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明日の農業の「あるべき姿」とは

Enten
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世界の飢餓問題をなくすために、国連は食料システムの変革を目指す。だが問題をどう解決すべきかを巡り激しい議論が交わされている。

世界人口の1割が飢餓に苦しむ一方で、全世界で生産される食料の3分の1は廃棄処分されている。現行システムが間違っているのは明らかだが、世界中の全ての人が十分な食料を得られるようにするには、何を変えるべきなのか?国連はその道筋を探るため、初めてサミットを開く。

増え続ける世界人口を気候変動の下で養っていくには、食料の生産から加工、輸送、消費までの食料システム全体を変えなければならない。国連はその話し合いの場として、2021年9月23日に米ニューヨークで国連食料システムサミット外部リンクを開催する。

アジアやアフリカ、ラテンアメリカなどの国々に広がる飢餓は、戦争や自然災害、現地の貧弱なガバナンスだけが原因ではない。ドイツのNGO「世界飢餓援助機構外部リンク」によると、不公平な貿易協定や、欧米の農業補助金といった世界的な不公平も飢餓や栄養失調を助長している。つまりこれは、農業補助金や自由貿易協定を結ぶスイスとも大きく関わる問題だ。

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オーストリアの畑で顔をのぞかせる鹿 Keystone / Helmut Fohringer

スイスの開発協力財団、スイスエイド外部リンクのイヴァン・シュルツ氏は、「今日の食料システムは一連の問題を抱えている」と語る。まず小規模農家が国際的な種苗会社に依存している点。輸出用の作物を栽培するプランテーションが広大な土地を占領するため、地元住民の食料が十分に生産できない点。そして作物は地球の果てまで輸送されるものの、結局そこで大部分が無駄にされている問題。他にも数え出したらきりがない。

また、気候変動の影響で収穫量が減少すれば、飢餓の問題はますます悪化するだろう。同時に地球の南半球の人口は急速に増え続けている。これはより多くの人がより少ない食料で生きていかなくてはならないことを意味する。

問題は「どうやって」解決するのか

スイスは原則として食料システムの変革に意欲的だ外部リンク。連邦政府のピエール・アラン・エルチンガー報道官はswissinfo.chの問い合わせに対し、「今日、システムを変える必要性があるという点で関係者の意見は一致している。それは経済面に限らず、社会的・環境的な観点においてもだ」と回答した。

だが「どうやって」という具体的な解決策を巡り、NGOや政府、利害関係者の間では激しい議論が交わされている。生態学を農業に取り入れた「アグロエコロジー」や小規模農家の競争力強化に解決策を見出す人がいる一方で、公民連携の活性化や、遺伝子組み換えによる緑の革命をアピールする人もいる。

本当に役に立つのは何か?

バーゼルに本拠を構える農薬業界の世界最大手シンジェンタグループ(中国化工集団傘下)は、より優れた種子や肥料、農薬のおかげで、食料の生産量は増えていると主張する。シンジェンタの広報担当者ベアト・ヴェルダー氏はswissinfo.chの問い合わせに対し、「私たちは狭い土地でより多くの食料を収穫し、世界の全人口に十分な食料を確保できるよう農家を支援している」と述べた。

それに対し、スイスエイドやパブリックアイ、「世界にパンを(Bread for the World)外部リンク」、その他多くのNGOは見解が異なり、農産物の生産量は既に足りており、不平等が飢餓の原因だと主張する。そして環境や社会に優しいアグロエコロジー栽培を実践できるよう、南半球の小規模農家を支援すべきだと指摘する。スイスエイドはさらに、南半球で生産されたアグロエコロジー製品を世界貿易機関(WTO)の枠内で税的に優遇することや、ターゲットを絞った補助金を求めている。

だが外交政策に詳しい国民議会(下院)のアンドレアス・エビ議長(スイス国民党=SVP/UDC)は、WTOの枠内での優遇措置は事実上不可能という見解だ。ただアグロエコロジーを否定するわけではなく、「クリスパー(CRISPR)などの近代的な育種法も同様に視野に入れるべきだ」と指摘する。CRISPRとは、「遺伝子のハサミ」と呼ばれるゲノム編集技術で不要な情報を取り除き、好みの要素だけを持った品種を生み出すプロセスだ。

ビジネス系シンクタンク「アヴニール・スイス」のパトリック・デュムラー氏も、NGOが求める南半球の製品への補助金には懐疑的で、「孤立主義や保護主義は現地における製品価格の上昇につながり、貧困削減には逆効果だ」と言う。このようなアプローチは地元の農家にはほとんどメリットがなく、スイスがその悪い例だという。「孤立政策で生じる利ざやはバリューチェーンの前後を潤すだけで、農家には行き渡らない」。そして飢餓や貧困と闘うには、できるだけハードルのない国際貿易システムが必要だと指摘する。

同氏はむしろ、植物の遺伝子工学により大きな可能性があると考えている。この技術を利用すれば、農薬を減らし、少ない水でも栽培できる品種を開発できるかもしれない。また収穫後の不適切な保管方法で損失する農作物を減らすことも有効だという。「これに関しては、コンツェルンなど貿易相手のノウハウが役立つ」

あるいは、食肉の生産拠点を外国に移すことも考えられる。「なぜスイスは、毎年何千トンもの畜産飼料を外国から輸入しなければならないのか?」。開発途上国や新興国は、飼料ではなく直接食肉を生産して輸出すればよい。そうすれば現地農家の収入は改善し、飼料の代わりに食肉だけを輸送するので輸送コストも減らせると同氏は説明する。

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Keystone / Bernd Wüstneck

南半球からの声

スイスは国連サミットに先立ち、アフリカやアジア、ラテンアメリカの関係者らと対談外部リンクを行った。その際、土地投資の透明性を高め、持続可能な製品を優遇する税制措置を求める声が出た。

また、食品の価値や環境・社会への影響に関する消費者の意識を高める必要性が指摘された。そして食品の真の価値を価格に反映し、農家への報酬を改善するべきだとした。

他にも、世界の貿易ルールを途上国の小規模農家に有利なように改めることを望む声も上がった。また、現行の国際的な認証規格が現地の製品にとって不利な点が指摘され、製品が自国用か輸出用かに応じ、異なるルールを適用すべきだという提言もあった。

スイスと関係者らの対談で最も印象的だったのは、欧米のNGOが行政と民間の連携を厳しく批判したのに対し、南半球の関係者は好意的だった点だ。また、補助金について参加者の意見が分かれたことも興味深い。補助金は市場の歪みや価格の不公平を助長するという意見がある一方で、環境に優しい農業を推進する正当な手段だとする意見も見受けられた。

農業分野における補助金の大半が価格を歪め、環境的・社会的に有害であるとする報告書外部リンクが、最近複数の国連機関により発表された。関税や補助金は農業コンツェルンと比べ小規模農家を不利な立場に置き、今日の補助金のあり方がかえって飢餓を招き、環境を破壊するという。

例えば世界中で最も多く補助金を受けている農作物は、よりによって気候への悪影響が最も大きい牛肉、牛乳、米だ。これは主に富裕国が当てはまるが、発展途上国でも消費が増加しているという。

そのため、富裕国は有害な補助金を削減し、貧困国は競争を歪める措置を最小限に抑えるべきだと国連機関は推奨する。貧しい消費者のために価格を人為的に低く抑えることは目的にそぐわない。なぜならその貧しい消費者が、自ら小規模農家であるケースが多いからだ。

(独語からの翻訳・シュミット一恵)

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