パーム油原料のアブラヤシを栽培するため森林が破壊され、環境に悪影響を及ぼしている
Keystone / Dedi Sinuhaji
スイスの研究者が、気候や生物多様性に悪影響を及ぼさないパーム油の生産方法を発見した。
このコンテンツが公開されたのは、
放棄牧草地をプランテーションに転用することが、カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量を吸収量で相殺してゼロにすること)につながるという。
パーム油は食品や化粧品などに広く使用されているが、その生産方法が森林破壊を引き起こし二酸化炭素排出量が上昇、生物多様性にも悪影響が大きいとして、環境保護団体などから批判を受けている。このためスイスの研究者が、環境に優しい代替策を研究していた。
連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とスイス連邦森林・雪氷・景観研究所外部リンク(WSL)のチームが、世界第4位のパーム油生産国コロンビアにある元牧草地のプランテーションで、原料のアブラヤシの収穫を調査。プランテーションに転用された56年前以降の二酸化炭素排出量を計算したところ、炭素貯蔵量の総量は牧草地の時と変わらなかった。
アブラヤシは通常、25〜30年ごとに切り倒して植え替える。研究者たちは表面だけでなく土壌のすべての層に着目、2周期分のプランテーションが環境に与えた影響を調べた。
植え替えによって古い木の根やその他の部分が分解され、土壌の栄養分となる。これが牧草地転用の際の炭素損失分を部分的に相殺する。結果的に長期スパンでは、生態系の炭素貯蔵量が転用前のレベルと変わらないという。
研究者たちは、この方法なら森林破壊や二酸化炭素の排出増にならないと期待を込める。
研究論文の共同著者アレクサンドレ・バットラーさん外部リンクは「問題は、森林破壊によって引き起こされる負のカーボンインパクトと生物多様性の損失にある。しかし主要なパーム油生産国には、大規模な放棄牧草地がある。これにより、森林破壊によって引き起こされる大量の炭素損失に歯止めをかけられる」と語る。
研究は、世界自然保護基金外部リンク(WWF)とスイス、コロンビア、インドネシア、カメルーンの研究機関でつくる研究プロジェクト「OPAL外部リンク」の一環で行われた。
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
ネスレが森林破壊ゼロの誓約を守らない理由
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの食品大手ネスレはパーム油の調達に関して環境団体から非難された際、来年までにサプライチェーン全体において森林破壊に関与する原料を排除すると約束した。しかし、その目標の達成に近づくにはあと3年かかるだろう。
もっと読む ネスレが森林破壊ゼロの誓約を守らない理由
おすすめの記事
最後の遊牧民プナン族と暮らしたスイス人写真家
このコンテンツが公開されたのは、
写真家トーマス・ヴュートリヒさんは、ボルネオ島北部のマレーシア・サラワク州の熱帯雨林で先住民族のプナン族(ペナン族)と生活し、彼らの暮らしぶりをカメラに収めた。吹き矢を使った狩猟から熱帯雨林の伐採まで、存亡の危機にあるプナン族の日常を写真で伝える一方、「自分は第二のブルーノ・マンサーではない」と語る。
もっと読む 最後の遊牧民プナン族と暮らしたスイス人写真家
おすすめの記事
9月から「スイスミルク・グリーン」ラベルが登場
このコンテンツが公開されたのは、
スイスミルク・グリーンの認定取得には農家の農場・工場用地の最低7%を生物多様性を高める活動に充てることなど、職業訓練や開発、気候、乳牛の福利、抗生物質の使用に関する最低基準の達成が必要だ。 基準を満たす酪農家には牛乳1キ…
もっと読む 9月から「スイスミルク・グリーン」ラベルが登場
おすすめの記事
ネスレの衛星モニター、森林伐採を防げるか?
このコンテンツが公開されたのは、
ネスレは先月、パーム油のサプライチェーンを監視するために使っている衛星通信技術を報道陣に先行公開した。森林伐採をめぐる透明性を向上させようと取り組んでいるが、消費者の目が届くようになるまでにはまだ時間がかかりそうだ。
もっと読む ネスレの衛星モニター、森林伐採を防げるか?
おすすめの記事
持続可能なパーム油に危機? ネスレが浮き彫りにした認証制度の欠陥
このコンテンツが公開されたのは、
インスタント食品などに使われるパーム油。原料のアブラヤシ採取が熱帯雨林の破壊に繋がるのを防ぐため、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が認証制度を設けている。
もっと読む 持続可能なパーム油に危機? ネスレが浮き彫りにした認証制度の欠陥
おすすめの記事
植物のゴミでバイオ燃料を促進 !
このコンテンツが公開されたのは、
連邦政府に提出された同報告書では、植物のゴミや家畜の尿などのバイオマス ( 動、植物から作られる再生資源 ) で自動車を走らせるには、長期的な視野に立った政策が必要だと指摘している。 バイオ燃料第2世代 植物を利用した…
もっと読む 植物のゴミでバイオ燃料を促進 !
おすすめの記事
バイオ燃料は本当に良いか?
このコンテンツが公開されたのは、
アールガウ州当局から「グリーン・バイオ燃料 社( Green Bio Fuel ) 」に工場建設の許可が下りた。この工場はスイスの二酸化炭素 ( CO2 ) 排出量を、1990年を基準として1割削減するために寄与できる量…
もっと読む バイオ燃料は本当に良いか?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。