無効判決、デザイナーベイビー…スイスのメディアが報じたアメリカのニュース
スイスの主要メディアが2月19日~25日に報じたアメリカ関連ニュースから①米最高裁、相互関税に無効判決②百寿スイス人銀行家が見るアメリカ③シリコンバレーのデザイナーベビー、の3件を要約して紹介します。
100歳を迎えた元スイス人銀行家、イヴ・オルトラマーレ氏が25歳で初めてアメリカを訪れた時、ドナルド・トランプ氏はまだ幼児でした。オルトラマーレ氏は今、かつて愛したアメリカの今を憂慮しています。トランプ氏が大統領として3期目を務めることは「非現実的ではない」と語っています。
米最高裁、相互関税に無効判決
米国最高裁判所が20日、ドナルド・トランプ大統領の相互関税に無効判決を下したことに、スイスメディアは当然ながら歓迎の意を表しました。民主主義の勝利だと評価したものの、世界経済の不確実性が突然消えるわけではないと指摘しています。
判決の数時間後、フランス語圏の日刊紙ル・タンは「ドナルド・トランプ氏にとって、これは壊滅的な打撃だ。中間選挙の9カ月前というタイミングでは避けたかったであろうマグニチュード9の地震だ」と報じました。
「トランプ氏は、最高裁の否定的な判決は混乱を招くと警告していた。おそらくそうなるだろう。しかし、最高裁は脅迫に屈しなかった。最高裁判決は、トランプ政権が民主主義の根底にある原則を無視していることをまざまざと突きつけた。権威主義的な傾向をもはや隠さないホワイトハウスの住人による、大統領権力の驚異的な拡大にとって、これは大きな打撃となる」
ル・タンは、最高裁にとって三権分立の確保は信頼性の問題だったと指摘しました。「事実上、これは議会で多数派を占める共和党が放棄した特権を議会に返還することになる」
これで関税はなくなるのか、既に支払った関税は返還されるのか。スイスの新聞各紙はその答えを敢えて予測しませんでしたが、過度に興奮しないようにくぎを刺しています。
ドイツ語圏の大手紙NZZは「世界貿易が以前の状態に戻ると期待するのは甘すぎるだろう。より現実的なのは、民主党が将来政権に復帰した場合、関税の相当部分を維持するだろうということだ」とみています。「アメリカの貿易相手国は、関税がすぐに撤廃されるわけではないという事実に備えなければならない。しかし少なくとも、彼らは今、アメリカがトランプ政権下であっても、活力ある民主主義国家であり続けることを知っている」
チューリヒの日刊紙ターゲス・アンツァイガーも同様の見解を示しました。「多くの未解決の疑問があるにもかかわらず、最高裁の判決は極めて重要だ。これまで、(最高裁)判事の大多数は様々な問題でトランプ氏を支持してきた。しかし今、彼らは明らかに、さらには大統領にとってとりわけ重要な問題に関して、トランプ氏に反対の立場をとっている」
同紙はさらに「これはアメリカにとっての希望の兆しだ」と結論づけています。「広範囲にわたる譲歩を伴う合意を準備していたすべての国にとって、今回の判決は教訓となるはずだ。法の支配もまた、それを信じることによって守られる。もしスイスを含む各国が、トランプ大統領の疑わしい関税政策に団結し、個別に合意交渉するのではなく、法的手段を取っていたならば、今日、彼らは勝利の側にいただろう」(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、NZZ外部リンク、ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
百寿スイス人銀行家が見るアメリカ
スイスのプライベートバンク、ロンバール・オディエのパートナーだったイヴ・オルトラマール氏は、100歳という人生で様々なことを経験してきました。ル・タンのインタビューで、ドナルド・トランプ氏や、若い頃に愛したスイスに対する懸念について語りました。
オルトラマーレ氏は25歳でジュネーブを離れてアメリカに渡り、金融の世界に足を踏み入れました。そんなオルトラマーレ氏は、現在のアメリカについて必ずしも楽観的ではありません。「まだ独裁国家ではない。しかし、アメリカが神政政治のような方向に傾くリスクはある」
「大統領に反論できる力を持つ勢力が必要だ」と同氏は続けます。「トランプ氏のシステムは驚くべきもので、あまりにも速く動いているため、立法府でさえ追いつけないほど。また立法府には法を執行するための警察機関がないため、法律は脆弱だ。これは全く新しい状況であり、国の利益が全く考慮されていないという点で非常に深刻な問題だ」
オルトラマーレ氏は国家と法律が依然として神権政治への流れを阻止する役割を果たしているかどうか、疑いの目を向けています。「アメリカではもはやそのような状況ではない。法律はもはや尊重されず、国家は挑戦を受けている。テクノロジーに至っては開発が速すぎて、法整備をする時間がない。この加速は、そうしたテクノロジーを支配する者たちに並外れた力を与えている。彼らは罰せられたり、抑制されたりすることがないからだ」
「これまで、政府は法律を遵守し、国民がそれをチェックしてきた。しかし今日のアメリカでは、法律の適用は無作為だ。これは非常に新しい現象だ。また最高裁はこれまで、ひどく沈黙を守ってきた」
アメリカでは権力分立が危機に瀕しているのでしょうか?オルトラマーレ氏の答えは「間違いなくその通りだ。今年(11月)の中間選挙でその兆候が見られるだろう。トランプ氏が危機に瀕しているとは全く考えていない。彼が再選される可能性は非現実的ではない」
ル・タンのインタビューはさらに、2012年にジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)に宗教と政治の教授職を創設したオルトラマーレ氏の精神論や、人工知能に関する懸念、民主主義の脆弱性、そして長生きの秘訣など、さまざまな論点に話が及びました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)
シリコンバレーのデザイナーベビー
NZZは週刊科学ポッドキャスト「NZZ Quantensprung」で、「シリコンバレーのデザイナーベビー」を特集しました。遺伝性疾患の撲滅と知能の向上を目指す新興企業を取り上げています。
「遺伝子操作はテック界の億万長者たちの関心を惹きつけている。彼らは受精卵のDNAに介入する計画を持つ企業に資金を提供。たった一つの命だけでなく、何世代にもわたる未来を変える可能性がある」
ポッドキャストは、カナダ人起業家キャシー・タイ氏にインタビュー。「アメリカのバイオテクノロジー界の天才」と称されるタイ氏は18歳で大学を中退し、遺伝子検査会社を設立しました。会社第1号を設立してから10年が経った今、遺伝子組み換えによって赤ちゃんの遺伝性疾患を出生前に予防し、未来の世代に根絶することを目指しています。
タイ氏は「医療分野全体を変えたい」と語りました。「医療は極めて時代遅れで、患者の役に立っていない。人が生まれる前に病気を治療するより良い方法があると思う」
これに対してポッドキャストは、リスクが高いことを指摘しています。ハンチントン病、鎌状赤血球貧血、遺伝性癌など、7000種類以上の遺伝性疾患が知られており、科学者たちはそれらを克服すべく研究に励んでいます。「しかし新たなバイオテクノロジーツールは、アメリカの出生促進論者の関心も呼び起こしている。彼らはより多くの、そして彼らの見解では最適化された赤ちゃんを求める運動を行っている」
ポッドキャストでは、シリコンバレーの億万長者たちの支援を受ける複数のアメリカのスタートアップ企業が、ヒト胚のDNAを操作し、いわゆるデザイナーベビーを作り出し、未来の世代の知能を向上させる計画を立てていることを紹介しました。「しかし、何かがうまくいかなければ、その失敗はすべての子孫に受け継がれてしまう」(出典:NZZポッドキャスト外部リンク/ドイツ語)
次回「スイスのメディアが報じた米国のニュース」日本語版は3月5日(木)配信予定です。
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英語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子
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