中間選挙の反乱、AIへの懸念、死刑の倫理…スイスが報じた米国のニュース
スイスが30日~7日に報じた米国のニュースから、今週は中間選挙の反乱、AIへの懸念、死刑の倫理、の3件を要約してお届けします。
共和党員がドナルド・トランプ大統領への信頼を失いつつあるように見えるなか、米国は人工知能(AI)と死刑の倫理をめぐって世界的な懸念を呼び起こしている。
中間選挙によって米国が「政治的熱狂」に包まれるのは珍しいことではない。「しかし今年の混乱は特に激しく、現職大統領による前例のない動きも加わっている」と報じたのはスイス・フランス語圏の日刊紙ル・タンだ。
1カ月後には、共和党が下院の過半数を失う可能性が高い。上院でも同様の事態が起きかねない。燃料価格の高騰と中東での消耗戦に苦しむなか、共和党強硬派もトランプ大統領への信頼を失いつつあるようだ、と同紙は指摘する。
「最も『赤い州』の共和党員でさえ、トランプ氏がまだ大きな影響力を持てるかどうか疑問視しているようだ」
スイスのオンラインメディア・ブリックによれば、トランプ氏は自党の一部上院議員から反発を受けている。その最たる人物が、トランプ政策を批判する本を執筆した引退間近のサム・ティリス上院議員だ。「共和党が大きな敗北を喫した場合、多くの議員は新たな問いに直面するだろう。トランプ氏に反対することは、無条件の忠誠を誓うよりも政治的キャリアにとって危険なのか?」
一方、ル・マタン日曜版は、トランプ氏がどんな結果にも対応できる戦略を持っていると見る。
「ホワイトハウスの主(あるじ)は、典型的なトランプ流の手法で大敗への地ならしをしている。勝てば自分の手柄とし、負ければ選挙の惨敗を共和党のせいにするつもりだ」
米国と中国は、AIの将来の方向性を決める争いに入っているように見える。これは両超大国と世界の他の国々との間の大きな溝を浮き彫りにしている、とスイスメディアは論じる。
AIはトランプ大統領と中国の習近平国家主席の最近の会談でも議題に上がった。技術をどう管理し、その恩恵を分かち合うかが問われている。
「欧州もスイスも大きく後れを取っている」とル・タンは指摘する。「米国が中国に追い越されることを恐れ始めているとすれば、私たち欧州人にとってそれは何を意味するのか。私たちは自分たちの手に負えない戦いの傍観者に過ぎない」
トランプ氏は再び、規制によって米国の主要AI企業の競争優位を損なわない姿勢を明確にした。AI業界の重鎮たちとの会合を経て、自主規制路線を支持している。世界の安全確保はOpenAIやエヌビディアのような企業に委ねられる形となりそうだ。
スイス・ドイツ語圏の高級紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)は、悪意ある行為者によるAI悪用を防ぐためにはこんな選択肢もある、と提示する。「AI開発の規制が非常に難しいため、将来の規制はモデルへのアクセスや展開に焦点を当てることになるかもしれない。AIエージェントに許容される応用分野を定義したり、ユーザーの出身国に基づいて特定のAIへの問い合わせをブロックしたりすることも考えられる」
クリスタ・パイク死刑囚の死刑執行の失敗は、スイスを含む米国内外の多くの人々に衝撃を与えた。テネシー州で殺人罪により死刑判決を受けていたパイク死刑囚は、9月30日に2回分のペントバルビタールを投与されたにもかかわらず死亡せず、意識を取り戻した。現在も重篤な状態で入院中だという。この事件は改めて死刑制度への疑問を呼び起こしている。
「国家が国家公認の殺害という形で対応するとき、それは司法的殺人に他ならない」。ドイツ人ジャーナリストで作家のヘルムート・オルトナー氏は、ドイツ語圏・スイス公共放送(SRF)にそう語った。「死刑に抑止効果がなく、冤罪の可能性もあるということを国家は知っている」
NZZも死刑制度に批判的な立場をとる。「国家は市民の命を裁く権利を自ら引き受けている。これは啓蒙された自由主義社会にはふさわしくない」
ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー(TA)は、これまで米国で起きた数々の死刑執行失敗事例を記事で振り返った。「クリスタ・パイクのケースは、死刑執行に使われる薬物をめぐる議論を再燃させた。あらゆる意味で痛ましい話だ」と同紙は結んでいる。
次回のスイスが報じた米国のニュースは10月15日(木)に配信します。
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英語からの翻訳・校正:宇田薫
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