熟練労働者、「外国人嫌い」、荷物紛失ゼロ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

スイスの主要報道機関が先週(4月29日〜5月5日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。
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今回ご紹介するのは①労働不足の日本 熟練労働者の育成は②バイデン氏、中ロ印と日本は「外国人嫌い」③関西国際空港、30年間手荷物紛失なし、の3本です。
労働不足の日本 熟練労働者の育成は
ドイツ語圏の日刊紙NZZは「労働力不足の先駆者」である日本で、熟練労働者を確保するために国や企業がどんな取り組みを進めているか、静岡大学の熊野善介教授とのインタビューを交えて深掘りしました。
記事はまず、日本の労働力におけるSTEM(自然科学、技術、数学、工学)分野の人材比率は国際的には高くないものの、「工業化が始まった150年前から職業教育の歴史がある」(熊野氏)ため、他のアジア諸国より有利だと指摘しました。
日本政府は2016年以来「Society 5.0」を掲げてSTEM教育に注力しており、「取り組みは徐々に成果を上げている」と評価。専門学校に通う学生数は安定し、一部の大学ではSTEM学部の学生数は増加中。外国人にも職業訓練への道を開いています。
また「日本の職業・STEM教育を魅力的なものにしているのは、日本人がモノづくりと呼ぶもの、つまり物を作ることの長い伝統だ」と強調。大企業での正社員は憧れの的であること、専門学校や高専も卒業生のほぼ全員が就職できることを紹介しました。
数学やプログラミングにも力を注いだ結果、経済協力開発機構(PISA)の実施した2022年版国際学習到達度調査(PISA)で日本は数学と科学でシンガポールに次ぐ2位を達成。「欧米諸国とは対照的に」コロナ禍でも成績が低下せず、むしろ向上したことを称賛しました。
そんな記事が日本の課題として挙げたのは、労働力不足が深刻化し廃業する中小企業が増えていることと、イノベーション力が衰えていることです。後者について、熊野氏は「伝統的な詰め込み教育から発明の促進への転換」が米国に比べ10年遅れていると指摘しました。
自動車整備士のような重労働の人気低下も課題です。NZZは外国人学生向けの専門学校を運営するトヨタや、在日ドイツ商工会議所と共同でドイツモデルに基づくデュアル(二元)システムを取り入れたBMW傘下の三菱ふそうの例を紹介しました。
最後に、STEM分野の女性比率の低さも指摘しました。しかしこれは「好機」でもあり、STEM分野で女性を増やすことで、労働力不足を緩和する余地が他国に比べて大きくなる、と結びました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
バイデン氏、中ロ印と日本は「外国人嫌い」
ジョー・バイデン米大統領が1日、選挙関連のイベントで演説した際、中国やロシア、インドと並べて日本を「外国人嫌い」だと発言。それに対し日本政府が「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」と申し入れたことはスイス各言語圏で報じられました。
フランス語圏の大衆紙ブリックは、バイデン氏の発言を「中国とロシアが米国のライバルであるとすれば、日本とインドに関する彼のコメントは驚くべきものだ」と報道。バイデン氏が岸田文雄首相やインドのナレンドラ・モディ首相を国賓として待遇した事実を紹介しました。
ドイツ語圏のオンラインメディアGMXは、「ここ数カ月間、バイデン氏は失言や取り違えを繰り返してきた。これにより、同氏は大統領としては高齢すぎるという批判が高まっている」と付言しています。(出典:ブリック外部リンク/フランス語、GMX外部リンク/ドイツ語)
関西国際空港、30年間手荷物紛失なし
米CNNが2日、開業30年を迎える関西国際空港ではこれまで荷物の紛失(ロストバゲージ)が一度も発生していないと報道外部リンク。スイスのオンラインメディアbluewin.chのドイツ語・イタリア語版などがこれを取り上げました。
記事は、日本で最も混雑する空港の1つである関空が「他の多くの空港ではほぼ不可能なことをどうやって管理しているのか?」と疑問を呈しました。そして関空の広報担当者がCNNに「特別なことをしてきたとは思わない」と語った言葉を引用し、「スタッフは謙虚だ」と評しました。
また日経アジアを引用して「成功の秘訣は多層システムだ」と紹介。飛行機ごとに2~3人のスタッフが手荷物の数と種類を確認していると伝えました。そしてフライトの遅延や欠航、スタッフ不足といったロストバゲージの原因が「関空に存在しないのかは分からないが、スタッフはスーツケースの扱い方を分かっている」と結びました。(出典:bluewin.ch外部リンク/ドイツ語)
【その他、スイスで報道されたトピック】
- 根室市で軽トラにヒグマが衝突外部リンク(4/29)
- リニア中央新幹線、開業遅れは必至外部リンク(4/30)
- 増加する空き家 外国人が購入外部リンク(5/1)
- 円急騰で広がる介入観測外部リンク(5/2)
- Netflix「シティーハンター」評外部リンク(5/3)
- 円相場を巡る厳しい駆け引き外部リンク(5/4)
- 日本アートを加えたスイス切り絵展覧会外部リンク(5/4)
- 日本のマンホールは機能的な芸術作品外部リンク(5/5)
- 山形・南陽市で山火事外部リンク(5/5)
話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「『気候活動家への団結心』見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁」(記事/日本語)でした。他に「スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も」(記事/日本語)、「エア・インディア、四半世紀ぶりにスイス直行便復活」(記事/英語)も良く読まれました。
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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は5月13日(月)に掲載予定です。
執筆:ムートゥ朋子、校閲:大野瑠衣子

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