数字で見る 異例ずくめのスイス2026年夏
2026年夏、記録的な暑さと少雨に見舞われたスイスでは、過去の国内記録が相次いで塗り替えられた。最新の報告書をもとに、その実態を数字で振り返る。
2026年夏は、スイスの気候史を塗り替えた。全国平均気温、熱波警報の日数、熱帯夜の日数がいずれも、これまで記録的な暑さとされてきた2003年の「世紀の夏」を上回った。主要な湖の一部でも、この時期としては異例の低水位を記録した。
スイス気象台(メテオ・スイス)が9月10日に発表した今夏の最終報告は、過去数カ月の気候が、平年から大きくかけ離れていたことを示している。気候学者らは、温室効果ガスの排出削減を急がなければ、こうした事態が常態化しかねないと警告する。
気候物理学を専門とする連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)のレト・クヌティ教授は、ニュースポータルWatsonの取材に対し、「世界で現在の気候政策が続けば、2年に1度は今年の夏より暑い夏を迎えることになる」と語った。
全国平均は平年を3.4 ℃上回る
6~8月の全国平均気温は17.2 ℃となり、1991~2020年の平均を3.4 ℃上回った。これまで最も暑い夏とされてきた2003年夏の平均気温は16.9 ℃だ。
同教授によると、今回の記録的な暑さには5つの要因がある。気温上昇の60~70 %をもたらす地球温暖化、蒸発による冷却効果を弱める土壌の乾燥、太陽光を通しやすい澄んだ大気、欧州上空で長期間続いた高気圧、そして雷雨の減少だ。 欧州中央部のアルプス地域に位置するスイスは、世界平均の約2倍のペースで気温が上昇しており、温暖化の速さでは世界トップクラスだ。その理由については、こちらの記事で説明している。
バーゼルで日最高気温39.7 ℃
今年の夏は、メテオ・スイスが国内約160カ所に設置する自動気象観測所のうち30カ所で、日別最高気温(同じ日付の過去の記録)が更新された。その約半数は、6月に記録された。
国内最高気温は、7月30日にバーゼル/ビンニゲン観測所で記録された39.7 ℃だった。これは、2015年にジュネーブ/コアントラン観測所で観測された、アルプス以北のスイスにおける過去最高気温と並ぶ。ブッフス/アーラウ(38.6 ℃)、チューリヒ/クローテン(38.3 ℃)、ルツェルン(36.8 ℃)の各観測所でも、日別最高気温の記録を更新した。アルプス以南では、7月30日にティチーノ州ビアスカで観測された39.2 ℃が最高気温となった。
山岳地域でも異例の高温となった。グラウビュンデン州シュクオールでは、標高1304 mの地点で35.1 ℃まで気温が上昇した。
唯一更新されなかった記録は、国内最高気温だ。グラウビュンデン州南部のグローノで2003年夏に観測された41.5 ℃で、現在も破られていない。ただし、電子式センサーを用いずに観測されたため、信頼性には疑問が残る。現在の気象学の観測方法やデータ評価基準に基づくと、この値は40.5 ℃に相当すると考えられている。
▼スイスの暑さ対策は今、どうなっている?詳しくはこちらの記事へ
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ロカルノで熱波警報57日
2026年の夏は、熱波の多さという点でも記録的だった。スイスでは、3日以上連続して1日の平均気温が25 ℃以上となった場合に熱波と定義される。今年は5月下旬から8月下旬にかけて、4回の熱波が観測された。
ティチーノ州のロカルノ/モンティ観測所では、熱波警報の発令日数が国内最多となった。警戒レベル3の警報(かなりの危険)が57日発令され、そのうち33日は、日平均気温が27 ℃以上となる警戒レベル4(高い危険)に該当した。30 ℃を超える日も24日連続し、過去最多となった。
30 ℃以上の日数も、複数の観測所で過去の記録を2週間以上上回った。バーゼル、ジュネーブ、シオンでは50日を超え、チューリヒとベルンでも40日を超えた。35 ℃を超える日数も同様に増加した。
今年の夏は、これからの夏を先取りしている。気候モデルの予測では、地球の平均気温が3 ℃上昇した場合、警戒レベル3の熱波警報が年間平均45日発令され、そのうち15日は警戒レベル4に達する可能性があるという。
ロカルノで熱帯夜50日
気温は夜間も高いままだった。スイスでは、気温が20 ℃を下回らない夜を熱帯夜と呼ぶ。ロカルノ/モンティ観測所では熱帯夜が50日に達し、2003年夏の記録を8日上回った。7月下旬から8月中旬にかけては、19日連続で熱帯夜となった。
熱帯夜が2003年の15日から30日に倍増したヌーシャテルでも、暑さによる負担は深刻だった。夜間も気温が20 ℃を下回らないと体温が下がらず、日中に蓄積した熱から回復しにくくなる。特に高齢者や慢性疾患のある人など、暑さの影響を受けやすい場合は健康リスクが高まる。
気象学者のルカ・ニジ氏は、伊語圏スイス公共放送(RSI)に対し、1980年以降、熱帯夜の平均日数は10年あたり5~8日増えていると語った。ただし過去20年間では、10年あたり約10日へと増加ペースが加速しているという。
メテオ・スイスの気候シナリオ外部リンクによると、地球の平均気温が産業革命前から3 ℃上昇した場合、ロカルノ/モンティでは年間70日以上の熱帯夜が発生する。ヌーシャテルをはじめとするスイスの他の都市でも、年間50日に達する可能性がある。
コンスタンツ湖で水位が50 cm低下
2026年は、干ばつという面でも異例の年となった。4~8月の降水量は1901年以降で最も少なく、スイス全土で平年の61 %にとどまった。
地域によっては平年を大きく下回った。ヘリザウでは318 mm(1991~2020年の平均は736 mm)、フリブールでは282 mm(同490 mm)、ファイドでは371 mm(同692 mm)だった。
スイスの多くの河川でも、流量が長期平均を大幅に下回った。スイス中央部を流れるエンメ川などの河川では、一部区間が完全に干上がった。水位が下がると強い日差しで河川の水温が上昇しやすくなり、多くの水生生物にとって厳しい環境となる。
ライン川では状況が特に深刻だった。水位が異例の低さとなり、船の運航が難しくなった。多くの船が積載量を減らさざるを得ず、輸送費が上昇したほか、製品や原材料の供給にも支障が出た。
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スイスの主要な湖も、干ばつの影響を大きく受けた。夏の間、コンスタンツ湖とチューリヒ湖の水位は、通常この時期に観測される最低水位を下回り、その落差は50 cm近くに達した。
2026年の夏は、観測が始まって以来、最も暑い夏として記録された。しかしメテオ・スイスは、地球温暖化が続けば、やがてこの夏が「今世紀で最も涼しい夏の1つ」として記憶される可能性があると指摘している。
編集:Gabe Bullard / Vdv、英語からの翻訳:本田未喜、校正:大野瑠衣子
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