スイスの視点を10言語で

グロテスクと風刺画の巨匠フリードリヒ・デュレンマット

「我々は今、グロテスクと風刺画の時代に生きている」。スイスを代表する作家フリードリヒ・デュレンマットはこう語った。執筆に収まらなかったデュレンマットの才能が、ヌーシャテルにあるデュレンマットセンターで展示されている。 

「人間の暮らし方と、本来可能な生き方とのギャップはますます滑稽になっている。我々は今、グロテスクと風刺画の時代に生きている」。フリードリヒ・デュレンマットが面白おかしく失望してみせたこの言葉は、やがて1つの作品に結実した。「老貴婦人の訪問」が世界中でヒットし、グロテスクの巨匠と呼ばれるようになった。 

だがそれを作家として表現すべきかどうかは、必ずしも自明のことではなかった。作家としてキャリアを歩む前、デュレンマットは父親にこう手紙を書いたことがある。「絵を描いた方がいいのか、文を書いた方がいいのか。どちらもやりたい気持ちはある」 

作家になると決めた後も、夜はペンを筆に持ち替えた。それは瞑想にふけるのにちょうどよかった。考えるのではなく目で見ることができる――デュレンマットはこう語っていた。だが日常的に落書きをすることもあった。講義でメモを取る代わりに絵を描いたり、レストランで他の客を絵で喜ばせたりした。 

ヌーシャテルのデュレンマットセンターでは、こうして生み出されたスケッチの展示会を5月15日まで開催中だ。 

(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部