法を批判する声が強かったものの、経済・安全保障面でアメリカに依存しているため「日本政府には他に選択肢がなかった」といいます。

NZZは第1弾の発表のタイミングが想定より早まったもう1つの理由として、米連邦最高裁判所がトランプ氏の相互関税の合憲性を審査中だったことも指摘しました(記事は無効判決が下される2日前に配信)。「トランプ氏は自身のSNSで、日本との合意を自身の貿易政策の証明として称賛した」。そして「日本もこの合意から利益を得るのか、それとも代償を払うのかは未知数だ」と結びました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

塩分を減らす電気スプーン

電気の力で塩味やうま味を強化するスプーンとして2024年5月に発売された「エレキソルト外部リンク」。減塩をサポートする「食器」が生まれた背景や今後の展開について、スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーが解説しています。

「日本では、人間のあらゆる問題に技術的な解決策が編み出されることが珍しくない」。

記事は、日本人の塩分摂取量が1日10グラムと、世界保健機関(WHO)推奨の6グラムを大きく上回っていることを説明。その理由としてみそ汁やすまし汁、うどん、そば、ラーメンなど「日本の洗練された食文化において重要な役割を担っている」スープに塩分が多く含まれていることを指摘しました。

エレキソルトを発明したキリンホールディングスのヘルスサイエンス事業部の佐藤愛氏は、病院食の改善に取り組んでいたときに発想を得たそうです。佐藤氏は同紙の取材に、「患者さんたちは塩分を控えるべきだと認識しているのに、日常生活ではそれを実践できていない」と語りました。そして明治大学の教授と共に、「塩味を置き換えるのではなく、その効果を高めるものの開発に着手」しました。

記事によると、佐藤氏ら開発チームは現在、スプーン(とカップ型デバイス)の耐久性向上に取り組んでいます。病院や食堂に導入するには、食洗機での高温洗浄に耐えるものでなければなりません。また米食品医薬局(FDA)などの承認がまだなく国際販売できないこと、子どもや心臓ペースメーカーを装着している患者への使用も未承認であることも課題として挙げました。

記事は佐藤氏のチームがわずか5人の小所帯ながら「栄養の未来について考えることに専念している」と紹介。佐藤氏は食事の楽しみをバーチャルリアリティ(VR)で体験して節食・減量を促す方法を研究中で、「電気スプーンはその副産物だった」と語りました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

「ミス・おばあちゃん」酒井純子さん

NZZは日曜特集で、昨年のミス・ユニバース・コンテストに66歳で出場した酒井純子さんを紹介。酒井さんの言葉や生き方、ミスコンへの挑戦を通じ、日本社会における高齢化と美の基準の変化について考察しました。

「急速に高齢化が進む日本において、彼女は若々しさを保ち、社会の表舞台に立つ高齢者という新たなムーブメントの一翼を担っている」。記事は酒井さんが主催するハイヒールウォーキングのレッスンを取材。従来の「美しさは若さである」という日本社会の固定観念にとらわれる年配の参加者たちに、酒井さんは年齢に関わらず美しく、自信を持って生きられるというメッセージを投げかけています。

ミスコン出場以来、酒井さんには全国から取材の申し込みが殺到。NZZは「若いことと老いることの認識を変えるのは、この国をおいて他にあるだろうか?」と問いかけ、高齢化先進国の日本での認識の変化は、スイスなど高齢化が進む全ての国にとって参考になると示唆しています。

記事は、日本における伝統的な美の基準、すなわち「細く、可愛らしく、控えめであること」や、企業における女性の服装規定、そして出産を機に多くの女性が職場を離れ、他者からも自己認識においても「もう魅力的ではない」と見なされやすい傾向 に言及しています。また政治家による高齢女性に対する差別的な発言を紹介し、日本社会に根強く残る性差別的な価値観を描きました。

しかし酒井さんは若さを追求することをよしとしません。「このレッスンで若返るわけではないけれど、ありのままの自分でいることに居心地よくいられるようになる」。ミスコンでは、しわや体力不足に怖気づきながらも、「審査員も、私がありのままの自分に自信を持っていることに気づいてくれた」と振り返りました。

「高齢化が進む日本において、伝統的に若者の領域と考えられていた社会的な場に踏み込む高齢者は、酒井さんだけではない」。記事は、労働やスポーツでも多くの高齢者が活躍していることを伝え、日本で「老いること」の意味が再定義され、年齢が美しさや活動の障壁ではなくなりつつあることを示唆しています。

最終的に記事は、「若さが美しさの基準ではなくなるのは時間の問題だ」という酒井さんの言葉を引用し、日本社会における価値観の変革への期待を込めて締めくくりました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

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