2003年7月、リベリア内戦中の少年兵
Keystone / Nic Bothma
スイス連邦裁判所は18日、戦争犯罪に関する国内初の裁判で、リベリアの反政府組織の元指導者に懲役20年の判決を下した。NGOの弁護士が発表した。
このコンテンツが公開されたのは、
懲役20年の判決を受けたのは、リベリアの反政府組織の元リーダー、アリュー・コシア被告(46)。民間人の殺害、レイプ、少年兵の採用、カニバリズム行為など25件の罪に問われていた。裁判記録によると、コシア被告は4件を除いて有罪となり、民間人の殺人未遂、民間人殺害の共犯、略奪の命令、少年兵の勧誘については無罪となった。
人権NGO「シビタス・マキシマ」などが刑事告発していた。同NGOでこの事件の法律顧問を務めたロメイン・ワブレ氏はロイター通信に対し、コシア被告は、どの事件かは特定せず、ほぼすべての起訴内容について有罪判決を受けたと語った。
コシア被告は永住権を得て生活していたスイス国内で2014年、逮捕された。スイスは11年、国内法を改正し「普遍的管轄権原則」を適用。同原則に基づき、コシア被告を逮捕した。普遍的管轄権とは、ある国が「国際法上の犯罪(大量虐殺、戦争犯罪、人道に対する犯罪)」の容疑者を逮捕した場合、発生場所や容疑者の国籍にかかわらず訴追できるという原則だ。
公判では、コシア被告指揮下の反政府勢力に警棒で殴打され死亡した被害者の家族など、約15人のリベリア人が証言する予定だった。また別の被害者は、少年兵としてコシア被告のために働くことを強要されたと主張した。
被害者側の弁護士は、リベリア国内での報復を防ぐため、被害者の身元は明かさないよう求めた。
リベリアは1989年から2003年の紛争で数十万人が死亡したが、戦争犯罪の加害者を訴追していない。国際法廷で裁かれた加害者はごく一握りだ。その中には、隣国シエラレオネで戦争犯罪を犯したとして国連が設置した国際法廷から有罪判決を受け、現在は英国で収監されているチャールズ・テイラー元リベリア大統領がいる。
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
普遍的管轄権行使の事件、コロナ危機でも増加
このコンテンツが公開されたのは、
普遍的管轄権を行使する裁判が世界中で増えている。ジュネーブのNGOは、国際犯罪の犠牲者に正義をもたらす戦いは終わっていないと話す。
もっと読む 普遍的管轄権行使の事件、コロナ危機でも増加
おすすめの記事
スイスの難民政策に影響?スリランカの人権報告書
このコンテンツが公開されたのは、
国連人権理事会は23日、スリランカの人権状況に深刻な懸念を表明し、スリランカ政府に勧告の実施を求める決議を採択した。大きなスリランカ人コミュニティーを抱えるスイスも決議を支持した。
もっと読む スイスの難民政策に影響?スリランカの人権報告書
おすすめの記事
リベリア内戦の戦争犯罪、スイスがフィンランドの裁判から学べることは?
このコンテンツが公開されたのは、
リベリア反政府組織の元リーダーが現在、戦争犯罪の罪に問われスイスで公判中だ。歴史的な裁判として注目されたが、フィンランドでは類似の手続きがはるかに速いペースで進んだ。フィンランドの裁判所のやり方はどう違ったのか?スイスアプローチの方が効率的だったと言えるだろうか?
もっと読む リベリア内戦の戦争犯罪、スイスがフィンランドの裁判から学べることは?
おすすめの記事
戦争犯罪容疑者を裁く スイスで期待高まる
このコンテンツが公開されたのは、
非軍事裁判所におけるスイス初の戦争犯罪裁判が年内に行われる見込みだ。スイスの人権NGO(非政府組織)トライアル・インターナショナルによると、国際法上の重大犯罪について発生地や加害者の国籍に関係なく自国で裁く「普遍的管轄権」を行使する裁判が世界中で増えている。スイスでも同様の事件が複数捜査中だが、NGOは手続きの迅速化が必要だと訴える。
もっと読む 戦争犯罪容疑者を裁く スイスで期待高まる
おすすめの記事
戦争犯罪容疑者に裁きを―スイスの人権団体、捜査の遅れ懸念
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国内で近年、母国で戦争犯罪を犯したなどとしてアフリカ人の元閣僚ら2人が逮捕された。2人はガンビアの元閣僚オウスマン・ソンコ容疑者と、リベリアの反政府組織元リーダーのアリュー・コシア容疑者。2人を刑事告発したスイスの人権保護の非営利組織(NGO)は、連邦政府の捜査の遅れに気をもむ。
刑事告発したのはスイス・ジュネーブにある人権NGOのトライアルインターナショナルとシビタス・マキシマの2団体。両団体が注目するのはとりわけスイス政府の「普遍的管轄権(universal jurisdiction)」に対する姿勢だ。普遍的管轄権とは、ある国が「国際法上の犯罪(大量虐殺、戦争犯罪、人道に対する犯罪)」の容疑者を逮捕した場合、発生場所や容疑者の国籍にかかわらず訴追できるという原則だ。
もっと読む 戦争犯罪容疑者に裁きを―スイスの人権団体、捜査の遅れ懸念
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。