スイス政府は15日、ロシアの個人資産の没収は、スイスの憲法と一般的な法秩序に違反するとの見解を示した。
このコンテンツが公開されたのは、
専門家グループによる報告を受け、政府は声明外部リンクで、法的に正当な出所の個人資産を補償なしに収用することは、スイスの法律では認められていないと述べた。「凍結された個人資産の没収は、スイスの憲法と一般的な法秩序に反し、スイスの国際公約に違反している」と指摘した。「他の国でも同様に、憲法上の権利・保障がある」ことも付け加えた。
一方で「資産没収に関する議論とは別に、ウクライナへの支援は継続する」と強調した。
ロシア中央銀行の外貨準備やその他国有資産の没収案については、引き続き国際的な議論に参加していくと述べた。
連邦経済管轄庁(SECO)は昨年12月、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁としてこれまでに75億フラン(約1兆600億円)を凍結したと発表した。
ウクライナへの賠償金に凍結資産を充てる案については、米国やカナダ、欧州連合(EU)で議論が進み、スイス議会からも要望が高まっているのを受けて、司法省に設置した作業部会で検討していた。
EU制裁に再び追随
スイスの銀行業界も没収には反対している。スイス銀行協会は先月、「今のところ、没収するための法的根拠はない」と述べた。
スイスはEUに加盟していないが、石油価格の上限制などウクライナ戦争を受けたEUによる制裁の多くを踏襲している。
1月末にもEUの追加制裁に対応。新たに200人の個人資産を凍結し、航空機やドローンのエンジンなど航空宇宙産業の対ロ禁輸など新しい規制を発表した。
だがドイツがゲパルト戦車用のスイス製弾薬をウクライナに再輸出するのを拒否したスイス政府に対して、繰り返し批判が起きている。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
おすすめの記事
オリガルヒ資産の没収案 スイス金融業界にダメージ?
このコンテンツが公開されたのは、
米欧で、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を没収してウクライナの復興に充てるよう法整備に乗り出している。中立国を看板に世界の富裕層から資産を預かっているスイスの金融業界には新たな火種となりそうだ。
もっと読む オリガルヒ資産の没収案 スイス金融業界にダメージ?
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
おすすめの記事
新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州の約2億4200万年前の地層から新種のイカの化石が見つかり、「Chuchichäschtli(クッヒカーシュトリ、スイスドイツ語で『食器棚』)」と名付けられた。
もっと読む 新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
おすすめの記事
スイスのサマータイム廃止はいつ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで夏時間(サマータイム)が始まった。3月31日午前2時にすべての時計の針が1時間ジャンプし、午前3時を指した。だが夏時間制はとうの昔に廃止されるはずではなかったのか?
もっと読む スイスのサマータイム廃止はいつ?
続きを読む
おすすめの記事
スイス、オリガルヒ資産の没収案に慎重
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのイグナツィオ・カシス外相は18日、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、ロシア人資産を没収してウクライナの再建に充てることは、明確な法的根拠がなければできないと述べた。
もっと読む スイス、オリガルヒ資産の没収案に慎重
おすすめの記事
オリガルヒ資産の没収はスイス刑法第72条が適用可能
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは凍結したオリガルヒ(新興財閥)の資産をウクライナ再建費用に充てられるのか?スイスの腐敗防止専門家であるマーク・ピエト教授(刑法)は「可能」だと考える。
もっと読む オリガルヒ資産の没収はスイス刑法第72条が適用可能
おすすめの記事
資産隠しの重大スキャンダル スイスの過去と現在
このコンテンツが公開されたのは、
長年にわたり、スイスは独裁者たちが秘密特権を享受する資産隠しの安全地帯だった。2016年になってようやく不正取得資産の凍結・返還に関する法律が公布され、今やスイスは権力者たちの汚れた金と戦うリーダーだ。
もっと読む 資産隠しの重大スキャンダル スイスの過去と現在
おすすめの記事
スイス、ウクライナ支援金を倍増
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのイグナツィオ・カシス外相は5日、南部ルガーノ市で開催中のウクライナ復興会議で、ウクライナへの支援金を1億フラン(約140億円)に倍増させると表明した。
もっと読む スイス、ウクライナ支援金を倍増
おすすめの記事
スイスのロシア資産対策を糾弾 反汚職の投資家ブラウダー氏
このコンテンツが公開されたのは、
金融家ビル・ブラウダー氏は、過去20年近く汚職やマネーロンダリングと闘ってきた。米国や国際機関を相手に、スイスへの圧力を強めるよう働きかける。
もっと読む スイスのロシア資産対策を糾弾 反汚職の投資家ブラウダー氏
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。