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日本社会をアウトサイダーの視線で捉える スイス人写真家

東京の経堂を拠点にアジアを飛び回るサイバート氏 swissinfo.ch

英雑誌TIMEの表紙を飾ったジェンキンズ氏の顔、北朝鮮から逃げ出した、金正日総書記の日本人元コック、ビートたけしからホームレスまでメディアを賑わせる顔をレンズに捕らえる東京在住の写真家、アンドレアス・サイバート氏(36歳)。お得意先のTIMEに「アウトサイダーの視線が好きだ」と言われた。半年間のつもりで来日して8年目になる。

 「僕はアーチストでなく、写真家だから」と説明するサイバート氏の目は鋭い。フリーの写真家としてこれまで働いた、TIME、ニューズ・ウィーク、GEOなど欧州の有名雑誌に掲載された写真を見せてくれた。「日本に対する紋切り型の偏見はまだ残っている。技術の最先端をいく『ハイテク・ジャパン』か原宿ガールの『クレイジー・ジャパン』かどちらかの注文が多い」と嘆く。サイバート氏は日本の影より日常の方が面白いという。「取材する前から『こういうイメージ』と決めてしまっている編集者と働くのは難しい」自分の視野を大切にするのだ。

 写真との出会いは子供の頃。テレビ番組に出てきた編集室に憧れて、そのカメラマンになりたかった。10歳の時、叔父が暗室を作ったのがきっかけで、叔父よりも彼がこもるようになり、趣味として続けた。大学は哲学科に進むが、有名なチューリヒの美術学校HGKZの写真科の10名という狭き門に選考されたのが転機になる。「カメラは人にアプローチする理由になる」。様々な人生の多面を見られるから辞められない。現在のプロジェクトの1つとして、中国の炭鉱を追っている。グローバリゼーションの結果が気になるからだ。

 日本には良い写真家が沢山いるが、ドキュメンタリーや人物像はあまり強くないと思う。人物を撮るにはもちろん、相手のムードを察するのも必要だが何よりも「図々しさが大切」という。日本人のハンディは日本人が礼儀正し過ぎること。「僕の場合は外国人だから、小泉首相だろうが、大会社の社長だろうが、時間をかけて、あれこれ注文つける」。「相手と楽しい時間を過ごすためではなく、あるものを探しているから」粘りが強いのだ。三菱モーターズのCEO、坂根正弘氏をTIMEのために撮った時はクレーン車の小さな模型を彼の肩の上にのせた。「冗談でしょ」と言われたが、それで笑った坂根氏の写真は大評判に。日本人にはできない大胆なことをやりきって、彼特有の視線がカメラに収められるようだ。


swissinfo、 聞き手 屋山明乃(ややまあけの)

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