The Swiss voice in the world since 1935

スイス、失業対策を強化 派遣社員も対象に

Piggy bank
失業や企業の破綻を防ぐために、スイス連邦政府はさまざまな補償や融資策を打ち出している Keystone / Gaetan Bally

スイス連邦政府が新型コロナ危機を受けた経済・金融支援を拡充している。8日は失業を防ぐための操業短縮制度の対象拡大や手続きの簡素化を発表した。無利子融資策も倍増。一方、債務取り立て手続きの留保は16日までとし、延長しないと決めた。

ギー・パルムラン経済相は8日の記者会見で「この国の次の世代が苦しまないように、さまざまな経済主体と共に経済を守らなければならない」と述べた。3月の失業率は2.9%と、2018年2月(3.1%)以来約2年ぶりの高さだった。経済相はコロナ危機で「7%に達する可能性がある」とし、「人々が働き続けられるよう、あらゆる策を講じる」と強調した。

操業短縮制度の対象を拡大する。これまでは仕事量が2割以上減った従業員が対象だったが、6カ月以上同じ企業で働いていれば誰でも利用できるようにする。これにより、国内20万人の派遣社員が解雇されるのを防ぐ。制度の利用者はこれまでに約150万人と、全労働力の3割に達している。

同制度を利用して減らした労働時間を、他の企業での労働に充てた場合も、補償金は減額しない。医療や農業、物流などで緊急に増員が必要になっている部門に、労働時間の減った労働者が移りやすくする。会計手続きを簡単にして、賃金の支払いがスムーズに済むようにする狙いもある。

また労働時間が85%以上減った場合は、補償金の受給期間の上限(4カ月)をなくす。

シモネッタ・ソマルーガ大統領は8日、航空会社の経営を下支えする方針も示した。スイスの空港では新型コロナの影響で95%以上減便。対象はスイス・インターナショナル・エアラインズと傘下のエーデルワイス航空、イージージェット・スイス、スカイガイド、3カ所の空港とその関連会社。しかし、具体的な支援方法は検討中だ。

一方、タクシー運転手など営業禁止の直接の対象ではない業種への補償の創設は見送った。業績保険との兼ね合いや不正利用の防止策など、検討を続ける。

また営業を禁止された商業施設が賃料を払えなくなっている問題については、「借り主と貸し主との間で合意が必要だ」(パルムラン氏)として、政府による裁定を見送った。今秋にも結論を出す。

資金繰り支援は倍増

政府は金融支援も拡充している。3日に無利子の緊急融資に対する政府保証枠を、これまでの200億フランから400億フランに増やした。2日までに7万5千件、総額143億フランの融資が実効され「まだまだ融資の需要があり、申請が増え続けている」(ウエリ・マウラー財務相)ことを受けた。

緊急融資制度は50万フランまで無利子で、政府の100%保証を受けられる。50万フラン超2000万フランまでは0.5%、80%政府保証となる。融資額は企業収益の1割が上限で、5年間は返済の義務がない。

マウラー氏はこれまで目立った不正利用はないとしつつ、不正行為を防ぐための規則や手続きを強化する方針を示した。不当なローン申請や重複申請を選別するための中央組織を設ける。融資枠を水増ししていないか、税務記録を精査する。

虚偽申請に対して、財務省は企業だけでなく会社の取締役を起訴するために刑事制裁の強化を検討している。

カリン・ケラー・ズッター司法・警察相は9日、債務取り立て手続きの禁止と民事・行政訴訟の停止措置を4月16日以降は延長しないと発表外部リンクした。企業破産を防ぐために最適な方法ではないとの判断。連邦司法省は16日までに別の破綻回避策を検討する。

外部リンクへ移動
サブスクリプションを登録できませんでした。 再試行する。
仮登録をしました。 次に、メールアドレスの認証手続きを行ってください。 ご入力いただいたメールアドレスに自動配信メールを送信しました。自動配信メールに記載されているリンクをクリックして、ニュースレター配信手続きを完了させてください。
今週のトップ記事

各種テーマに関するswissinfo.chのベスト記事を受信箱に直接お届け。

毎週

SRG SSRのプライバシーポリシーでは、データ処理に関する追加情報を提供しています。 

おすすめの記事
Man walks past shuttered store

おすすめの記事

スイスの4.7兆円経済対策に不満の声

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府がまとめた420億フラン(約4兆7千億円)の緊急経済対策は、新型コロナウイルスに苦しむスイス経済の救済には不十分だ、との見方が経済界やエコノミストの間で広がっている。年末までに3倍の額の財政出動が必要だとの試算もある。

もっと読む スイスの4.7兆円経済対策に不満の声

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

コーデリア・ベール

おすすめの記事

TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

このコンテンツが公開されたのは、 米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。

もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
卵の棚

おすすめの記事

ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。

もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
スイスのカリン・ケラー・ズッター大統領

おすすめの記事

スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、米国の追加関税について、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談した。

もっと読む スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
スイスのケラー・ズッター大統領とパルムラン経済相

おすすめの記事

スイス、トランプ関税に報復せず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は3日、ドナルド・トランプ政権が同日発表した関税に対し、当面は対抗措置を取らないと表明した。

もっと読む スイス、トランプ関税に報復せず
BYDの車

おすすめの記事

スイスにBYDが上陸 年内に15店舗

このコンテンツが公開されたのは、 中国のEVメーカー比亜迪(BYD)が正式にスイス市場に進出する。年内に全国で15店舗を出店する計画だ。

もっと読む スイスにBYDが上陸 年内に15店舗
スイスFINMA

おすすめの記事

スイス金融当局が組織再編 リスク管理部門を新設

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融市場監督機構(FINMA、日本の金融庁に相当)は1日、監督体制を強化するため組織を再編したと発表した。クレディ・スイス危機への反省から、立ち入り検査機能を増強する。

もっと読む スイス金融当局が組織再編 リスク管理部門を新設
シモン・プリュス氏

おすすめの記事

スイスで凍結されたロシア資産、1.25兆円に 所有者の特定進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦経済管轄局(SECO)は1日、これまでに国内で凍結したロシア資産は74億フラン(約1兆2500億円)になったと発表した。資産の所有者の特定が進んだことで、昨年4月から1年で16億フラン増えた。

もっと読む スイスで凍結されたロシア資産、1.25兆円に 所有者の特定進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部