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AIブームの代償は電気と水 データセンター急増に揺れるスイス

米国ミシガン州サリーンで予定されている大規模データセンター「スターゲート(Stargate)」建設に反対するデモ。住民は電気料金の上昇や水不足を懸念する
米国ミシガン州サリーンで予定されている大規模データセンター「スターゲート(Stargate)」建設に反対するデモ。住民は電気料金の上昇や水不足を懸念する Jim West / Science Photo Library

データセンターは人工知能(AI)の頭脳を支える不可欠な存在である一方、電力消費、水利用、環境負荷という新たな問題を生み出している。スイスもその影響は避けられない。

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データセンターは何十年もの間、影でインターネットを支えてきた。あまり注目されない存在だったが、AI関連サービスへの需要増加に伴い、センターの数や規模が拡大した。この現状に対し、地元住民の反発が強まっている。

今、世界中で問題視されているのは、データセンターの運用に伴う大量の電力消費や、水・土地の利用だ。

データセンターの密度が世界で特に高いスイスでも、同様の問題外部リンクが表面化している。最近では、スイス北部のシャフハウゼン州ベーリンゲンで計画されているデータセンターの近くで、環境活動家らが抗議キャンプを設置外部リンクするという出来事があった。

市民のこうした懸念には根拠がある。国連の最近の報告外部リンクによると、AIは2030年までに13億人が必要とする量に相当する、膨大な水を消費する。また電力に関しても、パキスタン、バングラデシュ、ナイジェリア3国が1年に消費する総電力の3倍に当たる量を使う可能性がある。

それでも投資は拡大し続けている。世界トップに名を連ねるテクノロジー企業は昨年、データセンターに約4000億ドル(約65兆円)を投資した。これは、同年にアフリカのエネルギー分野へ投じられた投資総額を上回る金額だ。国際エネルギー機関(IEA)外部リンクによれば、この額は今年には7000億ドルを超える可能性がある。

こうした流れを受け、米国の複数の州では、新規プロジェクトに対する規制や一時停止措置に関する議論が始まっている。既に地域住民の反対により、開設が中止されたデータセンターも多い。同様の動きは、アイルランド、オランダ、ドイツ、ブラジルでも報告されている。

なぜデータセンターは、ここまで問題視されるようになったのか?スイスも例外でないのはなぜか?以下、5つの図から読み解く。

1. スイスは既にデータセンター大国

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世界には1万1000を超えるデータセンターが存在する。国連のデータ外部リンクによると、その大半は米国に集中しており、次に英国、ドイツ、中国が続く。

絶対数で言えば、スイスは多数の欧州近隣国と比べセンターの数が少ない。だが人口比で見ると、スイスは世界でもデータセンター密度が高い国の1つに入り、人口100万人あたりデータセンターが約13施設存在する(米国は約12施設)。

国内の電力消費にデータセンターが占める割合も、スイスは既に欧州で最も高いレベルに達している。

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大量の電力を消費するデータセンターのサーバー。2030年までに国内電力消費の最大15%を占める見込み

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スイスで急増するデータセンター のしかかる送電網への負担

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの人口あたりのデータセンター数は世界最多水準にあり、国内電力消費に占めるデータセンターの割合は欧州トップクラスだ。一部の送電網は既に限界に近く、人工知能(AI)の急成長による電力需給のひっ迫が懸念されている。

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スイスにデータセンターが集中しているのは、単なる偶然ではない。こうした施設の運営には、安定した電力供給、高速インターネット接続、政治的な安定性が必要だ。スイスには、これらの条件が全て揃っている。運営側にとって、欧州市場の主要地域に近いというメリットに加え、比較的低コストで、二酸化炭素(CO2)排出量の少ない電力を利用できるため、運営地として魅力的だ。

大手テクノロジー企業がチューリヒにオフィスを構えていることも、データセンター拡大の一因だ。また、政治的に中立で、データ主権に関する厳格な規制があるスイスは、米国や中国、欧州連合(EU)以外でデータを保存できる選択肢を探す企業からの要望が高い。

IEAが指摘するように、既にデータセンターの基盤が整っている国には、さらなる投資が集まりやすい。その結果、データセンターは世界の少数の国に集中する傾向があり、スイスもその1つに含まれる。

2. AI使用で電力需要が過去最高水準に

グラフィック
SWI swissinfo.ch

データセンターの電力需要は、昨年、世界的に17%増加した。IEAの推算によると、これは世界全体における総電力需要の約6倍の速さで上昇している。データセンターのエネルギー消費量は、2030年までに現在の2倍以上になる可能性がある。

消費電力が急増している主因の1つは、AIだ。IEAによると、AI特化型のサーバーに限れば、電力消費量が2030年までに3倍に膨らむ見込みだ。AI向けに最適化されたサーバーラック1台は、65世帯が1年間で消費する電力を使うという。データセンターには、こうしたサーバーラックが何十台、何百台、場合によっては何千台も並べられている。

大規模言語モデルの学習と利用には、膨大な計算能力が必要だ。米国のAI研究企業OpenAI が開発した大規模言語モデルGPT-4の学習には、推定で数十ギガワット時の電力が必要だったとされる。また国連は、AIを使った検索は通常のウェブ検索と比べ、約10倍の電力を消費すると指摘している。

スイスはこれまで、こうした影響をあまり受けてこなかった。スイスの既存データセンターの大半は、主にクラウドサービスを支えており、AIモデルの学習を目的としていなかったためだ。それが今、スイスでもAI関連プロジェクトへの投資が進んでいる。例えば、ルガーノのスーパーコンピューターは、スイスの言語モデル「アペルトゥス(Apertus)」の学習に利用されている。またバーゼルでは最近、AI向けの新しい高性能コンピューティングセンターが開設された。

ベーリンゲンで物議を醸している前出のプロジェクト外部リンクは、公式にはAIデータセンターに分類されていないものの、AI関連の処理を含む大規模な計算処理が行われる予定だ。

シャフハウゼン市議会議員、マウルス・プファルツグラーフ氏の質問書外部リンクによれば、同施設はサッカー場約2.5個分に当たる規模があり、フル稼働時には、州全体の電力需要の75%に相当する電力を消費する可能性がある。

他の欧州諸国は、既にデータセンターのエネルギー問題に取り組み始めている。例えばアイルランドでは、数年前からダブリン周辺でデータセンターに新規接続することが制限されている。電力網への過度な負荷や停電のリスクが伴うためだ。

3. スイスのデータセンターを牽引するハイパースケーラー

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連邦エネルギー省エネルギー局(BFE/OFEN)の委託調査外部リンクによると、スイスのデータセンターによる電力需要は2019年以降、約20%増加した。2024年には、国内の総電力消費量において、データセンターが占める割合が3.6%だった。これはスイス連邦鉄道(SBB/CFF)外部リンクが国内の全ての列車を1年間運行するために必要な電力量に匹敵する。

同調査によれば、スイスのデータセンターは2030年までに国内電力の5%以上を消費する可能性がある。この増加は、約18万世帯が1年間に必要とする電力に相当する。

こうした増加は、「ハイパースケール」と呼ばれる最大規模のデータセンターに起因する。運営者は主にアマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタといった巨大テクノロジー企業だ。スイスにおけるこれら施設の電力消費量は、2030年までに約2倍になる見込みだ。一方で、小規模で専門的な用途に使われるデータセンターの消費量は、今後も安定して推移する模様。

4. スイスのデータセンターのウォーターフットプリントは世界最大級

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データセンターは電気を食うだけではない。設備の冷却に大量の水が使われ、電力の発電自体が水資源に依存していることから、大きなウォーターフットプリントが伴う。

例えばベーリンゲンに建設予定のデータセンターは、年間約5万5000m3の水が冷却に使われる見込みだ。これは約1000世帯が1年に使う水の量に相当する。

世界中のデータセンターが昨年消費した電力は、発電や冷却などを含め、推定4.5兆リットルもの水利用につながったとされている。この値は2030年までに2倍以上になる可能性がある。これはサハラ以南アフリカに住む13億人全てが1年間に必要とする地下水の量に相当すると国連は指摘している。

世界各地の人々は、こうした施設が必要とする大量の水の影響を実感し始めている。例えばメキシコ外部リンクでは、政府が推進したデータセンター拡大の影響で、多数の住民が水の配給制や停電に苦しむようになった。

スイスには、矛盾が1つある。スイスの電源構成は、水力発電のおかげで世界でも最もクリーンな部類に入るが、その結果、電力を生産するためのウォーターフットプリントは世界でも特に高い。国連によると、世界平均の2倍以上だ。

河川の水を発電に使うと、一部の流域で流量が減少する可能性がある。また気温が上昇し乾燥する時期には、貯水池の水が蒸発して大量の水が失われることもある。

つまり冷却に全く水を使わなかったとしても、データセンターは電力の消費を通じて間接的なウォーターフットプリントを残す可能性があるのだ。

5. スイスのデータセンターは他国と比べ、CO₂排出量が少ない

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データセンターは膨大なエネルギーを消費するが、使われる電力の発電方法によって、気候への影響は大きく異なる。

スイスはこの点で際立っている。世界有数のデータセンター拠点の中で、スイスは最もCO₂フットプリントが小さい。背景には、CO₂を排出しない水力発電と原子力発電の利用がある。スイスの電力のうち、化石燃料によるものはわずか3%程度だ。

しかし世界全体では状況が大きく異なる。国連によれば、データセンターが昨年消費した電力は、CO2換算で約1億8900万トンの排出量を生み出した。再生可能エネルギーや、その他の低排出エネルギー源への大規模投資が進んでいるにもかかわらず、データセンターの電力消費に関わる総排出量は、2030年までに2倍以上になる可能性がある。

米国では最近、ワシントン・ポスト外部リンクの分析で、データセンターのディーゼル発電機と、大気汚染・呼吸器疾患・早期死亡との関連性が示された。

編集:Gabe Bullard/VdV、独語からの翻訳:シュミット一恵、校正:宇田薫

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