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郵便投票の制限、米加貿易戦争、ノーベル賞科学者の所感…スイスのメディアが報じた米国のニュース

2014年、スイスのロカルノで開催された「ムーン・アンド・スターズ」音楽祭で、ドリー・パートンがパフォーマンスを披露した
2014年、スイスのロカルノで開催された「ムーン・アンド・スターズ」音楽祭で、ドリー・パートンがパフォーマンスを披露した keystone

スイスで20日から26日までに報じられた米国関連のニュースのうち、今回は①郵便投票の制限②米加貿易戦争③ノーベル賞科学者の所感、の3件を要約してお伝えします。

ドリー・パートンが28歳の誕生日を祝っていたその日――おそらくチャートを急上昇していた「ジョリーン」に杯を上げていた頃――大西洋の向こうのロンドンで私(筆者)は生まれた。だが誕生日が同じという以外に、ドリーと私(筆者)には共通点はほとんどない。80歳で死去した音楽家で俳優、慈善家でもある彼女について、あるスイス紙は25日、「彼女はアメリカン・ドリームを書き換えた」と伝えた。また別のスイス紙は「彼女はアメリカ全体を一つにできた」と書いた。

ドナルド・トランプ氏の反対派は、郵便投票を制限しようとするトランプ氏の動きを、選挙結果に影響を与えようとする試みだと批判した
ドナルド・トランプ氏の反対派は、郵便投票を制限しようとするトランプ氏の動きを、選挙結果に影響を与えようとする試みだと批判した Copyright 2020 The Associated Press. All Rights Reserved

米連邦最高裁は、ドナルド・トランプ米大統領が郵便投票を制限する計画を進めることを認めた。これについてあるスイス紙は「混乱への懸念が高まっている」と報じた。

「米国では中間選挙を約2カ月後に控える。国は[…]ルールを巡って争っている」と、独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは25日報じた。「トランプ氏は3月に新たなルールを発した」。同紙によると、トランプ氏は大統領令で、郵便公社が郵便投票用紙を送付できるのは有権者名簿に記載された人に限ると定めた。この名簿は連邦当局が作成するという。

「トランプ氏は選挙の安全性向上を理由に挙げた」と同紙は続ける。「ジョー・バイデン氏に敗れて以来、トランプ氏は『不正選挙』を口にしている。過去に多数の外国人が選挙に参加し結果を歪めたと主張しているが、これは個別の事例でしか立証されていない。適格でない有権者が大量に投票したことを示す証拠はない」

トランプ氏の反対派は、郵便投票を制限する同氏の試みを、投票結果を操作する企てだとして批判している。「民主党支持層は共和党支持層よりも郵便で投票する傾向が強いためだ」と同紙は述べた。

独語圏のスイス公共放送(SRF)は25日、民主党主導の23州と首都ワシントンD.C.の連合が大統領令の差し止めを求めて訴訟を起こしたと伝えた。原告側は「憲法の下で有権者資格のルールは各州が責任を負うと主張している。ボストンの連邦地裁の女性判事は6月、彼らの主張を認めた。判事は、トランプ氏には連邦選挙の運営を変更する権限はないと結論づけた」と報じた。「また各州は、選挙直前にルールを変更すれば、多くの人が投票権を行使できなくなる恐れがあると警告した」

連邦最高裁は24日、大統領令の適法性自体には判断を下さず、提訴した州にはこれに異議を唱える法的地位(原告適格)がないと判断した。ターゲス・アンツァイガーは、市民権団体は政府が移民税関執行局(ICE)の職員を投票所の外に配置し、移民系の米国市民を暗に威嚇して投票を思いとどまらせるのではないかと恐れていると指摘した。「選挙が滞りなく進むと見る人はほとんどいない。ましてや結果がどうであれ、トランプ氏が不満を言わずに結果を受け入れるとは誰も期待していない」。

2025年10月、大統領執務室で朗らかな表情を見せるマーク・カーニー氏とドナルド・トランプ氏
2025年10月、大統領執務室で朗らかな表情を見せるマーク・カーニー氏とドナルド・トランプ氏 Keystone

「カナダのマーク・カーニー首相は狂ってはいない」と報じたのはターゲス・アンツァイガー(24日)だ。エスカレートする貿易戦争において、トランプ氏に対抗するという「正しいことをしている」とし、これは他国にとっても解決策になり得ると付け加えた。

ウォール・ストリート・ジャーナルは24日、「米国から距離を置いて自国が繁栄できると考えているとしたら、カーニー氏は『気が触れている』」と論評した。これに対しターゲス・アンツァイガーは、カーニー氏が米国の合意条件を拒否し、報復関税を明確に表明したのは確かにリスクを取ったのだと応じた。「米国はカナダよりも大きな損害を与えられる。これは大半の国に当てはまり、これを根拠にトランプ氏は世界を脅している」と述べた。

しかし米国はカナダに対して「とりわけ厚かましい」対応をしていると同紙は続ける。「2期目の初めからトランプ氏はこの国を併合したいと発言してきた。カーニー氏はかなり難しいことをしている。超大国に立ち向かっているのだ」

世論調査によれば、カナダ人の3分の2が対米強硬姿勢を支持していると同紙は続けた。「夏休みをカナダで過ごした米国人は、米国製品のボイコットがいかに一貫してしかも陽気に行われているかに感心していると語っている」とした。

「勝つのは必ずしも強い側ではなく、決意の固い側だ。加えて、2期目のトランプ氏のやり方は、彼の条件を飲んでも平穏は保証されないということだ。だからカーニー氏は狂ってはいない。彼はトランプ氏に対して別の対抗策があるのだと世界に示している」

NZZは24日、トランプ氏の強硬路線がカーニー氏に選択肢を与えなかったと分析した。カナダは屈服するくらいなら苦難を選ぶ、とし、カーニー氏はワシントンとの悪い合意より合意なしを選んだ、と論じた。「その過程で彼は大きな経済リスクを取っている。しかしトランプ氏に対する抵抗のリーダーとして、他の政治的選択肢はない」

NZZは、カナダが輸出の約70%を米国に向ける一方、米国の対カナダ輸出は全体の約15%にとどまる点を指摘した。カーニー氏は、米国が鉄鋼、アルミ、自動車で最大50%に及ぶ輸入関税を「大幅に」引き下げるのであれば、カナダは報復関税を撤回する用意があると述べた。しかし、カナダは「主権」や「フランス語の保護」を譲る用意はなかった。カーニー氏によれば、米政府はケベック州でのフランス語への公的支援を削減することなどをカナダ側に求めたという。このためカーニー氏は先週、交渉担当者に通商協議から退席するよう指示した。

「スイスを含む他国は、この先の動向を注視するだろう」とターゲス・アンツァイガーは結んだ。「ダボスの世界経済フォーラムで注目を集めたカーニー氏の演説の言葉を借りれば、米国はもはや安定の保証人ではない。中堅国は生き残るために連帯しなければならない。今こそその好機だ」

2002年、ノーベル化学賞を受けたクルト・ヴィートリヒ氏
2002年、ノーベル化学賞を受けたクルト・ヴィートリヒ氏 Keystone

スイスのノーベル賞受賞者クルト・ヴュートリヒ氏は、ある分野では中国が米国を追い越す可能性が高いと、NZZのインタビューで語った。

87歳のヴュートリヒ氏は、核磁気共鳴(NMR)分光法を用い溶液中のタンパク質の立体構造を決定する手法を確立した功績を称えられ、2002年のノーベル化学賞を受賞した。長年にわたり、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と米カリフォルニアのスクリプス研究所で並行して研究を行ってきた。2013年以降は、中国の上海科技大学に自身の研究グループも持つ。

「バイオメディカル研究では、中国は米国や他国との差を縮めている」とヴュートリヒ氏は語った。「だが産業でも驚くべき進歩を遂げている。例えばがん治療だ。中国発の新しいがん治療薬で、最上位に肩を並べるものがある。足元の最大の課題は、中国企業が中国人患者集団で薬を試験していることだ。次の段階は、薬の治験に非中国系の集団も用いることになるだろう」

NZZは、学術出版社シュプリンガー・ネイチャーが作成するランキング「ネイチャー・インデックス」によれば、中国はすでに多くの専門分野で世界をリードしていると指摘した。トップ10大学のうち8校が中国勢だ。中国はすでに米国を追い越したのか。

「その点は割り引いて考えるべきだ。あのインデックスはネイチャー系のジャーナルに掲載された研究しか考慮しない」とヴュートリヒ氏は答えた。「しかもそれらのジャーナルは中国からの広告で多額の収益を得ている。それでも、材料科学のような分野では中国はすでに米国と肩を並べているのは事実だ。化学では中国は実際に米国を上回っている。生物学とライフサイエンスでも、中国は非常に速いペースで追い上げている」

NZZは、経済協力開発機構(OECD)の報告によれば、購買力平価(PPP)で調整した中国の研究開発費は2024年、初めて米国を上回ったと述べた。近い将来、中国は科学大国として米国を追い越すのか。

「私は予測より歴史的事実の分析の方が得意だ」とヴュートリヒ氏は言う。「だが2026年から2030年の新たな5カ年計画があり、この計画では研究開発への資金が劇的に増やされている。数十億ドル規模だ。ただし、その大半は少数の巨大プロジェクトに投じられている。したがって、特定の領域では中国が米国を追い越す可能性が高い」

次回の「スイスのメディアが報じた米国のニュース」は9月3日(木)に配信します。

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英語からの翻訳・校正:宇田薫

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