日産、スイス軍…スイスのメディアが報じた日本のニュース

スイスの主要報道機関が先週(5月12~18日)伝えた日本関連のニュースから、①日産・エスピノーサ氏の再建計画②「スイス軍は日本を模範にできる」、の2件を要約して紹介します。
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日産・エスピノーサ氏の再建計画
日産自動車は13日、経営の立て直しに向けた大規模なリストラ計画を発表しました。2027年度までにグループ全体で2万人を削減し、車両の生産工場も17カ所から10カ所に減らします。スイスではドイツ語圏大手紙NZZが詳しく報じています。
記事は、4月に就任したイヴァン・エスピノーサ最高経営責任者(CEO)が決めた再建策「Re:Nissan」を「日本では例を見ない抜本的な縮小計画」と評します。工場の閉鎖で生産能力を400万台から250万台に減らすのは「長年の危機を乗り越えて長期的な収益性を回復する」狙いがあると説明しました。
同日発表した2025年3月期の決算は6708億円の最終赤字と、仏ルノーに救済買収される直前の1999年度(6843億円)に並ぶ大損失を記録しました。記事は、「今回は1999年当時よりも大きな挑戦」だとして、ドナルド・トランプ政権の課す25%の自動車関税が、メキシコでの生産台数が多い日産に大きな追加コストをもたらすと解説しています。
「さらに、日産は今回、支払能力を持つ救世主を欠いている」。ルノーとの提携関係は縮小し、ホンダとの合併交渉は破談。エスピノーサ氏は自力で会社を再編成する必要があり、購買や開発の合理化にも着手する方針だと伝えました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
「スイス軍は日本を模範にできる」

スイスの複合メディアCH-Media系の複数の地方紙が12日、スイス軍が長距離巡航ミサイルの購入を検討していると報じ、大きな話題を呼びました。系列のオンラインメディアwatson.chフランス語版がその続報としてインタビューした軍事専門家のアレクサンドル・ヴォートラヴェール氏は、中立国スイスが長射程軍備を進める根拠として、日本が手本になるとの見解を示しました。
CH-Media外部リンクの12日の報道によると、スイス軍が購入を検討しているのは米ロッキード・マーティン社製巡航ミサイル「JASSM-ER(AGM-158B-2)」。米国製戦闘機F-35から発射し、飛距離は900㎞以上。米国、イスラエル、オーストラリアが保有し、日本やポーランド、オランダが購入を決めています。スイスはこれまで国境内の防衛に徹してきましたが、JASSM-ERを配備すればロンドンやハンブルク、バルセロナ、プラハ、ブダペスト、ベオグラードが射程に入るといいます。
ヴォートラヴェール氏はJASSM-ER配備の根拠を説明するため、第1に今月7~10日に生じたインド・パキスタンの軍事衝突を挙げました。空中戦で投入された計70~120機の戦闘機は、互いに国境の手前数十㎞から相手国の領空にある敵機を攻撃していたことから、「スイス国境を越えたときにのみ自衛すべきだと考えるのはもはや現実的ではなく、ましてや不合理」だと指摘しました。
第2の根拠としてヴォートラヴェール氏が挙げたのが日本です。第二次世界大戦後に軍隊を放棄した日本は安全保障政策を変更し、射程1500㎞以上の巡航ミサイルを1000発以上取得する計画だと説明したうえで、「日本が提示する(長距離ミサイル保有の)正当性は、スイスにとって興味深い」とみています。
ヴォートラヴェール氏は、「日本は北朝鮮や中国本土から飛んでくる長距離兵器が脅威であると主張している。先制攻撃があった場合に報復する能力を示すことで抑止する必要がある」と説明したうえで、「この議論は、1815年の『武装中立』という(スイスの)当初の原則を思い出させるものでもある」と語りました。
ヴォートラヴェール氏の理論には読者から反論コメント外部リンクが寄せられています。「憲法第9条で軍隊を放棄したはずの日本のように、スイスも偽善者になるべきなのだろうか?」。そうだとすれば、スイス領土外での「予防的」軍事作戦は中立に違反しないのか?いずれにしろ、「日本でもスイスでも法律や国民は軍事同盟への統合は望んでいない」、と主張しました。(出典:watson.ch外部リンク/フランス語)
【スイスで報道されたその他のトピック】
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「CO₂ 回収・除去のスイス新興企業クライムワークスが人員削減へ」(記事/日本語)でした。他に「ルツェルンのラフマニノフ別邸の庭園が一般公開に」(記事/日本語)、「14 歳女子が少年を殺害」(記事/英語)も良く読まれました。
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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は5月26日(月)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子

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