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「永遠の化学物質」に上限 2024年のスイスの食品法改正で変わるルール

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スイスで2月1日、改正食品法が施行されるのに伴い、様々なルールが変わる。食品を購入する際に知っておくべきことを紹介する。

改正食品法外部リンクは消費者の健康保護を目的に25件の法令変更を含む。一部化学物質の使用制限の厳格化、消費者への透明性向上のほか、家畜福祉に配慮する内容が新たに盛り込まれた。また国内規制を欧州連合(EU)と調和させ、政府の食品ロス削減計画を達成するための変更も行われた。以下は、最も重要な変更点だ。

焼き菓子の原産地表示

ベーカリー、レストラン、小売店は2月から、店内で販売する焼き菓子の原産地表示が義務づけられる。表示は消費者にはっきりと見えるようにしなければならない。

パンやクロワッサンなどの焼き菓子の輸入量は、冷凍品も含め過去10年間で65%増加している。

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「永遠の化学物質」に上限導入

パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は、プラスチック、防水衣料、消火用発泡体などに使用される有機フッ素化合物の総称だ。分解されにくく、最終的に環境や食物連鎖に入り込む。それ故に「永遠の化学物質」と呼ばれる。PFASは胎児・乳児の発育に影響を与え、成人の免疫系にも悪影響を及ぼす可能性がある。

スイス連邦政府はEUと同様、一部食品にPFAS残留値の上限を設定することを決めた。卵、肉、特定種の魚、甲殻類、ムール貝が対象。製造・販売業者は自社製品のPFAS含有量レベルのチェックが義務づけられ、州が履行状況を監督する。

食品ロス対策

スイスでは年間約280万トンの食品廃棄物が出る。住民1人当たり330キログラムだ。政府は2030年までに食品廃棄量を2017年比で半減させる計画だ。スイスの食品廃棄物の約8%は、卸売業と小売業から出ている。

これまでベーカリーやスーパーマーケットでは余剰食品を慈善団体に再分配することは認められていたが、食品安全を確保するための法的な義務事項が存在しなかった。そこで改正法では売れ残り食品の再分配のための法的枠組みが設けられた。アレルゲン表示システムの簡素化など、食品安全要件に若干の余裕も持たせた。

農場での屠殺を容易に

2020年以降、スイスの農家は生きた家畜を食肉処理場ではなく自分の牧草地や農場で屠殺(とさつ)することが認められている。これにより、家畜は住み慣れた環境で最期を過ごすことができ、心理的なストレスも軽減される。

しかし問題はある。衛生上の理由から、殺処分後45分以内に食肉処理場へ運び内臓を取り除かなければならない。そのため、このより人道的な方法を取れるのは食肉処理場近くの農場に限られていた。改正法ではこの期間を倍の90分に増やし、より多くの農場が自分の敷地内で家畜を屠殺できるようにした。

食品安全局は「この方法であれば食品の安全性を保ちつつ、牧草地や農場での動物の殺処分が簡単になる。もっと時間をかけて屠殺することができるからだ」としている。

フォアグラの輸入禁止?

2023年9月、スイス連邦議会はフォアグラの輸入禁止を求める動議を否決した。フォアグラの輸入が禁止されれば、隣国のフランスでフォアグラを買う人が増えるだろうとの理由からだ。その代わり、輸入時の申告を設けることと、フォアグラであることを明確に表示する案に賛成した。

その3カ月後、スイス動物同盟は10万人以上の署名を集め、フォアグラの全面輸入禁止を求める提案を出した。今後国民投票で是非が問われる。

編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:宇田薫、校正:ムートゥ朋子

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