高市政権1年、火星探査、クレーンゲーム…スイスが報じた日本のニュース
スイスで20日~25日に報じた日本のニュースのうち、今週は①高市早苗政権1年②火星探査③クレーンゲーム、の3件を要約してお届けします。
一部のクレーンゲームの景品がぬいぐるみから卵や洗剤へと変わったことは、長引く物価高に直面する家計のリアルな現状を映し出しています。節約を「遊び」に変え、購買への罪悪感を和らげる工夫は日本ならではのユニークな知恵とも言えます。欧州でもインフレへの不満が高まる中、娯楽と買い物を巧みに融合させたこの消費スタイルは、海外の読者にも興味深く映るのではないでしょうか。
初の女性首相、就任1年 支持率は下がっても「まだ高い」
高市早苗首相が就任から1年を迎えるなか、直近の世論調査で内閣支持率が50%を下回りました。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、東アジア特派員サミュエル・エムヒ記者による解説記事を掲載。日本初の女性首相として華々しく船出した高市政権が直面する支持率低下の背景と、今後の政権運営における課題を多角的に報じています。
支持率低下の最大の要因としてについて、記事は農林水産相の不祥事を挙げています。首相が大臣をあまりに長く留任させすぎたと批判され、その対応が「指導力の欠如として解釈される向きもある」と指摘しました。また、長引く物価高も支持率低下に寄与したといいます。
エムヒ記者はその一方で、高市氏の政権基盤は「歴代の多くの前任者たちと比べれば、依然として高い水準にある」と指摘しています。高市氏が今年はじめ、党の不人気を顧みず衆議院解散に踏み切った決断を、「この大きな賭けは見事に成功した」と評価。個人の高い人気を背に衆院で3分の2以上の議席を獲得した勝利が、依然として強固な政治的土台を支えていると分析しました。
初の女性首相という属性が持つ政治的意味についても分析しています。記事によると、高市氏の性別は、これまでのところむしろ有利に働いてきました。「直近まで日本を率いてきた高齢の男性政治家たちとは対照的だった」ためです。ただし、今後の政権運営を左右するのは、食料品の消費税引き下げなど、具体的な政策課題であると位置付けています。
記事は、国民生活に直結する経済公約も支持率低下の要因として挙げています。生活費高騰や円安など課題は山積し、「高市氏はいまだ重要な公約を実現できていない」と指摘しました。
最後に記事は、外国人労働者の受け入れをめぐる政策にも焦点を当てています。入国のハードル引き上げは一定の公約履行と評価しつつも、「たとえば医療・介護分野のように日本が外国人労働者に依存している以上、受け入れをめぐる問題は燻ぶり続ける」と警鐘を鳴らしました。労働力不足という抗えない現実と理念の乖離が、今後の長期政権維持に向けた重い課題であり続けると結んでいます。
「中堅国家」から宇宙大国へ――火星探査の陰で育つ日本の民間エコシステム
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星衛星探査機「MMX」が打ち上げられました。火星の衛星フォボスの試料を地球に届ける「サンプルリターン」という、成功すれば世界初となるミッションです。スイス・ドイツ語圏の日刊紙「ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)」は、独仏共同開発の探査車を搭載したこの大型ミッションを詳報。日本国内で多種多様な民間企業を巻き込んだ一大産業基盤が急速に芽吹いている実態に迫っています。
記事は、MMX計画を通じて、科学・経済の両面で日本が宇宙開発の主要国として存在感を高めていると指摘します。米欧が台頭してきた同分野で「人知れず膨大な宇宙開発の専門知を築き上げてきた」と指摘。ドイツ側のプロジェクトリーダーを務めたマルクス・グレーベンシュタイン氏は「(米国のNASAや欧州宇宙機関と比べた)ミッションと予算の比率から見れば、JAXAは最も効果的な機関の一つ」と高く評価しています。
さらに同紙は、外からはリスク回避的と見られがちな日本社会の通念とは異なり、開発現場には「失敗に終わるかもしれない事柄にあえて挑戦する勇気がある」と説明。国家主導の宇宙開発計画を取り巻く形で「大企業の参入を伴う活況な宇宙エコシステム」が形成され、重工業だけでなく自動車や精密機器の大手、さらにはスタートアップや保険会社までが重層的に参入している、と続けました。
欧州企業が日本との連携を深める理由として、記事は日本特有の協調的な開発文化を挙げます。課題を真摯に受け止め、連携して解決策を見出していくそのアプローチが、欧州企業には魅力に映るといいます。先のグレーベンシュタイン氏は、計画変更が頻発しがちな米国とは対照的に、一度結んだ約束を確実にやり遂げる「並外れた責任感と信頼性の高さ」が日本の強みだと語っています。
日本のクレーンゲーム、物価高で「遊べるスーパー」に
スイスのオンラインニュースサイト20 Min.のフランス語版は、AFPの配信記事で、物価高が続く日本でクレーンゲームを使って食品や日用品を手に入れようとする人が増えていると報じています。
東京郊外のゲームセンターでは、ぬいぐるみやフィギュアの代わりに、トイレットペーパーや卵、米、洗剤などが景品になっています。記事は、こうした施設が「遊べるスーパーマーケット」のような存在へと変化していると伝えています。
背景にあるのは、家計の節約志向です。消費者行動の専門家は「食料品や日用品への支出は、節約の対象となったために過去5年間、減少し続けている」と説明。「小売業者は買い物に娯楽性を加え、消費者の購買意欲を引き出そうとしている」と読み解きます。ゲームを通じて獲得することで、消費に対する罪悪感が和らぐ効果もあるといいます。
こうした仕組みは、商業施設側にとっても集客策になっています。クレーンゲームで食品などを景品として獲得した客が、夕食に必要なほかの食材を施設内のスーパーで購入する例もあるといいます。記事は、物価高への対応と娯楽を組み合わせたこの傾向が、インフレが落ち着いた後も続く可能性があると結んでいます。
【スイスで報道されたその他のトピック】外部リンク
アムンディ・ジャパンの石原宏美氏「日本の大企業は円安の恩恵を受けている」外部リンク(10/21)
ロシアが「日本は自国のジャーナリストをスパイ活動に利用している」と非難外部リンク(10/21)
インフラ点検ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」外部リンク(10/23)
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スイス人建築家、ピーター・ズントーの優れた建築の数々を、没入感あふれる3D映像で探求したヴィム・ヴェンダース監督の新作ドキュメンタリー「From Inside Out – The Architecture of Peter Zumthor(仮訳:フロム・インサイド・アウト――ピーター・ズントーの建築)」が、今年のベネチア映画祭でプレミア上映されました。スイスインフォは上映後の2人に会い、映画と建築のユニークなコラボレーションについて話を聞きました。記事はこちらです。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は11月3日(火)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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