少子化、外国人労働者… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が1月7日~13日に伝えた日本関連のニュースから、①カネで解決できない少子化問題②外国人労働者の悲惨な労働環境、の2件を要約して紹介します。
スイスのメディアで繰り返し取り上げられる日本の少子化問題。さまざまな分析がされていますが、さてスイスはどうかと目を移せば、保守的な家族観は似たり寄ったりなような。「少子化はカネで解決できない」という考えが強いようですが、時に手厚い支援のある日本が羨ましくなることもあります。
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カネで解決できない少子化問題
2025年の出生数は66万人台と、過去最少を更新する見込みとなりました。南ドイツ新聞の東京特派員トーマス・ハーン記者は、日本政府が打ち出す「出産費用の全額負担」や子育て支援策を紹介しつつ、「それだけで出生率の危機は終わらない」と警鐘を鳴らしています。スイスではターゲス・アンツァイガーなどに掲載されました。
ハーン氏は、日本の少子化問題を単なる経済的課題ではなく、社会構造の問題として捉えています。長時間労働、低賃金、そして教育競争の激しさが、子どもを持つことを「魅力的ではない選択」にしていると指摘。加えて、「女性は家庭を守る」という伝統的家族観や「子どもを持つためにはまず結婚が必要」という暗黙のルールが、若者のライフスタイルと乖離している点も強調しています。
ハーン記者は東京郊外の保育園を訪れました。保育園の現場では、親たちが仕事に追われ、子どもと過ごす時間が極端に少ないことが語られています。
さらに、教育への過剰な投資とプレッシャーも問題視しています。放課後に塾へ行き午後10時ごろまで勉強する子どもたちの姿を紹介。親自身も「もっと自由に子育てしたい」と感じながらも社会の期待に縛られている現状を伝えました。こうした競争社会が、子育てを「負担」として認識させていると筆者は分析します。
最後にハーン氏は、日本の少子化対策に必要なのは「金銭的インセンティブ」だけではなく、働き方や教育観を含む社会全体の構造改革だと結論づけています。高市早苗氏が初の女性首相に就いたことも「必ずしも状況改善への期待を高める者ではない」。高市氏が少子化に取り組む会議体を設置したことについて「また次なる会議だ。まるでこれが新しい問題かのように」と皮肉りました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
外国人労働者の悲惨な労働環境
トーマス・ハーン記者はまた、日本で働く外国人労働者が時に劣悪な労働環境で「搾取」されている実態を、労働法専門家の証言を交えて報じました。スイスではドイツ語圏ヴィンタートゥールやバーゼルの地域紙に掲載されています。
記事は、日本社会に広がる「外国人問題」への不満と、それを利用する政治の動きを背景として説明しています。右派ポピュリズムが台頭し、外国人排斥を掲げる参政党が勢力を伸ばす中、政府はビザの値上げや企業設立要件の厳格化など、排他的な政策を進めています。一方で日本は高齢化が進み、外国人労働力に依存せざるを得ないという矛盾を抱えている、と記事は解説します。
ハーン氏は、技能実習制度(TITP)が「研修」の名を借りた労働力確保の仕組みに過ぎないと指摘します。記事では、ベトナム人女性が縫製工場でほぼ監禁状態に置かれ、雇用主から性行為を強要される事例を紹介しました。
こうした搾取の結果、実習生の失踪が急増している、と記事は続けます。2024年には約6500人が制度から逃れ、非合法な仕事に従事するケースも多い。これが「不正な外国人」という偏見を助長し、さらに排外的な世論を煽る悪循環を生んでいる、と筆者は警告しています。
記事は、改善の兆しとして2027年に実習制度が改革される予定であると伝えています。しかしベトナム人実習生の労働実態に詳しい斉藤善久氏は「研修という名目で労働力を確保するという基本構造は変わらない」と断じています。(出典:ランドボーテ/ドイツ語)
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校閲:宇田薫
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