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想像と現実の狭間 ステレオタイプに関する真実

スイス人はウイリアム・テルの格好に関してはオープンであるようだ Keystone Archive

「スイス人は真面目で伝統にこだる」といった「ステレオタイプのイメージ」は実際とは違うことが49カ国を対象に行なわれたステレオタイプ研究で判明した。そればかりか、スイス人は新しいものに対して大変オープンだという判定になった。

米国バルチモアの国立老化研究所が世界各国の研究者85人と提携して行なった調査結果から、「イタリア人は情熱的で、ドイツ人は厳格、アメリカ人は自己主張が強く、インド人は親切」といった国民性を現す「ステレオタイプのイメージ」は大抵の場合は間違っていることが証明された。

 「典型的なスイス人を説明しろ」と言われれば、まず、思い浮かべるのは時間をきちんと守り、粘り強く、信頼できる人物。しかし、否定的な面としては孤立した、伝統にこだわる保守的な国民をも想像するだろう。

 このような、「ステレオタイプのイメージ」の国民性は本当に存在するのかどうかに焦点をあて、研究を行なったのは米国、バルチモアの国立老化研究所でその調査結果は2005年の10月に米科学雑誌サイエンスにも発表された。

意外なスイス人自己評価

 スイス人の調査に当たったのは二人の心理学者でチューリヒ大学のヴィリバルト・ルーフ教授とローザンヌ大学のジェローム・ロッシエ氏だ。スイスの場合はフランス語圏とドイツ語圏と二つの文化圏に分けて調査が行なわれた。

 「この研究は大変に反響がありました。研究成果が名高い科学雑誌であるサイエンスに載ったこともそうですが、サイエンスが心理学に着目したことも珍しいことです」とルーフ教授。「また、我々の生活で身近な問題で、何々人はどうだといったことを考えさせられたことがあったからでしょう」と説明する。

 研究ではまず、自己評価の段階で自分と身近な人を若者と成人別に性格を分析して評価する。第2段階では「実在の人物ではなく、典型的スイス人というとどういう人を思い浮かべるか」を被験者が答える。

 そして、自己評価とステレオタイプ評価のギャップを測るのが大まかな調査法だ。性格評価では1)精神的な安定性、2)内向的か社交的か、3)新しい経験にオープンか、4)親切か、5)誠実かの5つの指標を基準にして行なわれた。

 さて、「スイス人自己評価」のほうだが、他の国と比べるとスイス人は突出して新しい経験を好み、世界平均より社交的で、世界平均よりも少しだけ誠実という結果が出た。見事に「大変誠実で」というステレオタイプ評価とはズレが生じたことになる。

作り出されるステレオタイプ

 研究ではステレオタイプが実際の国民性と一致したのはポーランドとオーストラリア、ニュージランドのみで、他は全て現実の人物評価とは一致しなかった。

 なお、同研究はステレオタイプが歴史、メディア(戦争映画に出てくる意地悪なドイツ人)、ジョーク(何をやっても鈍いベルン人)などから生まれ、限られた個人経験もそれによって左右されることが分かった。

 ルーフ教授は個人的に経験を通して知る外国人は数が限られていると指摘する。「20歳のスイス人は1000人ほどのスイス人を知っているかもしれないが、ドイツ人なら20人くらい、アメリカ人なら2,3人しか知らないかもしれない」と言う。「それでも、これらの国籍の人がどんなふうだかを知っているような気になるのです。科学的にみて、これらの偏見であるステレオタイプが現実なのかどうかを測ろうとするのは面白い試みです」

 心理学的に言うと、人間はステレオタイプを必要とする。ルーフ教授は「我々は外の世界をコントロールする必要があります。ステレオタイプを作り出すことによって、何を期待し、何を避けて、どのように振舞うべきかを手助けしてくれるのです」

 「外国人嫌いを見てみれば分かります。外国人があまりいない所でもっとも強いのです。日常に移民と接触のある人はそのような偏見はありません」とルーフ教授。これらの民族に対する偏見が人種差別や迫害の言い訳となってきたという。

 スイス人の自己評価だが、ドイツ語圏のスイス人の結果はオーストラリア人やドイツ人の評価と余り変わらず、フランス語圏のスイス人はフランス人の評価と同様のものだった。しかし、5項目のうち4項目でドイツ語圏とフランス語圏の結果は違うものになった。

 ドイツ語圏のスイス人はフランス語圏の人々よりもよりオープンで誠実であり、これに反し、フランス語圏の人々はより感情的で社交的という結果が出た。親切という面では両者は同じで世界平均より少し良かった。


swissinfo、 ドリス・ルッチーニ、屋山明乃(ややまあけの)意訳

– スイス人に行なった調査によると、典型的なスイス人のステレオタイプは内向的、保守的で誠実というのがイメージ。

– しかし、実際のスイス人の性格分析をしてみると、スイス人は世界の平均に比較して大変新しい経験を好み、平均に比べると多少、外交的で誠実であることが判明した。

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