スイスで最も有名な自殺ほう助団体ディグニタス(Dignitas)外部リンクの創始者ルードヴィヒ・ミネッリ氏(85)による不法利得の疑惑について、チューリヒにあるウスター地方裁判所は1日、訴えを却下し無罪を言い渡した。自殺ほう助業の料金を巡る判決はスイスで初めて。
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ディグニタスはスイスでの安楽死を望む外国人に多く利用される非営利団体。ミネッリ氏は責任を否定している。
≫スイスで認められている「死ぬ権利」とは?
≫スイスの「自殺ツーリズム」
ミネッリ氏は、裁判費用の補填として国庫から13万5千フラン(約1500万円)を受け取る。同氏の弁護士費用に充てられる。
検察は、ミネッリ氏が「不正な宣伝戦略」を展開し、「実際の費用から乖離(かいり)した高額の手数料」を請求したと主張。これに対して裁判所は、ミネッリ氏に私腹を肥やす意図があることを検察側は証明できなかったと結論づけた。
スイスの法律では、自死しようとする本人が自らその行為を行い、それを手助けする人が行為者の死に何の利害関係もない場合に限り、自殺ほう助を認めている。利害関係がないだけに、ほう助団体が請求する料金は高額になる。法を破れば5年以下の懲役または罰金の対象となる。
ミネッリ氏は、2003年及び10年に自殺ほう助を依頼された3人のドイツ人女性により、暴利をむさぼったとしてウスター地方裁判所に訴えられた。
ある80歳の女性は、自殺ほう助費用が数千フランだったにも関わらず、ミネッリ氏が10万フランの献金を受け取ったとして訴追。またある母娘が通常費用の2倍に当たる1万フランを請求されたと訴えた。
検察は、罰金7500フランと訴訟費用などを求刑していた。
節目の年
ミネッリ氏は、断固として犯罪性を否定。訴追は「根拠がなく不可解」と批判した。
ディグニタスは今年、1998年5月17日の設立から20周年を迎えた。先月10日には104歳のオーストラリア人研究者デビッド・グドール氏が、バーゼルの自殺ほう助団体ライフ・サークルを通じて安楽死を選択し、話題になったばかりだ。
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スイスは自殺ほう助の先進国だ。年老いた人が自殺する権利は事実上規制されておらず、外国人が安楽死を求めてスイスを訪れる「自殺ツーリズム」がブームになっている。このリベラルな現状を見ると、スイスでは自殺ほう助が肯定的に受け止められているような錯覚に陥るが、実際は違う。自殺ほう助は政治や宗教、社会通念や倫理などといった価値観との戦いの連続だ。たとえ差し迫った状況にあるからといって、人の命をどうするか、そもそも問うていいものなのか。自殺ツーリズムを法で規制するか否かの議論はいまだ消えることはない。
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