おすすめの記事 気候変動対策 ハイテクからアリの観察によるものまで 天気予報の複雑さ このコンテンツが公開されたのは、 2017/01/27 かつて人々は、地元の言い伝えや、自然の様子をもとに天気を予測していた。だが今日スイスの気象学者は、衛星やスーパーコンピュータを駆使して気象を分析・予測している。今や天気予報は、高度にグローバル化した科学だ。 天気予報の背景や技術がどのように変化してきたのか、そして、天気を確実に予測することがなぜ困難なのか。これが、現在チューリヒのスイス国立博物館で開催中の展覧会「The Weather, Sunshine, Lightning and Cloudbursts(天気、日光、稲妻、豪雨)」のテーマだ。 スイスの2016年12月は、過去150年間で最も乾燥した12月だった。全く降水量がなかった地域もあり、ティチーノ州やグラウビュンデン州では森林火災も発生した。だが翌月の1月、スイスは突然の寒波に見舞われ、平野部でも待ちに待った積雪があった。 いまだに天気を確実に予測することは不可能だが、天気を知りたいという私たちの好奇心は尽きるところがない。毎日約100万人がスイス公共放送の天気予報を視聴し、スイスでは天気予報アプリが人気アプリのトップ10にランクインしている。 「多くの人は、毎日見ている天気予報の裏に、どれほど多くのテクノロジーや科学が隠れているのかに気付いていないと思う」と話すのは、展覧会の企画に協力したスイス気象台メテオ・スイスのペーター・ビンダー局長だ。 展覧会の一室では、衛星画像や雨雲レーダー、それから今後の気象状況を解説するための予報モデルなどが展示されている。より正確な予報を出すために気象科学者たちは、1日に1千万件以上の国内外のデータを使いながら地球規模で大気の動きを見守っている。 天気の傾向 ビンダー氏によると、このようなテクノロジーの発達のおかげで、より詳細な天気予報ができるようになったという。だがそれでも気象学者たちがすべてを予測することはできない。 ビンダー氏はスイスインフォに対し、「2週間先の天気や、今後10日間の天気を詳細にわたって知りたがる人もいるが、ほとんど不可能だ」と答える。「気象状況がどのような傾向にあるのかを予測することはできるが、詳細は予測できない」 岩山が多く、山と谷で分断されたスイスのような国では、天気を正確に予測するのはさらに困難なことだ。 「カエルの天気予報」 だが、天気予報は科学の話だけではない。日々のちょっとした話のネタであり、「夕焼けの翌日は晴れ」というように、言い伝えの重要な部分を占めてもいる。 シュヴィーツ州ムオッタタールには「天候の預言者」がいて、伝統的な方法で天気を予測し、今でも人気を集めている。 今回の展覧会のキュレーターを務めるユルグ・ビュルレットさんは、「彼ら『預言者』は、夏と冬の天候を予測する。ラジオやテレビにも出演していて、非常に面白い。みんな彼らを知っている」と話す。「彼らは山で農業をする6人の農夫のグループで、アリの行動や、木の伐採時に出るおがくずのにおいなどの、自然の現象を見て天候を予測する」 「それは長年の経験と観察から生まれたものだ。農夫として、天候に十分に留意しておかないと、収穫が厳しいものになるからだ」 ビデオ挿入:アリから天候を予測するマーティン・ホラットさん だが、地方の天気予報者による予測は当たるのだろうか?ビンダー氏は少し考えてから、「地元の天気に関しては、彼らの予測はかなり信頼できる。だが、それは地元の地域にのみ有効で、しかも短期間の予測に限る。私たちが本当に知りたいと思っている、長期的な天候の予測は、ほぼ不可能だ」と答えた。 古くから存在する気象記録 スイスでは、ルツェルン出身の学者レンワルド・シザット(1545~1614年)やアインジーデルン修道院のヨーゼフ・ディートリヒ神父(1645~1704年)が残した文書のように、比較的古くから天気が記録されてきた。 彼らは1日に数回、目で見たものを書き留め、天気とそれが周囲の人たちや環境に与えた影響などを記録した。ディートリヒ神父は、1675年8月には数回雪が降り、日照時間が少なかったと記している。その夏は雨が多く冷夏だった。つまり農作物の生産量は少なく、人々にとっては厳しい年だったというわけだ。 後に、天気を記録する作業はより科学的なものになる。バーゼルの気象学者アルベルト・リッゲンバッハは、天気をより正確に記録する目的で世界で初めて雲の様子を写真に収めた学者の1人だった。それまでは、雲の様子をスケッチと文章で記録しなければならず、誤解が生じることもあった。リッゲンバッハは、雲の分類基準を示した「国際雲図帳(International Cloud Atlas)」初版の共同著者でもある。 ギャラリー スイス気象台に勤めるステファン・バーダーさんのように、天気の予測ではなく、過去に天気がどのように変化してきたかを分析する気象学者にとっては、歴史的な気象観測記録の価値は計り知れない。 「私たちはこれらの観測記録をもとにして、現在は気候変動が起こっているということを証明できる。当時の人は、天気の予測が目的ではなく、自分たちが目にするものに興味を持っていたから記録をしていた。これこそが、長期的な気候の歴史を作りだす、基礎となる」(バーダーさん) 気候変動 気候変動の現象の一つが、気温の上昇だ。「30~40年前と比べると、私たちは今、その頃とはまったく違った気候条件の下で生活していると証明できる」(バーダーさん) Ducのデータストーリー挿入 例えば、夏季の降水量はますます少なくなり、2003年や15年のような猛暑の年が増えたとバーダーさんは指摘。冬に比べて夏のほうが乾燥しがちで、スイス政府は干ばつを自然災害リストに追加することを検討中だという。 スイス気象台は、地球全体の温室効果ガスの排出量に左右されるものの、21世紀末までにスイスでは気温が1.5~5度上昇し、21世紀半ば以降は夏季の降水量が大幅に減少すると予測している。 このような気候変動の中、ハイテクの使用によるものか、アリの行動観察によるものかにかかわらず、天候の予測はこれまでになく重要になってきていると言える。スイス国立博物館(チューリヒ)の展覧会 展覧会「Weather, Sunshine, Lightning and Cloudbursts(天気、日光、稲妻、豪雨)」は2017年1月12日~5月21日までスイス国立博物館で開催。スイス気象台メテオ・スイスの協力を得て企画された。 インタラクティブな展示で、来場者はスクリーンを通してあらゆる種類の天気を体験したり、小型の気象実験室で天気の短期予測をしたり、雲のボックスで小さな嵐を起こしたりすることができる。毎週日曜日には、スイス気象台の専門家が来場し、天気に関して解説する。 もっと読む ハイテクからアリの観察によるものまで 天気予報の複雑さ
おすすめの記事 気候変動対策 2016年はどのくらい暑かったか? このコンテンツが公開されたのは、 2017/01/20 150年以上前から記録されているスイスの気象データを見れば、気候の変動がよくわかる。2015年は観測史上最も暑い年だったが、16年の暑さもかなりのものだった。 下の動くグラフィックでは、過去1世紀半のスイスの月平均気温の推移を示している。 気温は1980年代から大幅に上昇し、それ以来高い水準を保っている。スイスでは2016年の年初は特に暖かかったが、一年を通じてみると1864年以来8番目に暑い年となった。 もっと読む 2016年はどのくらい暑かったか?
おすすめの記事 気候変動対策 壮大な自然にできた氷の彫刻 このコンテンツが公開されたのは、 2017/01/19 今年に入って寒さが一層厳しさを増し、スイスの湖畔では、自然にできた氷の彫刻が出現。吹き抜ける冷たい風が運んだ湖の水分が、水辺で様々な形に姿を変えた。 もっと読む 壮大な自然にできた氷の彫刻
おすすめの記事 気候変動対策 自然保護か河川の利用か スイスが抱えるジレンマ このコンテンツが公開されたのは、 2017/01/09 スイス連邦政府は過去、洪水防止策強化に多額の投資をし、また河川をより自然な状態に復元するため、26州全てに地表水の復元を義務付ける法律を発効した。しかし、河川の自然保護と、水力発電を進めたい考えの間で板挟みの状態となっているのが現状だ。 砂岩の上に幽霊のように伸びる城壁。廃墟となったグラスブルグ城のすぐ先で、森の小道はセンゼ川の岸辺に下りていく。スイスの緻密に管理された自然風景の中にあって、この辺りは珍しく野生が残っている。 「ここには非常に多くの種が生息している。植物も昆虫も魚も。本当に驚くべき場所だ。スイスの熱帯雨林と言ってもいい」と話すのは、世界自然保護基金(WWF)スイス支部で、「持続可能な水力発電プロジェクト」のリーダーを務めるジュリア・ブランドルさんだ。 もっと読む 自然保護か河川の利用か スイスが抱えるジレンマ
おすすめの記事 気候変動対策 国立公園めぐり割れる住民 27日に住民投票へ このコンテンツが公開されたのは、 2016/11/23 11月27日にグラウビュンデン、ティチーノ州の17の自治体で「アデューラ公園」を巡る住民投票が行われる。スイス初の国立公園を創立した1914年とは異なり、今回は住民側が提案した。にもかかわらず、地元住民の反発は大きい。賛成派は説明会などを開き、反対派の不安を解こうと懸命だ。 グラウビュンデン州ヒンターライン。サン・ベルナルディーノ峠に入る手前の村だ。通りは鶏が何羽か行き交い、2匹の猫が喧嘩をしている。レストラン「バッハフース・ケラー」の看板は営業中であることを告げているが、客の姿は見えない。この山村は美しい陽射しの秋の日に、すっかり廃れ置き去りにされたような雰囲気を漂わせている。 もっと読む 国立公園めぐり割れる住民 27日に住民投票へ
おすすめの記事 気候変動対策 スイス、温暖化対策後退を懸念 このコンテンツが公開されたのは、 2016/11/21 途上国を含む全ての国が、温暖化防止に取り組むことを定めた「パリ協定」の行方に暗雲が漂っている。同協定からの脱退を公約したドナルド・トランプ氏が米国の次期大統領に決まったのが一因だ。スイスメディアや政府関係者の間では、温暖化対策の後退は避けられないとの見方が広がっている。 モロッコで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)は19日、パリ協定の実現に向けて具体的なルールを2018年までに策定することで合意し、閉幕した。それに先立つ4日にはパリ協定が発効した。 「地球温暖化の取り組みで最も重要な人物、ドナルド・トランプ氏は現れず」。 COP22の閉幕にあわせて、スイスの有力紙NZZはこんな見出しの記事を掲載した。温室効果ガスの排出量世界2位の米国がトランプ氏の公約通り脱退すれば、パリ協定前に逆戻りしかねないと警鐘を鳴らした形だ。 トランプ氏は選挙戦中、地球温暖化を「でっち上げだ」と一蹴。パリ協定からの脱退に加えて、オバマ政権の環境・エネルギー政策の白紙撤回や、米環境保護庁(EPA)の解体を主張してきた。 NZZによると、COP22の会期中に参加国は、米国が脱退した場合の対抗措置についても議論。メキシコやカナダは、米国からの輸入品に炭素税を課すことを検討中だと報じている。 一方、日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、温暖化問題に取り組む国際交渉に影を落としたのは、「トランプ・ショック」だけではないとも指摘。COP22では、パリ協定のルール作りをめぐり、先進国と途上国の対立が再燃した場面があったことを示唆した。 パリ協定では先進国と途上国の双方が温室効果ガスの削減で努力することが決まった。 だが、途上国側からすると、温暖化を招いた責任は先進国にあり、先進国は温室効果ガスの削減に積極的に取り組むと同時に、途上国の温暖化対策に資金や技術を提供すべきとの考えが根強い。 ドリス・ロイトハルト環境相はCOP22の会期中、途上国への資金・技術援助として500万フラン(約54億800万円)提供すると表明した。 もっと読む スイス、温暖化対策後退を懸念