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「芸術でデモクラシーを支えたい」 パフォーマンスアーチスト

自宅近所のお気に入りのお寺、京都法然院で swissinfo.ch

まずは「名刺を選んでください」と渡されたのは何種類もある様々な顔の写真付き名刺。写真は花粉マスクをしている中年女性、花見を携帯電話で写真に撮る人など様々だ。写真とデザインと情報が暗号化したQRコードが表示されたこの彼の名刺にマーカス・ベルンリ(38歳/Markuz Wernli)氏の興味が凝縮しているようだ。

 「今、一番関心があるのはコミュニケーションや情報を伝える媒体です」と語るベルンリ氏。それは「コミュニケーションなしでは民主主義が潰れてしまうから」とスイス人ルーツをうかがわせる。だから、サンフランシスコの「ヌードル・ギャラリー」で評判を得た写真展(05年)のテーマは日本の「銭湯」。集いの場に興味があるから。自らも温泉のあるバーデン出身で日本人の愛妻と暮らす京都では週に1回は通う銭湯好き。写真を撮るのはコミュニケーションの取っ掛かりになるから。

 もとは、サンフランシスコでグラフィック・デザインやブックデザインを手掛けていた。でも「様々な問題を抱えた社会にアートが解決になるのでは」とパフォーマンス・アートを始め、世界中の様々な都市で実験する。「アートは役に立ち、アーチストは先見性がなければいけない」という信念だ。

 サンフランシスコでの「失くしたお財布」プロジェクト。これはビデオカメラをベンチが見えるところに設置し、そこにわざとお財布を忘れて人々の反応を撮る。「忘れたぞ!」と大騒ぎする人やお金が入っているか興味を示す人など様々という。「この事件を通して人々の間に生まれる交流が面白い」。大阪で同じプロジェクトをやったところ、半数の人は巻き込まれるのを恐れた。

 パフォーマンス・アートである「一円プロジェクト」は歩道にある視覚障害者用の点字ブロックの上に、歩行者に一円硬貨を置いてもらい集まったお金を障害者に寄付するというもの。これは「協力してもらうことで、視覚障害者への配慮を認識してもらう」のが狙い。こういうパフォーマンスを行うときの各都市で許可を取得するプロセスも大事という。「アーチストの目的は社会のコミュニケーションのためにアイデアを作ること」と語り、「自分の名前など重要でない。他の人にもどんどん同じアイデアをやって欲しい」どこまでも社会派なのだ。


swissinfo 聞き手 屋山明乃(ややまあけの)
 

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