スイス下院、スイスインフォへの拠出金廃止案を否決 上院に続き
スイス国民議会(下院)は4日、2027年以降のスイス公共放送協会(SRG SSR)の国際放送・配信業務に対する政府拠出金を廃止する政府案を否決した。全州議会(上院)は昨年12月にすでに同案を否決している。廃止案が可決されていれば、スイスインフォへの存続に大きな影響を及ぼした可能性があった。
連邦政府がスイス公共放送協会(SRG SSR)に委託している国際放送・配信業務(フォーリン・マンデート、以下国際放送業務)に対する政府拠出金の廃止案は、連邦予算削減のため政府がまとめた緊縮財政案「救済パッケージ27外部リンク」の措置第24項に盛り込まれていた。同パッケージ全は65項目に及ぶ。
下院は春期議会が始まった3月2、3両日、同パッケージの各項目を審議した。SRGの国際放送業務に対する政府拠出金廃止案は、賛成104票、反対84票、棄権5票で大差で否決された。上院に続き、下院もSRGの国際放送業務に対する拠出金の維持を支持した。これにより、SRGの国際放送業務の中核であるスイスインフォ(同サイト)の存続はより確実となった。
現在、SRGの国際業務には年間1900万フラン(約37億2000万円)がかかる。このうち連邦予算から900万フランが充てられ、スイスインフォやスイス伊語圏のオンラインポータル「tvsvizzera.it」運営、国際テレビ局「3Sat」「TV5Monde」との提携事業に使用される。残りはSRG自身が負担している。
スイス公共放送協会(SRG SSR、以下SRG)のフォーリン・マンデート(Auslandmandat外部リンク /Mandat pour l’étranger外部リンク )は、スイス政府とメディア企業である協会との間で締結された、国際社会向けの情報サービス提供に関する委託契約。委託内容は、SRGが①国外在住のスイス人向け②スイスに関心のある全世界の読者向けのメディアサービス、の2点を提供すること。
委託の目的は、在外スイス人の政治的権利を支援すること、また国外における偽情報に対抗することだ。例えばスイスインフォの報道は、スイスに関する誤解やフェイクニュースを是正し、根拠のある情報の提供に貢献している。
現在、スイスインフォはドイツ語、フランス語、イタリア語、英語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、アラビア語、日本語、中国語で発信している。
委託業務にかかる費用、つまりスイスインフォの予算は①連邦政府の拠出金②全世帯から強制徴収されるラジオ・テレビ受信料を原資とするSRGの予算が半分ずつ賄っている。
政府拠出金廃止案で問題とされたのは、政府がSRGに対する国際放送業務の委託契約を継続する一方で、その財源を削減しようとした点だ。上院での議論によれば、スイスインフォの配信言語を現在の10言語から4言語に削減することも想定されていた。
▼上院の政府拠出金廃止案の否決について詳しくはこちらの記事へ
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政府の「救済パッケージ27」は今後2週間以内に上下両院間で意見調整が行われる。ただし、第24項に盛り込まれていたSRGの国際放送業務に対する政府拠出金廃止案はすでに両院で否決されているため、廃止は今後数年間は見送られる見通しとなった。
国民党と急進民主党は拠出金削減支持
本会議での審議に先立ち、下院の財務委員会は僅差ながら政府案(拠出金削減案)を支持するよう勧告していた。しかし、3日の審議時点で議員の立場はすでに固まっており、各党会派は事前に協議を済ませていた。本会議で発言したのは、スイス第1党の国民党(SVP/UDC)のみで、委員会多数派に反対し、政府案を支持した。
国民党のロマン・ビュルギ下院議員は、「これは解体ではなく規模の縮小だ」と説明。「国際業務は、在外スイス人がスイスのメディアに簡単にアクセスできなかった時代に誕生した」と述べた。しかし現代ではこういったメディアへのアクセスは容易であり、「国際事業サービスは国家の基本的公共サービスの中核ではない」と主張した。
「古いしがらみを断ち切る」
急進民主党(FDP/PLR)所属のカリン・ケラー・ズッター財務相も、政府の予算削減の必要性を擁護し、「時には古いしがらみを断ち切る勇気が必要だ」と強調した。在外スイス人は、国内の公共放送受信料で賄われるSRGのサービスにアクセスできると説明した。
採決では、急進民主党の議員はほぼ一致して、ケラー・ズッター氏と同じく拠出金の廃止を支持し、棄権は3人だった。右派保守の国民党もほぼ全党員が政府案に賛成した。一方、その他のすべての政党は委員会多数派と同様、拠出金廃止に反対した。
メディア労働組合は安堵
これを受け、メディア労働組合SSMは声明で安堵を示した。拠出金廃止案が可決されれば「100を超える雇用が失われ、スイスの海外における声が弱まる可能性があった」と指摘。同組織にとって今回の否決は、「メディアの多様性、在外スイス人、国際舞台におけるスイスの可視性を支持する重要なシグナル」だと評価した。
SSMの代表らは本議会での審議に先立ち、国際放送業務の存続を求める請願書を提出していた。この請願書は、3カ月足らずでスイスインフォの存続を支持する1万7000人以上の署名を集めた。これには在外スイス人組織、在外スイス人のための協同組合ソリスイス(Soliswiss)、Educationsuisse、その他のメディア団体も参加していた。
編集:Mark Livingston、独語からの翻訳:大野瑠衣子
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