移民、右傾化、睡眠コンテスト…スイスが報じた日本のニュース
6日~12日にスイスで報じられた日本のニュースのうち、今週は①移民②日本の右傾化③睡眠コンテスト、の3件を要約してお届けします。
「人口が減れば経済も衰える」——そんな常識を、日本は静かに書き換えつつあるのかもしれません。移民を極力抑えながら質的な成長を追い求めてきた日本の歩みが、スイスの法律家の目には一つの答えとして映りました。低成長も厳しい入国管理も、見方を変えれば社会の安定を守る知恵になる。日本のケースが、欧州の一つの手本となるかもしれません。
移民に頼らぬ日本の人口減モデル、欧州の手本に
人口増加が進むスイスでは保守右派・国民党(SVP/CDU)の移民抑制案をめぐり(6月の国民投票で否決)、国の将来について激しい議論が交わされました。法律家でありチューリヒで長年経済法専門の弁護士を務めたユルク・ハルトマン氏はスイス・ドイツ語圏の大手日刊紙NZZへの寄稿で、人口減のなかでも移民を極力抑えた経済成長を目指す日本の歩みこそ、欧州の民主主義国にとって参考になると論じました。
高齢化や人口の停滞・減少が進むなか、移民の受け入れを管理・制御しながら、主に質的な経済成長を目指す社会・経済モデルを選ぶべきなのか。それとも移民による人口増加を背景に、主に量的な経済成長を追求し続けるべきなのか。ハルトマン氏はこの問いに対し「日本は極めて優れた参考事例になる」と指摘します。
ハルトマン氏は日本が「主に質的な経済成長と少ない移民受け入れを両立させてきた」と指摘。「Society 5.0」構想下での生産性の向上などによって、人口減少下においても持続可能な社会モデルが成り立つことを証明していると論じています。
さらに同氏は、日本が社会的一体性や連帯を脅かすような大規模な移民受け入れと、資源を大量浪費する量的な経済成長を明確に退けてきた点に大きな価値がある、と説明しました。定年年齢の引き上げや女性・高齢者の労働参加、AI(人工知能)の活用、自動化による徹底した生産性向上によって、人口動態の逆風を効果的に相殺した日本の構造改革を高く評価しています。
対照的に、スイスをはじめとする欧州諸国については、移民に依存した量的成長を追求し続けた結果、過密ストレスや社会統合の行き詰まり、国民的連帯の摩耗という甚大な代償に直面していると厳しく指摘しました。「人口増なき成長は不可能」という通説を、日本の実体経済の底堅さが事実上覆したと分析しています。
最後に筆者は、制御を欠いた野放図な移民流入による社会の分断や不安定化を防ぐためであれば、経済成長のペースが幾分鈍化することなど「社会の安定を買うための保険料」として受け入れる余地がある、と強調しました。欧州が直面する多文化共生の軋轢を前に、これまで日本の弱点と見なされてきた「低成長と厳格な入国管理」が、強靭な社会防衛策として再定義されています。
日本の外国人締め出しは「右傾化の最前線」
NZZは日本の移民政策について、別の視点からも論じています。日本政府が今年、外国人の在留資格に関する諸費用を大幅に引き上げたことについて、NZZの東京特派員マルティン・ケリング記者は、右派勢力の圧力を受けた政権による「外国人政策の抜本的締め付け」であり、日本社会全体の保守化を反映する動きだと論じました。
ケリング記者は、これはかつてスイスが採用した「季節労働者資格」やドイツの「ゲストワーカー(ガストアルバイター)」といった、外国からの出稼ぎ労働者制度への回帰にほかならないと批判的に位置付けました。外国人労働者を受け入れても、社会の一員として「定着する」ことは認めず、特に低賃金層には社会福祉にコストをかけない間だけ滞在させようとする欧州の過去の失敗を、日本がなぞっていると指摘しています。
国立社会保障・人口問題研究所の是川夕氏は、「これまで政府は、外国人労働者を使い捨ての消耗品のように扱わないと約束してきたはずだった。真面目に働き、社会に貢献する者には永住の道も開かれていた。新たな政策は、この従来の路線と真っ向から矛盾している」と指摘しています。
こうした排外的な政策転換の背景についてケリング記者は、外国人による犯罪や社会保障の不正利用急増を裏付ける客観的なデータが提示されていないにもかかわらず、参政党をはじめとする強硬右派勢力の台頭に焦った政権が、保守票を取り込むための政治的打算から推し進めたものだと分析しました。
その上で、外国人政策の厳格化締め出しの動きは保守化の氷山の一角に過ぎない、と指摘。女性天皇をめぐる論議の棚上げや歴史認識の後退などもその1つだと例示します。「個人の権利の拡大、性的少数者の権利平等、あるいは自国の歴史の暗部に対する批判的な向き合い方など、左派やリベラル勢力が掲げてきたアジェンダは、今やすべて遠景へと退きつつある」と記事は結んでいます。
眠ることさえ「競技」になる国
速く寝つき、質の高い睡眠を取ることを競う一風変わったコンテスト「マットレース」が今月、東京都内で開かれ、優勝者に賞金222万円が授与されました。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)はこのレースについて報じた通信社記事を転載し、休息であるはずの睡眠が競技種目にすらなる日本社会の「疲れ」を伝えました。
記事は、睡眠を測定するセンサーを全身に装着した参加者たちが、中にはお気に入りのぬいぐるみを抱えながら、薄暗がりの中で心地よいマットレスの上に横たわったと説明しました。参加者に与えられた指示は「最長90分間眠る」というシンプルなもの。寝入りの早さと睡眠の質を基準に、優勝者が決められました。
記事は、「日本は睡眠不足の国と形容されることが多く、人々は非常に働き者だ。このようなイベントを開催することで睡眠への関心を高めたかった」という主催者のコメントを紹介。日本社会には「睡眠不足の解消が疑いようもなく必要だ」と指摘ました。日本人の1日の平均睡眠時間が7時間24分と、OECD加盟国の中で最も短かったこと(2021年)にも触れています。
記事は、日本で睡眠時間が短くなる要因として、長時間労働、長い通勤時間などを挙げました。この一風変わった睡眠コンテストの背景には、多忙な生活環境の中で慢性的な睡眠不足に直面している日本の現実があると説明しています。
【スイスで報道されたその他のトピック】
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は10月20日(火)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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