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プールの女性専用エリアからトランス女性が連行 スイスで「安全な空間」をめぐる論争

ベルンのマルツィリ野外プール(写真は男女共用エリア)は、連邦議事堂の真下に位置しており、現在、それ自体が政治的な議論の的となっている
ベルンのマルツィリ野外プール(写真は男女共用エリア)は、連邦議事堂の真下に位置する Keystone / Anthony Anex

スイスの首都ベルンにある人気屋外プールで、トランス女性が女性専用エリアから警察に連れ出される出来事があった。スイスがクィアコミュニティに対応しきれていない現実が浮き彫りになる一方で、女性とトランスジェンダーの権利のどちらを守るべきか、議論が起こっている。

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ベルンのアーレ川沿いに位置する人気の屋外公共プール「マルツィリ(Marzili)」。連邦議会議事堂のすぐ足元にあるこの施設の女性専用エリアで先月、トランスジェンダーの女性が警察官に連行されるという出来事が起きた。

マルツィリの女性専用エリアは、ベルンの女性たちが「パラディースリ(Paradiesli)」——小さな楽園——と呼ぶ場所だ。水着なしで日光浴を楽しめる女性だけの空間であり、男性からの言葉による嫌がらせや視線を気にせずに過ごせる場として親しまれている。

そのパラディースリから、トランス女性が警察官に手錠をかけられ連行された。Tバックの下から男性器が明らかに見えていたとして、他の利用者から苦情が寄せられたことが発端だった。

騒然とした現場、当局はのちに謝罪

プールのスタッフはトランス女性に退場を求めたが、本人は滞在する権利を主張して応じなかった。市が雇用する調停員も事態を収めることができず、警察が呼ばれた。現場は騒然となり、女性警察官1人が負傷。トランス女性は手錠をかけられて連行された。

その後、ベルン当局はミスを認め謝罪した——スイスでは珍しいことだが、理由は明白だった。このプールは規則でトランス女性の利用を明示的に認めており、疑義が生じた場合は公式の法的性別が判断基準になると定めている。つまり、トランス女性がとどまることを主張したのは、規則上正当な行為だった。

政治的に左派寄りのベルン市当局は、今後「パラディースリ」のルールをあらためて周知し、スタッフへの研修も実施する方針を示した。この事件から教訓を引き出したかたちだ。

しかし余波は続く。トランス女性の関係者によれば、今回の警察対応は本人に深刻なトラウマを残した。プールスタッフ、調停員、警察はいずれも評判に傷を負った。そしてスイス全土で激しい議論が巻き起こっている。

女性の権利か、トランスジェンダーの権利か

この議論の核心にあるのは、どちらの原則が優先されるかという問いだ——女性が安全な空間を持つ権利か、それともトランスジェンダーの人々が平等な扱いを受ける権利なのか。

マルツィリでトランス女性に苦情を申し立てた利用者の1人は、自身が性的暴力の被害を経験していると後に証言した。彼女にとって、男性器を目にすることはトラウマの引き金となる。「パラディースリ」は彼女にとっての聖域だ。ただ、こうした事情を持つ人は少数派だろう。多くの女性にとって、この専用エリアで重要なのは「ペニスがないこと」ではなく、静けさと、男性からの接触や視線からの解放だ。

対立する視点

それでも、トランスの人々を特定の空間に受け入れることが、従来の女性の権利と相容れないという見方は根強い。ドイツのフェミニスト、アリス・シュワルツァー氏はその代表的な論者の一人だ。シュワルツァー氏はトランスの権利を支持し、差別に反対する一方で、それが生物学的女性の権利や安全な空間、政治的可視性を犠牲にしてはならないと強調する。

スイスの議論を見渡すと、この立場を支持する意見が多数を占める。主要紙のコメント欄では、女性の安全な空間を守るべきだという声が圧倒的だ。左派リベラル系の独語圏日刊紙ターゲス・アンツァイガーでも、少数派が多数派に規則を押しつけているという批判が複数の読者から寄せられた。

スイスで最も知名度の高いトランス当事者の一人、クリス・ブロニマン氏もインスタグラムでこう書いている。「私たちは今、少数派が多数派に対してどう振る舞うべきかを指図するという不均衡を経験している。女性の感情や羞恥心、安全な空間を踏みにじることで、受容が強まるわけではない」

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もちろん、クィアコミュニティの内外には別の意見もある。ターゲス・アンツァイガーは、政治的立場と世代の間に明確な分断線があると指摘している。

対立を和らげるには

何よりもまず、今回のベルンでの出来事は、スイス社会がトランスの人々との向き合い方についてまだ統一した答えを見つけていないことの証左だ。したがって、女性の安全な空間への権利とトランスの包摂のどちらを優先するかという問い自体、設定が誤っている。

ベルンほどの規模の都市であれば、同じ施設内、あるいは別のプールに別のゾーンを設けて対応すれば、異なるグループのニーズを十分に満たせるはずだ。双方の利益を天秤にかける必要はない。

スイス国内を見渡すと、トランスの人々のアクセスに関するルールは施設ごとに異なる。チューリヒの「フラウエンバーディ(Zürcher Frauenbadi)」は、スタッフが女性と認識できるトランス女性のみを受け入れている。

問題は、多数派も少数派も、個々のグループのニーズを守るためにどれだけの「棲み分け」を受け入れられるかだ。これはイデオロギーではなく、実践的な答えが求められる。

すべてのグループに独自の場所を与えるような政策は、統合ではなく分断を招くという批判もある。しかしそれは乗り越えられない障壁ではない。屋外プールの場合、たとえ主要都市が将来的に異なるグループのためのゾーンを追加したとしても、スイスでは混合プールが圧倒的多数を占め続けるだろう。混合エリアでは水着着用が義務づけられ、性器は見えず、誰もが一緒に泳ぐ。

編集:Balz Rigendinger、英語からの翻訳・校正:宇田薫

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